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私はカラスにまで子供認定されたらしい。

カラスに襲われた。

母との散歩からの帰り道に。

梅雨には珍しく気持ちよく晴れた日、
ちょうど私の休みが重なって、
お散歩しない?
と母を誘った。

久しぶりの晴れ
久しぶりの休み
久しぶりの散歩

久しぶりがたくさん重なったあの時間。

何か特別なことをしているわけではない
けれど“幸せ”を感じていた。

あの時までは。

まだ夏本番前とはいえ、
散歩をしていれば、
じんわりと汗をかいてきて、
喉も乾き始めた。

半袖で来ればよかったね、
と話していたら
近くにコンビニが見えたので
ずっとやってみたかった
自分で完成させるフラッペを
飲んでみようということになった。

コーヒーメーカーで
専用のミルクを注ぎ
よく混ぜて1口。

冷たい氷が全身を駆け巡り
あっという間に潤った。

お散歩をしているうちに
日が落ちてきたこともあって
フラッペを飲み終わる頃には
だいぶひんやりしてきた。

やっぱりまだ長袖だね、
と言いながら歩いていたら、
黒い影が私たちの頭上を通った。

見上げるとカラス。

夕方がよく似合うカラス。
カラスがよく似合う夕方。

カラスにさえ
情緒を感じながら歩みを進めていた。

次の瞬間。

ウワッと自分の声がした。

状況を把握するより先に
反射的に声が出た。

私の左腕を黒い影がかすめた。

前方にはカラス。

私の左手には
先程まで飲んでいた
空のフラッペの容器。

まさか。

今度は右手で
なるべく低い位置で持つ。

カラスの行方が見えなくなったと
思ったら、ワサーッと
今度は母と私の頭上の間を。

母と私の間には
空のフラッペ。

まさかまさか。

と考える間もなく
今度は私の頭を何かがかすめた。

少し先の空にはヤツがいる。

さすがに危機感を覚え始める。

コンビニで洗剤なども調達していたので
その袋に入れちゃいな、と
母から助言を受け
空のフラッペを放り込む。

でも、
行く先の電線にはヤツが。

進路を変えようと
右方向に早足で歩き始めた時。

「うしろ!!!」

と母の叫ぶ声が聞こえ
振り返ると
カラスが私を目掛けて急降下。

反射的に姿勢を低くし
方向転換。

そこからは
正直記憶が曖昧。

大爆走。

本当に文字通り、
爆走した。

自分ってこんなに走れるんだ、
とそこは冷静に驚けるほどに
無我夢中で走る。

でも当然相手は空中戦。

私がいくら走ろうとヤツは
上から私の居場所を突き止め
急降下してくる。

ヤツは正面ではなく、
必ず背後から迫ってくる。

小賢しい。

だから時折、
後ろで見張ってくれている
母からの警告の叫びが飛んでくる。

その度、振り返るとヤツは
私目掛けて飛び込んでくる。

あっちへこっちへ蛇行しながら、
時にはしゃがみながら
100mは全力疾走。

ちょうどそのあたりで道の脇に
スーパーが出てきて走り込んだ。

全身汗だく、息切れ。

一緒にいた母はというと、
少ししてから
私が駆け込んだスーパーに来てくれた。

ヤツがどこか遠くへ飛んでいくのを
見届けてくれたらしい。

スーパーから家までは
歩いて10分ほど。

カラスはもうどこにも
見当たらなくなっていたが、
一刻も早く屋根のあるところに
行きたくて、
猛スピードで家に帰った。

中学生ぶりの全力疾走と
カラスに襲われた疲労感で
30分ほど床と一体化していた。

カラスは人間の中でも女性と子供を
見極めて攻撃するらしいよ、
と母。

なるほど。
賢い。

なんで分かるんだろう。

ん?
待てよ。

私は母といた。

でも攻撃されたのは私。

つまり。

私は小さい頃から
実年齢より幼く見られていた。

若く、ではない。

小学生(7歳)の時には
「未就学児のお子様は
ドリンクバー無料です」
と言われた。

中学生(14歳)の時には
「こちら、
小学生限定のお子様メニューです」
と言われた。

高校生(16歳)の時には
「こちら失礼します」
と熱々のお茶が入ったお湯呑みが
運ばれてくるなか、
1人だけ水の入ったコップに
ストローが刺さってきた。

まさかカラスにまで
子供認定されたのか。

というか
そもそも人間がカラスに
襲われているところなんて
見たことがない。

ンーーー!クソッ!!クソォ!!!

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