
学校からの電話は、怖かった。元教員、見え方が変わった③
教員になったばかりの頃。
子どもが何度も話を聞かなかったり、
持ち物の片付けができなかったりすると、
保護者へ電話をしていました。
「今日、こんなことがありました。」
「お家でも声をかけていただけますか。」
子どものため。
学校と家庭で一緒に支えたい。
そんな思いで電話をしていました。
でも今思うと、
私は一番大切なことを見落としていました。
それは、
保護者との信頼関係です。
⸻
親になって初めて気づきました。
学校から電話がかかってくる。
その画面を見るだけで、
胸がドキッとすることがあります。
「何かあったのかな。」
「うちの子、また迷惑をかけたかな。」
そんな気持ちになるんです。
先生には責めるつもりなんてない。
私も先生だったから、その気持ちはよく分かります。
でも、受け取る側の気持ちは違うことがある。
親になって、そのことを知りました。
⸻
子どもを産んでから教員をしていた頃、
私は保護者との関わり方を少しずつ変えました。
電話をするなら、
まずは、その子の頑張っていることを伝える。
電話をするほどではない日は、
連絡帳に一言だけ書くようになりました。
「今日は友達に優しく声をかけていました。」
「最後まで掃除を頑張っていました。」
「こんな笑顔が見られて、私もうれしかったです。」
ほんの一言でも、
保護者にとっては、
「先生はうちの子をちゃんと見てくれている。」
そんな安心につながることがあります。
⸻
そして、その一言には、
もう一つ、大きな力がありました。
保護者は、その日のうちに子どもへ伝えてくれるんです。
「先生が今日、こんなこと頑張ってたって言ってたよ。」
「そんなことができたんやね。」
「先生、喜んでくれてたよ。」
すると次の日、
子どもは少し照れながら、
でも、どこか誇らしそうな顔で学校へ来る。
そしてまた頑張ろうとする姿を、
私は何度も見てきました。
先生から保護者へ。
保護者から子どもへ。
たった一言の「よかったね」が、
親子の会話を生み、
子どもの自己肯定感を育て、
保護者にも笑顔を届ける。
私は、その温かい連鎖が大好きでした。
⸻
困りごとを伝える時も、
言葉を少し変えるようになりました。
「学校ではこんな様子があるんですが、お家ではどうですか?」
「最近、お家で何かありましたか?」
「おうちの方もしんどくないですか?」
子どもの様子だけを見るのではなく、
その子を支えている保護者のことも考えるようになりました。
子どもが不安定な時は、
「この子に何があったんだろう。」
だけではなく、
「お家でも何かあったのかな。」
そんなふうに想像するようになりました。
⸻
そして最後には、
必ず伝えたい言葉がありました。
「いつもありがとうございます。」
「お家でも見てくださって、本当にありがとうございます。」
親になって分かりました。
保護者も毎日、一生懸命なんです。
仕事をして、
家事をして、
子育てをして、
その中で子どもを学校へ送り出している。
だから私は、
お願いをする前に、
ありがとうを伝えたいと思うようになりました。
⸻
ある時、気づいたことがあります。
私は保護者に好かれたくて、
関わり方を変えたわけではありません。
子どものためでした。
先生と保護者が安心して話せる関係なら、
困ったことがあっても、
「どうしましょう。」
ではなく、
「一緒に考えましょう。」
と話せる。
その関係が、一番安心するのは子どもなんです。
⸻
先生も、保護者も、
目指していることは同じです。
「この子が笑顔で過ごせますように。」
その願いは、きっと同じ。
だから私は今、
正しいことを伝えることよりも、
信頼関係をつくることを大切にしたいと思っています。
その信頼関係は、
先生が子どもを褒め、
保護者がその言葉を子どもへ届け、
子どもがまた頑張ろうと思える。
そんな温かい循環を生み出します。
親になって初めて見えた景色でした。
そして、その景色を知った今だからこそ、
私はこれからも、
「一緒に頑張りましょう。」
そう言える大人でありたいと思っています。