オヤジのエプロン #310-母のホクロ-
時が経つのは早いもので、義理の母が玉置浩二のコンサートへ行ってから、もう1か月が経った。
それでも興奮は冷めないらしい。
ヘッドホンであの日の曲を聴きながら、感動を思い出しているという。
時折かかってくる電話では、
「ネットを見たらね、あの日の玉置が一番良かったらしいよ。」
「よくチケット取れたねって、お客さんにも言われるの。」
と、今でも嬉しそうに話してくれる。
それほど感謝しているのなら、チケットを取ってくれた義姉に直接言えばいいものを、
そこは少し照れくさいらしい。
結局、我が家のCEOに電話をしてきて、
「楽しかったよ。」
と伝え、
その話をCEOが義姉へ伝える。
まるで伝言ゲームである。
そんなある日。
義姉が笑いながら話してくれた。
「私さぁ、コンサート中、お母さんが突然叫び出さないか気が気じゃなかったよ。」
そう言って笑ったあと、思い出したように続けた。
「それとね、お母さんが急に、
『あなた、目の下にゴミが付いてるわよ。』
って言って、一生懸命取ろうとしてきたの。」
あまりに必死なので、
「お母さん、それホクロだよ。」
と教えてあげたらしい。
「娘の顔くらい覚えていてほしいよね。」
そう言って、また笑う義姉。
歳を重ねると、老眼やら何やらで、人の顔の細かいところなんて見えなくなる。
ましてやホクロなんて。
それでも、いくつになっても親は子どものことが気になってしまうものなのだろう。
我が家の次男なんて、少し頭を触っただけで、
「ダディ! さわんないでよ!」
と怒る。
肩車をしていた頃が懐かしい。
……今やったら、確実に腰にくる。
オヤジ日々精進。
