じいちゃんが降らせた雨
じいちゃんの墓参りへ行った日、母はこう言った。
「お父さん、いつもおらへん気がする。」
本当に居ないのかはわからない。
けれど、その言葉は妙にしっくりきた。
2026年6月14日。
阪神競馬場は宝塚記念に湧いていた。
じいちゃんの馬が出走する予定だったからテレビで見守りたかったのだけれど、息子と二人時間の日曜日、出かける予定で観戦できないと思っていた。
けれど、なぜか珍しく息子の機嫌が斜めだったので、早めに退散し、出走直前に中継を見守ることができた。
本馬場入場直前のこと。
「なんと、場内は雨が降ってきました。放送席にまで雨水が入ってくるくらい、一気に雨足が強くなってきました。」という放送が流れてきた。
良馬場だった競馬場が、みるみるうちに重馬場へ変わっていく。
信じられなかった。
じいちゃんの馬、メイショウタバルは、重馬場に強い馬だった。
そして、宝塚記念はじいちゃんにとって特別なレースだ。
だから、私は思った。
「あ、この雨、じいちゃんが降らせにきてるんだ」
結果、2026年の宝塚記念を制したのは、メイショウタバルだった。
私は、泣き崩れた。
レース中雨は弱まり、終わる頃には止んでいた。
武豊騎手もインタビュー時、「松本会長が降らせてくれたんだと思います」と言っていた。
そんな出来事が、あまりにも重なりすぎていた。
ある人はこう言った。
「雨雲レーダーを見た時に、目に入った地名、“明石”。先代松本オーナーの出身地だ。明石から吹く風が、雨雲を運んできている。」
実際、重馬場に変わったとき、馬券を買い足した人は少なくないらしい。
この雨を先代オーナーが呼んでいるんだと思った人が、私だけじゃなかった。
母が言ったあの言葉。
「お父さん、いつもおらん気がする」
本当にそうだと、あの日は思った。
あの日だけは、お墓にいなかったのだろう。
阪神競馬場にいたのだから。
_____ END.
このレースでは、マイユニバース号が心不全を発症し、帰らぬ馬となりました。喜びと悲しみが同居した一日だったことを忘れず、静かに思いを寄せながら、この記事を終えたいと思います。
