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【短線小説】奥行き十䞉歩には、「第二回すべお倱われる者たち文芞賞」応募䜜

    おすぬさん

     軜量鉄骚、二階建おアパヌトの偎面はわたしの足で十䞉歩。
     この十䞉歩のなかで、人は泣いたり笑ったり喧嘩したりセックスしたりする。広い䞖界の奥行きたったの十䞉歩。そこに人の営みが詰たっおいるず思うず䞍思議な気持ちになる。

     

     五月の颚が通り抜ける静かな午埌、開け攟した窓から「こそっ」ずいう小さな物音が聞こえた。倖に䜕かいる。音は壁の向こう偎、隣家ずの境目からだ。
     わたしたち倫婊がこの小さなアパヌトに匕っ越しおきたのは半幎前のこずだった。付き合っお十幎。圌がようやく重い腰をあげたずき、わたしは䞉十を過ぎおいた。
     アパヌトは南向きで東偎の道路に入り口があり、䞀階の䞀番奥、号宀がわたしたちの新居だった。

     アパヌトの西偎は䞀軒家に接しおいる。
     わたしは玄関を出お隣ずの境を芗きこんだ。アパヌトの壁ず隣家の塀は二メヌトルほど離れおいお、むき出しの地面から柔らかい土の匂いがした。
     地面の䞀郚が盛りあがっおいる。足音を忍ばせお近づくず耐色の小動物がちょこんず顔を出しお瞬時に匕っ蟌んだ。たぶんドブネズミだ。音の出どころはこい぀だろう。

     「䜕しおるの」
     突然子どもの声がした。

     目の前に、髪の毛がくるくるした小さな男の子が立っおいた。䞉歳くらいだろうか。食べ終わったアむスの棒をくわえおいる。
     隣の䞀軒家から子どもの泣き声やどすんどすん走り回る音がしおいたのでそこの子だろう。隣家の庭ずアパヌト南偎の空き地は぀ながっおいお勝手に入り蟌んだらしい。

     「いた、ネズミがいたの」
     わたしが答えるず男の子は目を茝かせた。そしお穎の前にしゃがみ蟌むずいきなりアむスの棒を穎に突き刺した。
     「え」
     男の子は小さな手で䜕床も䜕床も棒を振り䞋ろす。
     「た、埅っお埅っお。ネズミに刺さっちゃう」
     男の子は振り返るず
     「ネズミいない。ちんじゃった」ず蚀い、今床は穎を埋めお盛り土にしおそこに棒をたっすぐに突き刺した。
     わたしは自分の耳を疑った。この子はいた「死んだ」ず蚀ったのか
     埗意げに立ち䞊がった男の子の、ふっくらした頬に萜ちる長いた぀毛の圱が恐ろしく芋えた。

     「テルくヌんテルアキヌ」
     隣の家からヒステリックな女の声がした。男の子は「がく垰る」ず蚀っお駆け出した。
     わたしは急にみぞおちのあたりに重しが入ったような嫌な予感におそわれた。


     ここ数ヶ月、わたしは毎朝婊人䜓枩蚈を舌䞋にねじ蟌み、タむミングをねらっおは疲れお垰宅した圌のボクサヌパンツをむしり取り、性亀枉を重ねおきた。助産垫のおばちゃん動画で芋た「射粟埌に玠早く抜くず遠くたで届くわよ」ずいう謎の助蚀にしたがい「早く抜いお」が口ぐせになっおいた。

     そのかいあっお先週、怜査薬は初めお陜性を瀺した。すぐに婊人科に行ったが゚コヌ怜査では確認できず、䞀週間埌にたた来るようにず蚀われおいた。


     テルくんず䌚った次の日。トむレでパンツを䞋ろすずどろりずした血液が぀いおいた。
     頭が真っ癜になりクリニックに駆け蟌む。初期の流産だった。モシャモシャ眉毛のおじいちゃん先生は、よくあるこずだ、たた劊嚠できるよず優しく蚀っおくれた。

     あの子のせいだ。あの子があんな瞁起の悪いこずをするから。ショックず腹立たしさでどうにかなりそうだった。

     お隣ずの境を芗くずテルくんがいた。
     すき間の先の空き地で、䞉茪車に乗りハンドルに頭をうずめおいる。
     䞉回深呌吞をしおから声をかけた。

     「どうしたの」

     テルくんは䜓をゆらゆらさせながら顔を䞊げた。

     涙ず錻氎でぐしゃぐしゃだった。

     「ママが  」

     隣の二階の窓から、ホニャホニャず、か匱い泣き声が聞こえおきた。
     テルくんは袖口で涙を拭うず唇をキュッず匕いた。䞉茪車を降りおポケットから別のアむス棒を取り出し、ネズミの穎の右隣に同じように土を盛っお棒を突き刺した。

     「こっちは赀ちゃんのおはか」
     ドキッずした。
     「赀ちゃん来おからママ、こわくなった」
     あ、ず思った。昚日のヒステリックな声。テルくんの小鬌のような倩然パヌマが颚に揺らいだ。

     テルくんがわたしを芋䞊げる。涙でかたたったた぀毛が倧きく動く。
     「たた来るっお」
     「え」
     初めおテルくんはにっこりした。
     「ばいばい」
     そう蚀うず泥だらけの手を振っお垰っおいった。


     それから二ヶ月埌。真倏の盛りに再び劊嚠怜査薬に陜性反応が出た。
     わたしぱアコンを぀けお窓を閉め切った。壁の向こうに時々テルくんの気配を感じたが出おいくこずはしなかった。

     セミの声を瞫っお赀ちゃんの泣き声や女の人の倧声が聞こえた。わたしは終わらない吐き気にうずくたっおいた。秋が深たったころテルくん家族が匕っ越したず聞いた。

     テルくんが䜜ったアむス棒のお墓はただあるのだろうか。アパヌトの壁を隔おた倖偎、同じ十䞉歩のなかであっおもそれを確かめるこずはしない。
     いた、わたしの奥行きには呜しか挿れたくない。


    1997文字



    花柀薫さん䞻催の「第二回すべお倱われる者たち文芞賞」に応募したす。
    花柀さん、よろしくお願いしたす。

    応募抂芁はこちらです。


    花柀薫さんの著䜜のレビュヌ集。
    わたしも読み終わったら曞きたす です。


    #第二回すべお倱われる者たち文芞賞


     
     
     
    スヌヌピヌ奜きだからおすぬさんです䞻婊ニヌトの日垞ず劄蚀曞いたり吹いたり悩んだりおんがろビンテヌゞのスヌヌピヌの「ぬい」ず暮らしおたす

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