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「ハッピーニャーニャー」 #せりふ三題噺

    加賀 一(かが はじめ)

    「ハッピーはどう?」
    「ニャーがいいよ、猫らしくて」
    家族会議にて、先週拾った子猫を飼うことに決めた七篠家で交わされていた会話である。七篠家の名付けのセンスは皆無らしい。
     こうして七篠家の二匹の猫たちは、ハッピーとニャーになった。七篠家の人間は往々にして横着をはたらく。たとえば、二匹の猫をまとめて呼ぶ。
    「ハッピーニャー、ご飯だよー、おいでー」
    という具合だ。
     ところがあるとき、末っ子の七篠白子が
    「ハッピーニャーニャー、ご飯だよー、おいでー」
    と猫たちを呼んだ。
    「おいおい白子、それじゃ三匹分じゃないか」
    といって家族は笑ったが、白子はいった。
    「だって、お盆とお正月には、死んだ人や死んだ猫が帰ってくるんでしょ?」
    こたつで笑っていた家族は、ピタリと黙った。
     こたつの中で、首輪の鈴の音がして、それから、ハッピーとニャーがこたつから出てきて、白子の用意したご飯皿に向かう。そのあとから、もう一つ鈴の音がついていく。
    「ほら、ちゃんと帰ってきてるじゃない」
    こたつの家族は、顔をこわばらせて、砂糖多めの甘酒をすすったり、みかんをむいたりして、何かをごまかそうとした。しかし、緊張に耐えられなくなった母親が、裏返りそうな声で叫んだ。

    「前に飼ってたニャーの名前を忘れてた! おんなじ名前つけちゃった!」

     すると、ご飯皿のご飯をパクついていたニャーが、こたつを振り向いた。そしていった。
    「大丈夫だよ、アタシ、そのニャーだから」

    *

    みなさま、良い一年をお過ごしください。

    *

    せりふ三題噺に参加しています。

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    静かな夜に読む、ひとつまみの不思議な物語。 長めの現実逃避中に育てた昔話的感性が隠しきれていない作品(短編・掌編小説、ショートショート)をKindle出版しています。noteではダメな自分を晒しています。 https://potofu.me/kagahajime

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