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This Life #9|リフレクト・リスペクト

    大学三年生が始まり、まだどこか遠くに見えていた「進路」という二文字が、少しずつ現実味を帯びて近づいてくるのを肌で感じていた。

    授業では相変わらず広告制作や商品開発の課題に追われ、試作のモック作りやプレゼンの準備に明け暮れる日々。

    物事を本質まで掘り下げたくなる私の気質は、表面的なインパクトを重視する広告畑の先生としばしば衝突し、学びの内容と自分の性格が乖離しているのではないかと悩むことが増えていた。


    彼や周囲が着々と将来を見据えて動き出す空気の中で、私はひとり、自分の居場所を見失い、ただ立ち尽くしているような感覚にいた。

    そうして未来が現実味を帯びるのと歩調を合わせるように、一番近くにいるその人に対して、ある臆病な問いが私の胸をかすめる。


    目の前の課題と、進路に向き合うだけで精一杯な今の私。支えられるばかりの日々に甘えながら、私は果たして、少しでも彼の力になれているのだろうか。

    自分の中に答えを探しても、パッと思い浮かぶ実感が何一つない。

    そんな風に、自分がただの「もらうばかりの存在」に思えて仕方がなかった時、何かの拍子に『いつも本当に尊敬してる』と、真っ直ぐな想いを伝えたことがあった。

    すると彼は、いつもの軽やかな調子でこう返してくれた。


    『俺も奈子には感謝感謝と尊敬と、ぴかーっとリフレクト・リスペクト!』

    『いや、奈子の羨ましく思うところ、ほんまたくさんあるし。リスペクト!』


    予想もしていなかった、まっすぐで温かいその言葉。それは、小さくなっていた私の心を、そっと丸ごと救い上げてくれるようだった。

    「今の私のままでいい」──そう、許されたような気がした。

     
     

    204.

     
     
    あの日の自分との約束を果たすために。 風化してしまいそうだった切実な実感を、 14年の時を経て、ひとつの物語として綴ることにしました。 ノンフィクション・ノベル『This Life』

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