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姉の息子を見に行った

姉のところに息子が生まれ、見に来ないかと連絡があった。

姉の方から個別に連絡があったのは、出産の報告を含めてもこの人生で二、三回目くらいではなかろうか。

姉とは歳が離れている上に、性格も見た目も私とは真逆である。
姉は合理的というか論理的というか、感情が見えづらく、何を考えているのかよくわからない、私にとっては謎の人物である。
私は姉に対して少なくとも好ましい印象を持っているが、姉は妹のことをどう思っているのか見当がつかない。もしかすると、何も思っていないのかもしれない…

子供時代も、同じ家で暮らしていたものの、関わった記憶は薄い。
成長する中で、世間一般的な姉というのは、妹と服を貸し借りしたり、相談に乗ってくれたり、ときにはケンカもするらしいということを知ったが、うちは例外なのだろうと納得していた。

ただ、確か、就職活動の旅費に困ったときに流れで三万か五万か、援助してもらった記憶があるので、やっぱり下手なことは言えない。
実務的な部分では、施しをしていただいたということにしておこう。

大人になってからは、険悪なわけではないし、会おうと思えば会える距離には住んでいるものの、顔を合わせるのは冠婚葬祭くらい、という関係性が続いていた。


当日、夫と二人、少し緊張しながら姉の自宅へ向かう。

到着して、今日はどこから来たの?と聞かれ、自分の最寄り駅を元気に答えようとすると、姉の自宅の複数ある最寄り駅のどこから来たのか、という意味だった。さっそくコミュニケーションがうまくいかなくて落ち込む。

姉は、とてもおいしいマグロの寿司を用意してくれていて、三人で食べた。
姉は、妊娠中は生魚が食べられなかったんだと言いながら、うまそうにマグロを食べる。この一年食べられなかったからそうなのか、元々マグロの寿司が好物だったのかはわからない。
あのマグロの寿司は、どこで買ったのだろうか?聞けばよかった。

そして当然、甥っ子はかわいかった。足が耳くらいのサイズだ。
抱っこすると、こちらの顔をじっと見てくる。

バウンサーなるものに乗せて揺らすと寝るのだと、甥っ子を乗せながら姉が言った。
ただ、姉のバウンサーの揺らし方が思ったよりも激しめだったので、大丈夫なのかと一応聞いてみた。大丈夫らしい。
確かに甥っ子はウトウトしているようだったので、まぁそんなものなのかと納得する。

帰り際のエレベーターで、甥っ子のパヤパヤとした後頭部をそっと撫でた。


後日、母から送られてきた甥っ子の写真を眺めていると(姉からではない)、ニヤッと笑ったその顔が姉に似ていることに気づく。

甥っ子が生まれたことで、これまでとは何かが変わるのではないかという謎の期待があった。
しかし、姉は何も変わっていなかった。姉は姉のまま母となり、平然と育児をしていた。

疎遠と言ってもいいほどの姉との関係性は、甥っ子の誕生によって少し変わったのかもしれない。
姉は相変わらず何を考えているのかわからなかった。それでも、一緒にマグロの寿司を食べ、ウトウトする甥っ子を眺める時間は穏やかだった。
電車で行ける距離なのだから、また会いに行きたいと素直に思ったのだった。


それから一年ほど経った。
結局、私からまた見に行きたいのだけど、という連絡は一度もしないまま。もちろん姉からも連絡はないままである。甥っ子の誕生で少し近づいたように思えた関係性だったが、そう簡単には変わらないらしい。

それでも、日々の中で姉と甥っ子のことはときどき意識にのぼる。
姉の家でおいしいマグロの寿司を食べたあの日、バウンサーで揺らされていた小さな甥っ子は、今ごろ元気にやっているだろうかと。

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