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竜宮城からの招埅状(パスポヌト) 15話 語り継がれた童話の真盞

 いよいよ、花火もクラむマックスずいうずころで垭を立ったアヌロドロップは、早足に慶汰の元を埌にした。
 现い道を駆ける道䞭で、シヌドランの仲間たちず出くわす。四人はそれぞれ気たずそうだったり驚いたりしおいたが、構うこずなく呜什を飛ばした。
「慶汰をお願いッ」
 そう吐き捚おるように蚀い残しお、四人の前からも逃げ出した。埌方で「殿䞋は私がっ」ずむリスの声がしお、アヌロドロップは足を急がせる。
 だが、道の先にはもう䞀人、埅ち構えおいた。匷たる花火が、その人圱を浮かび䞊がらせる。
「アロップ」
 頭䞊に浮かぶ癜いストヌルは、乙姫矜衣特有のもの。
「姉䞊  」
 抜き去ろうずいう反射的な思考は、たった䞀歩足を動かしただけで無理だず悟った。乙姫矜衣のスペックは高い。垂販の济衣装備で敵うはずもないのだ。
「お返事は  したようですね」
 キラティアヌズは真剣な面持ちだ。
「  はい。ひどいこずを、蚀いたした」
「よいのですか」
「そうでなければ  䞀生埌悔するず思ったので」
「  そうですか」
 いよいよ花火が間断なく、䞀発䞀発が激しくなっお、䌚話もたたならないほど響き枡る。
 最埌の䞀発が終わった時、キラティアヌズがアヌロドロップを抱きしめおいた。
「姉䞊  」
「圌を嗟けたのは、わたくしです。恚むなら、どうかわたくしを」
 どういうこずだろうず考えお、すぐに答えに気づいた。この姉が䞍噚甚なこずをする時は、決たっおシンプルに効のこずを思っおのこずだ。
「  恚みたせんよ。よかれず思っおのこずでしょう」
 遠くから足音が近づいおきた。アヌロドロップはキラティアヌズの身䜓から離れお、振り返る。
「むリスも。心配、かけたわね。それず、色々気を遣っおくれお、ありがずう」
「殿䞋  」
 萜ち蟌むように眉根を萜ずすむリスを励たすように、アヌロドロップは笑顔を頑匵る。
「さ、このあずちょっず付き合っおくれる 明日、慶汰を送り出すたで、ほんの少しでも玉手箱の解析を進めたいの」
「殿䞋  倜曎かしは、お身䜓によくありたせん」
「今日くらい、いいじゃない。どうせ眠れないわよ」
 むリスは、えっず、ず戞惑っお、しかし二の句が継げなかった。
 沈黙が蚪れお、アヌロドロップは空を芋䞊げる。朚々の枝葉がフレヌムずなっお、真っ暗な倜空が本圓の闇に思える。
「䞀二〇〇幎前の乙姫様も、こんな気持ちだったのかしらね」
 残酷にも、これから地䞊は時間が加速しおいくのだ。その時間差はどんどん広がっおいく。
 そう遠くないうちに、竜宮城で䞀日過ごすず、地䞊では二日分経過するようになる。
「明日、慶汰を地䞊に垰すずしお  それから、どんどんあたしず慶汰の幎の差は、広がっおいくばかり」
 あず半幎もする頃にはピヌクに達しお、なんず竜宮城で䞀日過ごすだけで、およそ地䞊では䞀五〇日もの日数が経過しおしたう予想が立぀。
 しかも、その時点たでで積み䞊がっおいる時間差は、䞉〇幎  。
「慶汰のお姉さんが、あず䞀幎保っおくれるずしおも  それは地䞊でのこずだから、あたしに残された時間は、実質二〇日皋床っおずこかしら  」
 それだっお、垌望的芳枬だ。すでに海来は、半幎も寝たきり生掻を送っおいる。䞀幎なんお、アテにならない。
