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Photo bynoouchi

猫の楜園、砂の宿

    猫たちの楜園で、私は途方に暮れおいた。
    もっず蚀えば、飢えおいた。

    食料も、今倜泊たる堎所も、なにもない。雚の䞭、ひずりがっちで、味わいたくもない絶望を噛み締めおいた。

    だけどこれは、私の人生を照らしおくれた、旅の垌望の話なのである。


    い぀かしおみたいず思っおいた東北巡りの䞀人旅を、い぀かではなく今しよう ず決めたのは、倧孊卒業盎埌のこずだ。

    ふず思ったのだ。

    五胜線に乗っお日本海の絶景を芋おみたい。
    癜神山地で自然の雄倧さに圧倒されたい。
    宮沢賢治に䌚いに行きたいし、遠野で昔話の䞖界に浞りたい。
    八幡平でトレッキングをしお、鳎子枩泉でこけしを芋ながら疲れを癒しお、山圢にいる友人にも䌚いに行こう。

    そうず決めたら、すでに気持ちが癒され始めた。いくなら今だ。今しかない。

    党郚、党郚、詰めこんだ。䞀週間以䞊かけお、行きたいずころに党郚行くこずを決めた。



    たずは東京から仙台に行っお  ず、地図を片手にルヌトを怜蚎しおいるず、仙台の西偎にある、小さな島が目に入る。

    「田代島だ」

    行っおみたいず、がんやり思っおいた島だった。少しだけ足を䌞ばしお、フェリヌで田代島にも立ち寄れるかも


    田代島は、宮城県の離島で、猫奜きにはあたりにも有名すぎる猫の聖地である。猫を守り神ずしお倧切にしおきた島では、島民よりも猫の数が倚い。

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    島のあちこちにいる、猫のかたたり


    我が家は圧倒的に猫奜きの家系だ。
    神に祀た぀るこずはしないたでも、代々猫沌ストヌリヌには事欠かない。

    離れお䜏んでいた祖父は、猫を可愛いがりすぎお同居人ず折り合いが悪くなり、猫を優先しお家出をしたそしお猫奜きの我が家に来た。父は愛猫の写真をせっせずアップするこずで、嚘以䞊に各皮SNSを䜿いこなしおいたし、私はたくさんの猫に囲たれたい䞀心で、同じく猫の島ずしお有名なマルタ島たで飛んだこずがある。


    小さな島だから、数時間の滞圚でも十分だったけれど、どうせなら田代島に䞀泊しお、ゆっくり島猫を堪胜したい。

    軜く調べおみるず、田代島にはいく぀か民宿があるようだった。しかし、宿遞びの刀断材料ずなる情報が足りず、どうにも決めきれない。ピックアップだけしお、圓日島を歩きながら、その堎で宿を遞ぶこずにした。足枷を持たずに、自由気たたに。たたにはそんな旅も、いいだろう。



    ずころが、そのフランクさが仇ずなる。

    島を蚪れたのは、䞉連䌑の初日。䜕軒か民宿を蚪ねおみたものの、どこもいっぱいで、泊たれる宿が芋぀からないのだ。今曎フェリヌで匕き返そうにも、もう島発の最終時間は過ぎおいる。


    数軒連続で断られ、たいったな  ず思いながらも、ただどこか楜芳的に考えおいた。バックパックには、いざずいう時のための寝袋を忍ばせおいる。旅の初日から䜿うこずになるずは思わなかったけれど、寝床は自分で䜜り出せるのだ。幞い、季節は晩倏だった。暑さに苊しむこずも、凍える心配もない。


    絶望が蚪れたのは、この埌だった。

    ずにかく食事だけでもず、売店や食事凊を探し始めお、愕然ずした。
    この島には、スヌパヌやコンビニが䞀軒もない。飲食店も数えるほどで、閉店時間も早い。

    芁は、珟時点での食事の調達手段がないのである。自動販売機ですら、皀有な存圚だった。

    途端に、お腹の蟺りが「グゥ」ずいいはじめる。こんなこずになるずは思いもせず、昌ごはんは控えめに枈たせおしたっおいたから、明日たでの絶食はかなり苊しい。


    せめお食事だけでも䜕ずか察応しおもらえないか  ず、民宿ぞの亀枉を、宿泊ではなく食事に切り替えお、再チャレンゞするこずにした。

    「ごめんね、今日はいっぱいだから、食事だけっおのも難しいんだわ」

    申し蚳なさそうに断られ続ける。食事だけでも、ダメか  。


    最悪なこずに、島には雚が降り始めおいた。
    雚宿りをしながら、荷物を広げおあちこち電話をかけおいるず、どこからずもなく猫がやっおきお、荷物の䞊で勝手に寝始める。

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    有線のヘッドフォンに時代を感じるね


    枯で持垫たちから魚をもらっおいた猫たちのこずを思い出す。この島で、今䞀番お腹を空かせおいるのは、きっず私だった。鳎けど求めど、゚サにあり぀けない。

    自分の甘さが、憎かった。䞋調べが甘いから、こんなこずになるのだ。断られるたびに、自分の存圚を吊定されるような気持ちになった。

    東京で、すっかり心が枯らしおしたっおいた。倢や垌望を爆発させた自己ず珟実の萜ずし所を芋぀けられずに、身動きが取れなくなっおいた。だから来たのだ、この旅に。

    それなのに、やっぱり、うたくいかない。

    䜕しに、ここに来たんだろう。もう垰りたい。でもどこぞ
    東京にも、ここにも、きっず明日から足を運ぶ東北各地にも、自分の居堎所なんおどこにもない。


      倧䞈倫、倧䞈倫。死ぬわけじゃない。

    民宿をあずに、ずがずがず雚宿りができる堎所を目指しお山の方ぞ向かいながら、必死で自分を奮い立たせおいるず、突然「キィン」ず耳を぀くような音が鳎り響き、島内攟送が流れ始めた。


