葬花~深海からのおくりもの~ エピローグ
ロゼ・マーレ 午前10時
翌朝、目が覚めたグレイスを応接スペースに呼んだ。
「グレイス、昨日はよく眠れた?」
「うん、久しぶりによく眠れたよ」
「それは良かった」
安心したところで、本題に入る。
「あなたに渡したいものがあるの」
「なに?」
机に置いてあった小箱をグレイスの方へ押しやる。
「開けてみて」
「綺麗だな…」
箱の中には紫色に光る花が着いたイヤーカフがはいっている。
「これが、最初の方に説明した葬花の花の方よ。死者の想いが石に、遺族の想いが花になってできるものなの。」
私の説明を、グレイスは黙って聞いている。
「葬花は死者と遺族だけて行う儀式であり、奇跡そのもの。奇跡は証明が難しい」
そこで一旦言葉を区切る。
「だけど、その葬花は紛れもない奇跡の証よ」
グレイスが弾かれたように顔を上げる。
「そのイヤーカフは、あなたとお母さんが過ごした3日間そのもなの。だから、大切にしてくれると嬉しいわ」
「はい。ありがとうございます」
グレイスは泣きそうな声でお礼を言って、頭を下げた。
下を向いたままの彼からすすり泣く声が聞こえるのを私は黙って聞いていた。
「ロゼさん、改めて本当にありがとうございました。」
「いいえ、こちらこそ。また遊びに来てね」
言ってからしまったと思う。
「はい!」
少し肩入れがすぎるな、と自分を戒める。かといって、満面の笑みのグレイスを前に一度言った言葉を取り消すのも気が引けて、私は笑顔で頷く。
「ロゼさん。俺にも葬花はできますか?」
ふと真顔になったグレイスが問う。
「うーん、一概には言えないけど…不可能ではないと思うわ」
「そうですか、分かりました」
「?」
「ロゼさん、必ずここに戻ってきます。だからその時は、俺に葬花を教えてください」
「え?」
思ってもみない申し出にたじろぐ。
グレイスの目は真剣だ。
私は少し考えてこう返した。
「そうね、もしもあなたが戻ってくることがあれば、その時は教えてあげるわ」
途端に、グレイスの顔が花が咲くように明るくなる。
「ありがとうございます!」
そのお礼は、これまで聞いたどんな言葉よりも澄んで聞こえた。
葬花~深海からのおくりもの~
第一章 「黝簾に咲く希望」
タンザナイト:「高貴」「知性」「希望」
カスミソウ:「感謝」「幸福」「切なる願い」