
二度飛ぶ
ダブルジャンプが出来た。ゲームの話ではない。現実だ。
ちょうど友達とテニスをしているときだった。
スマッシュを打ち込もうと飛んだものの、高さが足りなかった。
その時、やけくそでもう一回ジャンプを試みたら飛べたのだ。
地面に着地したわけでは無い。空中でもう一度飛んだのだ。
勿論私は信じられなかったし、友達はもっと信じられないといった顔をしていた。
すぐに受け入れられる様な事ではない。
空中でちょっと飛ぶくらいなら、中国の達人とかがやってそうだが、私は地上で飛ぶのと同じくらい高く舞った。
そして驚いたことに何度試しても、何度でもできるのだ。
驚愕の表情のまま動かなくなった友達にもやってみろといったのだが、もちろんダブルジャンプが出来るわけも無く、無様な態勢で地面に激突していた。
ヘンな夢を見ているという結論に辿りついた我々は、すぐに家路につき、外がまだ赤いうちに眠りにつくことにした。
次の日、目が覚めてからは割とすぐに飛び、天井に頭をぶつけることで意識をはっきりさせることになった。
二度飛んだのはヘンな夢ではなく現実であると、私はここで知った。
それからの日常は劇的に変わった……わけでは無かった。
ダブルジャンプが出来ると世間にバレればどんなことになるのか、想像しただけでもたまったもんじゃない。人体実験の材料にされるだけならまだしも、お茶の間に流れるテレビの「びっくり超人枠」にされるくらいなら死んだ方がましだ。
子供たちに好奇の目で見られるなんて勘弁願いたい。
と、まあこのように、世間様に存在を知られることを恐れた私はこのことを秘密にすることにした。もちろん友達にも口止め料として、焼き肉をおごった。これがいつまで効力を持つかわからないが。
とはいえ、せっかくのダブルジャンプが出来る権利を全く行使しなかったわけではない。
遅刻しそうな時、女の子にカッコつけたいときに使わせていただいた。
皆さまがテレビで二度飛ぶ男を見る日も近いかもしれない。
びっくり生き恥人間である。