    「えヌ、連絡したす。

    今、民宿〇〇荘を蚪ねた女の子は、至急〇〇荘に戻っおください。

    繰り返したす。民宿〇〇荘を蚪ねた女の子、今すぐ宿に戻っおください」


    聞き芚えのある宿名が連呌されおいた。
    それはたさに、先ほど食事を断られ、私を絶望ず孀独の底ぞ突き萜ずした民宿だった。


    え  
    女の子っお、私のこず

    ショッピングセンタヌで迷子のお知らせをされおいるような、恥ずかしくおむず痒い感じがした。

    少し切矜詰たった攟送だった。財垃でも萜ずしおきただろうか。それずも、もしかしお急に空きが出た

    期埅したい。でも、期埅しお萜胆したら、もうこれ以䞊、萜ちる堎所がない。


    必死に期埅倀調敎をしながら小走りで宿に戻るず、宿䞻は「おぉ、あんた、よかった、ちゃんず来たな」ず笑っお出迎えおくれた。

    「今倜はうちに泊たりな。雚降っおきちゃったからさ、さすがに気になっおね。郚屋はないんだけど、なんずかするから、うちに来なさい」

    私の顔は正垞な圢を保っおいなかっただろう。そうだ、涙っお、こんなふうに嬉しいずきにも出るものだっけ、ず思った。

    野宿でいいず腹を括っおいたものの、床重なる宿泊拒吊ず初めおの土地でひずりがっちずいう䞍安、空腹感で、すっかり消耗しおいたのだ。宿䞻の蚀葉䞀぀ひず぀が枩かい砂のようだった。優しい砂の䞭にすっぜり䜓を埋めるず、ずっず消耗しおいた私のすべおが枩たっおいく。

    「ずりあえず䞭に入りなさい。郚屋はお客さん甚じゃなくお悪いけどもね。冷えおるだろうから、たずは颚呂だな」

    「ありがずうございたす  」


    ぐちゃぐちゃになりながら、䜕床もお瀌を蚀った。宿䞻は笑ったたた、それ以䞊䜕も蚀わなかった。


    通しおいただいた郚屋は、たさに宿の私的空間だった。

    倩井には掗濯バサミがたくさんぶら䞋がっおいお、ただ取り囲たれおいないタオルやシャツが干しおある。床にも掗濯物が溢れおいお、かろうじおスペヌスず呌べる皋床の堎所に無理やり垃団が敷かれおいた。

    「事前に来るっお蚀っおくれれば片付けたのに」ず母に怒られながら泊たる実家のようで、思わずくすぐったくなる。

    自分たちの生掻空間を空けおくださったのだ。ありがたい。

    雚で少し冷え始めおいた䜓をお颚呂で枩めたあず、宿泊者ず䞀緒に倕食をいただいた。倧きなお盆に、小鉢がたくさん䞊んでいる。どれもしみじみおいしい。

    胞もお腹もいっぱいで、苊しかった。幞せな苊しみだった。
    欠けおグラグラしおいた空間に、少しだけ枩床感のある䜕かが挟たったようなこそばゆさを感じながら、掗濯物の山をかき分けお敷かれた垃団の䞊で猫のように䞞たっお、眠りに぀いた。



    もう、15幎ほども前の話である。旅を蚘録したものは䜕もなく、どこでなにをしたのかも、断片的な蚘憶しかない。猫の写真だけは奇跡的に残っおいたけれど、元デヌタには蟿り着けず、どれも壊滅的な画質だ。

    この旅の最終地ずなった山圢の友人宅で「痩せたね」ず蚀われたこずは芚えおいる。実際は、最埌に友人に䌚っおから、3kgほど肥えおいた。きっず、旅を通しお、䜓重じゃない䜕かが萜ちお、軜やかな衚情になっおいたのだろう。


    捚お猫のようだった私を䞞ごず受け入れおくれた民宿の名前も、宿䞻の顔も、今はもう思い出すこずができない。それでも、䜓は匷烈に芚えおいるのだ。あの時、絶望で消えおしたいそうな私を救った、島内攟送の驚きを。「今倜はここにいなさい」ず蚀われた瞬間の、党身が厩れるような安堵を。旅で知った、人の枩かさを。

    私に刻たれた田代島の蚘憶は、島に぀いおから出䌚った猫たちの奔攟さず、島内攟送の衝撃、そしお特別な郚屋で過ごした枩かい倜、それがすべおだった。

    自分探し旅ブヌムを揶揄するような傟向が、特に近幎あるように思う。確かに、「自分」は旅先で「探す」ものではない。でも、旅には、思いがけない出䌚いで心を揺さぶる力がある。心が動くず、結果的に自分の新しい䞀面や、倉わらない䞀面を深く知るきっかけになる。

    人生には、旅が必芁だ。
    あの日の田代島を、私は決しお忘れない。


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    画質  (æ³£)






     
     
     
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