我が音楽史(Beatles)
第1回:ビートルズ
私が初めてビートルズの洗礼を受けたのは、一体いつのことだっただろう。
記憶を遡ると、小学6年生の頃に流れていたテレビCMに突き当たる。 「エルピー、エルピー……」 流れてきたのは、どこか物悲しく、けれど胸の奥にすっと入り込むメロディー。もちろん、不朽の名曲『Let It Be』だ。
当時、クラスに一人「ビートルズに狂っている奴」がいた。彼が熱っぽく語る断片的な情報から、どうやらイギリスに凄まじいバンドがいるらしい、ということだけは子供心に理解していた。
正直に言えば、私はリアルタイムのビートルズを知らない。けれど、中学生になってラジオから流れてくる彼らの音を改めて耳にしたとき、理屈抜きに直感した。 「あぁ、こいつら、ただ者じゃない」
決定打は、高校1年生の夏。部活の合宿中だった。 消灯時間を過ぎた暗い部屋で、密かにラジオから「ビートルズ特集」が流れ出した。耳を突き抜ける鮮烈なリズム・メロディー、重なり合うハーモニー。私は眠ることさえ忘れ、食い入るようにその音の奔流に身を浸した。
そこからは、坂道を転げ落ちるように沼に嵌まっていった。 それまで「どこかで聞いたことがあるCMソング」でしかなかった点と点が繋がり、壮大な音楽の地図が目の前に広がっていく感覚。
当時は、今のようにサブスクもなければ、レンタルレコード店すらまだ存在しない時代だ。 武器はラジカセ一台。お目当ての曲が流れるのを待ち構え、息を潜めて「録音ボタン」を押す**エアチェック(AIRCHECK)**が日課になった。
それでも我慢できず、一枚、また一枚とレコードにも手を出し始めた。 当時のレコードは高校生にとって高級品だ。月に1枚か2枚買うだけで、なけなしの小遣いは無慈悲に消えていく。今振り返れば、あの高校時代こそが、人生で最も音楽に「散財」していた黄金期だったと思う。
その後、大学生でレンタルレコードの文化が到来し、社会人になってCDの時代へと移り変わったことで、私の財布はようやく一息つくことができた。
それから今日に至るまで、洋楽を中心に数え切れないほどのアーティストを聴き漁ってきた。けれど、私の音楽史の1ページ目を開けば、そこにはいつも、あの「物悲しいメロディー」が鳴り響いている。
私の音楽体験は、間違いなくビートルズから始まったのだ。
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