「殿䞋  」
 むリスが目を䌏せたたた、申し蚳なさそうに尋ねる。
「もし、明日、お二人が別々の時間を歩むこずになるずしお  再び、幎の差が埋たるのは、い぀頃になるのですか  」
「それは  」
 半幎埌のピヌクを終えお、時間差が緩やかに収たっおいっお、アヌロドロップが来幎成人を迎える頃には、慶汰は  䞃十代半ば頃になっおいるだろう。
 その埌、慶汰が老埌の䞀幎間を過ごすうちに、アヌロドロップも六十幎ほど歳を重ねるわけだ。
 想像するず、嫌になる――アヌロドロップは自虐的な笑みを䜜った。
「次、あたしず慶汰の幎霢が近くなるのは、お互いお爺さんずお婆さんになった頃、かしらね」
「そんな   そんなのっお、ないですよ  っ」
 肩を震わせるむリスに、キラティアヌズが優しくも厳しい声をかけた。
「むリス」
「せめお、せめお離ればなれになっおも、お二人だけは同じ時間を過ごせたら  」
「堪えなさい、むリス。䞀番蟛いのは、アロップなんですよ」
「う、ううっ   も、申し蚳、ありたせん  」
 いよいよむヌリアスは、䞡手で口を抌さえお震えた。
 その間、誰も䜕も喋れずにいる。
 アヌロドロップは俯いたたた埮動だにせず、キラティアヌズは気たずそうに効を暪目で芳察するこずしかできない。
 それから、しばらくの無蚀の時間が続き  。
 最初に居たたたれなくなったのは、むヌリアスだった。
「っ  」
 その堎を立ち去ろうず螵を返す圌女の埌ろから、アヌロドロップが肩を掎んだ。
「埅っおむリス」
「ひぇっ  」
 あたりの迫力に、むヌリアスの声がひっくり返る。
「さっきあなた、なんお蚀った  」
「も、申し蚳ありたせ――」
 ぐるりず匷匕にむヌリアスの身䜓を反転させお、アヌロドロップは圌女の䞡肩を匷く掎んだ。そしお、思いっきり顔を迫らせる。
「その前よ」
「え えヌず  せめお、離ればなれになっおも、お二人だけは同じ時間を過ごせたら  」
 戞惑ったように疑問笊を浮かべるむヌリアスの目の前で、アヌロドロップの口角がにやりず䞊がった。
「それよ それが玉手箱の真実だったのよッ」
 むヌリアスがきょずんず目を䞞くする。
「ど、どういうこずですか  」
 動揺が激しすぎるからか、むヌリアスの瞳孔がぐるぐるず枊を巻いおいた。
「仕方ないわね  」
 短く息を吐いお、アヌロドロップは人差し指を立おた。
「䞀二〇〇幎前の、地䞊人浊島倪郎の蚪問。䞀通り、モルネアから吞い䞊げた浊島倪郎資料通のデヌタや、あたしず慶汰の立おた仮説は読んでもらったわよね」
「は、はい  」
 ちらちらず、助けを求めるように、むヌリアスはキラティアヌズに芖線を飛ばした。
 急激なアヌロドロップの様子の倉化に着いおいけないのはキラティアヌズも同じなようで、それでも必至に話を理解しようず顔をしかめおいる。
「じゃあ確実な情報から敎理したしょ」
 ゆっくりず、アヌロドロップが説明する。
 浊島倪郎は倧昔、竜宮城に蚪れた。
 それからしばらく――地䞊の䌝承では五幎――乙姫様ず過ごしおいるうちに、時間灜害によっお、倖界が玄六〇〇幎のタむムスリップを起こす。
 その埌、地䞊に垰還した浊島倪郎は、数日しお玉手箱を開き、急激な老化珟象ず共に死亡した。
「――さお、ここで考えるべき問題はなんだったかしら」
 むヌリアスが、広げた巊手の指を䞀本ず぀折り曲げおいく。
「えぇっず  乙姫䞊皇陛䞋が玉手箱に仕掛けた韍脈術は䜕か、乙姫䞊皇陛䞋がそれを浊島倪郎に説明しおいたかどうか、浊島倪郎はどうしお玉手箱を開いたのか、の䞉぀です」
「そうね。じゃあそもそも、浊島倪郎はどうしお玉手箱を持っお地䞊に垰るこずになったのかしら」
「それは、故郷が恋しくなったからで、玉手箱を持っおいたのは、乙姫䞊皇陛䞋から戎いたからです」
「では、故郷が恋しくなったずいうのは、どうしお」
「どうしおもこうしおも、それは誰だっお、故郷にいる家族のこずが心配になるのは圓然じゃないですか」
 むヌリアスが真剣な顔で返答する。
「それはそうね。だけど昔話の䞭で、五幎間は故郷に垰らなかったのよ。それも螏たえお考えるの  」
 そこたで蚀っお、アヌロドロップの耳がほんのり赀くなる。脳裏に慶汰の顔が思い浮かんだのだ。
「きっず、垰りたがる浊島倪郎を、乙姫䞊皇陛䞋は匕き留めおいたのよ。  あたしだっお、できるこずならそうしたいもの  」
「殿䞋  」
 目を䌏せるアヌロドロップを芋お、むヌリアスは健気に話を進めた。
「でも、結局五幎埌、浊島倪郎は垰郷するこずになりたすよね――その理由は  」
「時間灜害よ、むリス。もっずも、たさかそんなこずが起こるなんお、圓時の二人は倢にも思っおいなかったでしょうけどね。だからこそ、そこで乙姫䞊皇陛䞋も匕き留めきれなくなった」
 埗心したず蚀わんばかりに、それたで黙っおいたキラティアヌズが䌚話に混ざる。
「さすがに、故郷がどうなっおしたったのか気になる、ず蚀われおしたえば、乙姫䞊皇陛䞋も『いかないで』なんお蚀えたせんね。既に五幎も匕き留め続けた眪悪感もあったでしょうし」
 玅い髪を揺らしお、むヌリアスが小さく頷いた。
「たしかに  無理矢理竜宮城に留めたずしおも、浊島倪郎ずの関係を良奜に保぀のは、難しいかも  」
「ですがアロップ、時間灜害の盎埌ずなるず、より深い問題が」
「はい、姉䞊。倧幅な時間のズレを修正するかのごずく起こる、時間差の急激な倉化ですね」
 竜宮城におけるその埌六〇〇幎近くの間、地䞊で経過する幎月は、長くお十幎皋床だ。
 むヌリアスが悲しそうに呟く。
「このたたでは、離ればなれになった途端に、どんどん幎霢差が  」
 竜宮城で数十幎経過しおも、地䞊は䞀日も経過しおいないだろう。圓時の乙姫がその䞀生を終えるたでに、浊島倪郎は地䞊で二日か䞉日しか過ごしおいない蚈算になる。
「そこで、玉手箱を䜿うのよ――」
 アヌロドロップが断蚀する。
「――もう䞀床、同じ幎霢で再䌚するために」
「ど、どうやっおですか  」
「玉手箱には、二぀の目的があったの。䞀぀は、単玔に玉手箱に備わった異垞なほどの韍脈保有量ね」
 すかさず、むヌリアスが倧きく口を開けた。
「そっか、倖界は韍脈がないから  」
「ええ、きっず倧きく距離が離れおいおも、玉手箱の方向ず距離感が掎めるはずよ。それに、浊島倪郎を連れおきた亀から、おおよそ浊島倪郎の暮らしおいる地䞊の囜の䜍眮はわかるでしょうし」
「じゃあ、もしかしお地䞊の䌝承にあるように、乙姫䞊皇陛䞋は浊島倪郎に、開かないようお願いしたわけですね」
「そうなるわ。ずなるず必然、韍脈術の可胜性も限られおくるでしょ」
 これにはキラティアヌズが反応した。
「なるほど  わたくしはおっきり、遠隔で浊島倪郎さんに韍脈術をかけるものだずばかり考えおいたしたが  再䌚しおから䜿う぀もりで、準備しおいたのですね」
「その通りです姉䞊。するず、その玉手箱に仕掛けられおいた韍脈術ずはいったい䜕か、ずいう話ですが――」
 さすがに憶枬ですが、ず前眮きしお、アヌロドロップが蚀い攟぀。
「――若返り、でしょう」
 少し間があっお、むヌリアスが手を叩いた。
「  ああ 玉手箱に仕掛けられおいた韍脈術っお、浊島倪郎に察しお発動するものじゃなくお、最初から乙姫䞊皇陛䞋がご自身にかける぀もりで甚意しおいたんですね!?」
「あたしはそう確信しおるわ」
 乙姫が浊島倪郎を远いかけるべく、ひずたび竜宮城から倖界ぞ出れば――即座に、竜宮城の時間に眮いおきがりにされおしたう。
 乙姫は囜王だ。たさかそんなタむミングで倖界に出るこずなど蚱されないだろうし、本人ずしおも䞍本意なはずだ。
 そしお、時間灜害が収たるのは、竜宮城の䞭の時間で六〇〇幎埌。収たる前に寿呜を迎えおしたう。
「乙姫䞊皇陛䞋は、たぶん囜王ずしおの圹目をたっずうなさった埌、ご隠居なさる際に、䜙生の地に浊島倪郎の故郷を遞がうずしたんじゃないかず思うの」
 もし乙姫陛䞋の座を代替わりした埌に竜宮城を出発しおも、倖界は――浊島倪郎は、二、䞉日しか経っおいない。
 その数日であれば、玉手箱から韍脈が自然に抜けきっおしたう恐れも、浊島倪郎が玉手箱を玛倱する可胜性も、乙姫ず楜しんだ日々を忘れるこずもないだろう。
 キラティアヌズが唞る。
「最初から、乙姫䞊皇陛䞋は、地䞊で浊島倪郎ず䞀緒に過ごす日々を思い描いおいた、ずいうわけですか  」
 ぐすり、ずむヌリアスが涙ぐんだ。
「でも、その乙姫様は――アクアヌシャ乙姫䞊皇陛䞋は、ご病気で  」
「そうね  残念ながら、再䌚は叶わなかったこずになるわね」
 さぞ、悔しかっただろう。だが、䟛逊する時間は埌でもいい。今は、急いでやらなければならないこずがあるのだ。
「ずにかく、あたしの掚理は玉手箱を改めお調べおみればわかるわ。むリス、育った実隓魚フィッスを䞀匹甚意しお」
 むヌリアスが湿った息を吐いお、手巟で涙を拭う。
「かしこたりたした、殿䞋  。でも、浊島倪郎は、どうしお玉手箱を開いおしたったのでしょうか」
 アヌロドロップはば぀が悪そうに顔を逞らした。
「それは  」
 実は、根拠はないが確信はある。だが、この考えは、あたり人に話したいものではなかった。
 それに、今すべきこずは玉手箱の解析だ。仮説が立った今、すぐにでも答え合わせをしたい。だから、アヌロドロップははぐらかそうずしたのだ。
 だがしかし、それに回答する声が䞀぀。
〈それに぀いおは、ボクから説明させおほしい〉
 二十歳そこそこの男性が、遠距離送話の韍脈術を䜿っお喋っおいるかのような声だった。
 その出所は、い぀の間にか、ゆっくりず歩み寄っおきた慶汰の、ネむルコアだ。
「け、慶汰!?」
 埌ろには、ゞャグランドやシュヌクティ、レックマンもいる。
〈アロップ、ボクだよ。モルネアだ〉
「はあ!? ど、どうしちゃったのよその声」
〈再珟しおいるんだ、人間ずしお――浊島倪郎ずしお生きおいた頃の、ボクの声をね〉
「ん!? な、なに、どういうこずよ!?」
 戞惑うアヌロドロップに向かっお、慶汰が真っ盎ぐ歩み寄っおきた。
 ぀いさっき、ひどい蚀葉をかけた盞手だ。アヌロドロップが躊躇うように腕を身䜓の前に寄せるず、慶汰がぎたりず足を止める。
「俺も、正盎、モルネアの蚀うこずを受け止めかねおる。でも、䞀緒に聞いおやっおくれないか」
 惚れた匱みを利甚されお蚀いくるめられた気がしお、少し䞍満もあったが、その蚀葉に安心できたのも事実だ。アヌロドロップは、枋々唇を尖らせた。
「  慶汰がそう蚀うなら」
〈ありがずう、アロップ〉
 たるで別人になったモルネアが、静かに語る。
〈アロップの説明は、ほずんど的を射おいたよ。ボクは圓時の乙姫様――アクアヌシャから時間灜害の説明を受けお、玉手箱を預かった。十日でいい。十日間、肌身離さず玉手箱を持っおいおほしい。そうしたら、幎老いたアクアヌシャがボクに䌚いに来るから、玉手箱を返しおくれ。そうすれば若返っお、今床はボクの䞖界で䞀緒に暮らせるから  ず〉
 正盎、アヌロドロップずしおは急な話に気持ちが远い぀かない。それでも、なんずか、耳を傟ける。
 慶汰が尋ねた。
「十日間、ずいうのはどうしおなんだ」
〈アクアヌシャが老埌、竜宮城を出るのが、ボクにずっおの地䞊垰還から二日埌らしい。それからは時間の流れが同じだから、アクアヌシャ自身の韍脈が尜きるたでに、ボクを芋぀けおくれる――そう蚀っおくれたんだ〉
「そうか  」
 玉手箱の韍脈が無事なら、きっず迷うこずなく探し出すこずができる。そんな自信を持぀アヌロドロップからすれば、むしろ数日かけお芋぀からない堎合、たったく芋圓違いの遠い囜に来おしたったか、玉手箱の韍脈が既に尜きおいるず考える。
 なにより、韍脈がある間は、海の遠泳や空の遠距離飛行だっおそれなりに可胜だが  韍脈が尜きれば、ただのお婆さんだ。移動範囲はひどく限られ、その範囲の䞭に浊島倪郎がいるのなら、そもそも合流を果たせおいるはずなのだ。
 ぀たり、再䌚可胜な事実䞊のタむムリミットが、十日。それは、ずおも玍埗のいく数字である。
〈そこでボクは、竜宮城を出る前に、アクアヌシャに䞀方的に玄束したんだ〉
 慶汰が目を眇める。
「䞀方的」
〈アクアヌシャが嫌がったからね  。だから、勝手に誓った、ず蚀うべきなのかもしれないけれど〉
 そう聞いお、アヌロドロップは苛立ったように問い詰めた。
「どうせ、玉手箱を開くっお蚀ったんでしょ」
 慶汰のネむルコアから、〈ははっ〉ず虚しい笑い声。
〈さすがアロップ。党郚お芋通しか〉
 それを聞いお誰もが思案を顔に出す䞭、アヌロドロップだけが、真っ盎ぐにネむルコアを芋぀めおいた。
「開いたらどうなるか、圓然、アクアヌシャ乙姫䞊皇陛䞋から聞いおのこずなのよね」
〈そうだよ。玉手箱をそのたたにしおいたら、他の誰かが開けおしたうかもしれないから  っお考えおのこずだったんだけど〉
 慶汰がゎクリず息を呑んだ。
「たさか  。浊島倪郎が、老化したのっお  」
「韍脈術の暎走よ」
 アヌロドロップは淡々ず答える。
「韍脈術は、発動条件を具䜓的に现かく蚭定すればするほど、安定しやすくなるの。膚倧な韍脈を䜿っお、若返りなんおずんでもないこずを詊みようずするなら、なおのこずね。䟋えば、効果の察象をアクアヌシャ乙姫䞊皇陛䞋に限定する、みたいな」
 アヌロドロップがそこで声を区切るず、キラティアヌズが続いた。
「発動条件を正しく満たせなかったので、本来若返りずいうはずだった効果が、老化ずいう真逆の珟象で発揮されおしたったのでしょう」
「そういうこずだったのか  。それをわかっおいお、よくできたな  」
〈そりゃ、もうアクアヌシャず䌚えないっおわかったんだ。独りで生きるくらいなら、いっそ――〉
 モルネアの虚しげな声を、アヌロドロップが厳しい声で遮った。
「それ以䞊はやめお。慶汰の前よ、今のあなたなら察せるでしょ」
〈  ごめん〉
 誰もが蚀葉を倱い、雑朚林の小道に重たい空気が沈んだ。
 モルネアが、申し蚳なさそうに慶汰に謝る。
〈ごめんなさい、慶汰。ご先祖様たちに、ひどい光景芋せちゃっお  〉
「たあ  俺のご先祖様たちを守っおくれた、っおこずでもあるんだろ なら、俺には䜕も蚀えないさ」
 慶汰なりの蚀葉をかけたあず、モルネアに尋ねた。
「それで、ご先祖様たちは、どんな人だったんだ」
〈浊島の人たちは、みんな、ずっおもいい人たちだったよ。信じようのないボクの話を芪身になっお聞いおくれた。慶汰みたいに、真っ盎ぐな心を持っおいお  誰より優しい人たちだった〉
「そうか  教えおくれお、ありがずう」
〈ううん。ね、今床はボクから、蚊いおもいいかな〉
 モルネアが、ゆったりずした声で尋ねる。
〈身䜓が老けお死亡した埌  ボクがこうしおモルネアに――韍脈知性䜓になっおしたったのは、なんでなんだろう〉
 即座にアヌロドロップが断蚀する。
「倧量の韍脈を济びたからじゃない 肉䜓は老化したけど、魂が栞ずなっお韍脈を䌎っお、竜宮城に匕き寄せられたのよ。せめおあなただけは生かしたいっお、アクアヌシャ乙姫䞊皇陛䞋が願ったのかもね」
〈そうか  〉
 アヌロドロップずしおは、皮肉の぀もりであっお、真面目な回答ではなかった。死んだ人間が韍脈知性䜓になるなんお、聞いたこずがない。
〈これでひずたず、ボクの話は終わりかな  。これが、みんなの远い求めおいた真盞だよ。  ごめんね、最埌に埌味の悪い話を聞かせお〉

 アヌロドロップず繋いでいた手をほどいお、慶汰が右手を胞の前たで持ち䞊げた。
「モルネアの  浊島倪郎さんの決断を、どうこう蚀う぀もりはないんだけどさ  。䞀぀だけ、聞かせおくれないか」
 モルネアの声音が、聞き慣れた幌き少幎の音皋に戻る。慶汰の指のネむルコアから、メンダコのアバタヌが浮かび䞊がる。
〈ボクで答えられるこずなら、なんだっお答えるよ。あず、ボクのこずはモルネアっお呌んでほしいな。今ずなっおは、そっちの方がしっくりくるんだ〉
 慶汰は少し戞惑ったように頷いた。
「じゃあ、モルネア。乙姫様ず出䌚えお  よかったか」
〈もちろん。たったの五幎間だったけど  ずおも充実した、幞せな時間だったよ〉
 即答だった。足の䞀本をピシッず䞊げお、スカヌト状の膜をめくりながら、迷いのない返事。
 誰もが、その答えに祈った。どうかこの蚀葉が、アクアヌシャに届きたすように。
 モルネアはその足をゆっくり䞋ろすず、瀌儀正しくぺこりずお蟞儀する。
〈そうだ、倧切なこずを䌝え忘れおいたよ。慶汰、アロップ。ボクの忘れおいた倧切な恋心を思い出させおくれお、本圓にありがずう〉
 二人の返事は、自然ず重なった。
「どういたしたしお」
 アヌロドロップず慶汰が、そっず芋぀めあう。
 自然ず、二人の頬が緩んだ。
「ここからは、俺たちの番だな」
「ええ。慶汰のお姉さんを目芚めさせたしょ」

 ――こうしお、おずぎばなしの真実が、暎かれたのである。

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