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大阪のおせっかいは、だいたい愛情|ゆうキャラ劇場


日曜日。

美咲は久しぶりに実家へ帰ってきた。

美咲「ただいまー」

母「よぉ帰ってきたなぁ」

美咲「呼び出しといて、よう言うわ(笑)」

母「お見合い話きたで」

美咲「また、たこ焼き屋のおばちゃん経由か」

母「そうや。地域一番の情報通やろ」

美咲「範囲が狭い」

母「まぁ聞き。前回の話から復習な」

美咲「なんでテスト方式なん」

母「たこ焼きにソース付けへん、マヨネーズだけの人は?」

美咲「山田くん」

母「正解や」

母は満足そうにうなずく。

母「次。ソースとマヨネーズ両方つける人は?」

美咲「山谷くんやな」

母「正解。成績優秀や」

美咲「嬉しくないわ」

母「で、今度は新しい人や」

美咲「また増えたんか」

母「どんな人やと思う?」

美咲「ソースだけの人?」

母「おもんないわ。そんなん普通すぎるやろ」

美咲「私の結婚相手は、たこ焼きの食べ方で決まるん?」

母「だいたいな」

美咲「だいたいで決めんといて(笑)」

母「ヒントや。あんたに近いで」

美咲「近い?真面目な性格とか?」

母「神戸の人や」

美咲「住所が近いだけやん」

母「性格もええかもしれん」

美咲「かもしれんて何やねん」

そして美咲は前から気になっていたことを口にした。

美咲「でもさ、山田くんも山谷くんも性格知らんやん」

母「まぁな」

美咲「ソースとかマヨネーズとかしか情報ないし」

母「大事な情報やで」

美咲「どこがやねん(笑)」

母は気にせず続ける。

母「神戸のソウルフードといえば?」

美咲「ぼっかけうどん」

母「それ、美咲が好きなだけやろ」

美咲「あ、そうか」

母「相手が好きかどうかは知らん」

美咲「じゃあ、そばめしか?」

母「さすが美咲!お母さんの子や!」

美咲「こんなん当てても何の役にも立たんやろ」

母は急に真顔になった。

母「ここ重要やで」

美咲「なんやねん(笑)」

母「その人な、そばめし大好きやねん」

美咲「だから何なん(笑)」

母「しかも神戸の人や」

美咲「情報が全部食べ物と住所やん」

母「ええやないか」

美咲「よくないわ」

母「細かいこと気にせんでええねん」

美咲「一番気になるところやろ」

母「でもな」

少しだけ母の声が優しくなった。

母「ほんまはな、優しい人らしいで」

美咲「らしいって」

母「たこ焼き屋のおばちゃん情報や」

美咲「またおばちゃんか」

母「信用できるやろ」

美咲「おばちゃん、私の人生に関わりすぎやろ」

母「帰る時、お礼言うときや」

美咲「なんでやねん(笑)」

母「いつも寄って帰るやろ」

美咲「まぁ寄るけど」


実家を出る前。

母「帰り、おばちゃんとこ寄っていきや」

美咲「絶対その話してるやろ」

母「そらするやろ」

美咲「本人の知らんとこで話進めんといてや(笑)」

そう言いながらも、いつものたこ焼き屋へ向かった。

店の前に立つと、おばちゃんがすぐ気づく。

美咲「ただいまー」

おばちゃん「あらー、美咲ちゃん。しばらく見んうちに背が高くなったやん。おばちゃん抜いたな」

美咲「先月帰ってきたばかりやん。20年ぶりみたいな言い方してー」

おばちゃん「ツッコミよわー」

美咲「そっちが無茶苦茶なんやって(笑)」

おばちゃんはケラケラ笑いながら、たこ焼きをひっくり返している。

その横で近所のおっちゃんが、

「美咲ちゃん、今度はそばめしの人らしいな」

と言う。

美咲「なんで知ってるん!」

おばちゃん「この辺では有名な話やで」

美咲「有名にせんといて!」

おっちゃんも、おばちゃんも大笑い。

結局、誰がどんな人なのかは分からないまま。

分かっているのは、そばめしが好きだということだけだった。


しばらくあほな話をして、

「ほな帰るわ」

と手を振る。

おばちゃんは、

「また帰っておいでや」

と当たり前みたいに言う。

おっちゃんも、

「元気でな」

と声をかける。

それだけだった。

本当にそれだけ。


駅へ向かう道を歩く。

夕方の風が少しだけ涼しい。

さっきまで笑っていたはずなのに、不思議と胸の奥がじんわりする。

なんでやろな。

お母さんは相変わらずおせっかいやし、

おばちゃんは勝手にお見合い話を集めてくるし、

近所のおっちゃんまで事情を知っている。

冷静に考えたら、めちゃくちゃや。

それなのに。

みんな当たり前みたいに、

「帰っておいで」

と言ってくれる。

「元気でな」

と言ってくれる。

その優しさが、帰るたびに少しだけ胸にしみる。


駅が見えてくる。

もうすぐ電車が来る。

いつもの帰り道。

いつもの景色。

なのに、なぜか毎回少しだけ涙が出る。

悲しいわけじゃない。

寂しいわけでもない。

たぶん、

「帰る場所がある」

ということが、

思っている以上にあたたかいんやろな。

私は少しだけ空を見上げて、

涙をごまかすように笑った。


ふと、さっきのたこ焼き屋を思い出した。

そばめしの人の話をしていたおばちゃん。

当たり前みたいに声をかけてくれた近所のおっちゃん。

みんな優しかったなぁと思う。

・・・。

・・・。

ふと気になって、おばちゃんに電話をかけた。

美咲「おばちゃん、さっきのおっちゃん誰なん?」

おばちゃん「知らん人や」

美咲「は?」

おばちゃん「知らん人やで」

美咲「でも私の名前知ってたで」

おばちゃん「横で話聞いてたからな」

美咲「聞いてただけで『元気でな』言うてきたん?」

おばちゃん「言うてたな」

美咲「この街どうなってるん(笑)」

おばちゃんはケラケラ笑う。

おばちゃん「まぁ、ええやないか」

美咲「まぁ、ええけど」

おばちゃん「誰でもいいやん。その場の雰囲気大事やろ」

美咲「適当すぎるやろ」

おばちゃん「元気出たやろ?」

美咲「まぁな」

おばちゃん「ほな正解や」


電話を切る。

昔から変わらないレトロな駅

さっきまで少し泣きそうになっていたのに、

最後は結局笑ってしまった。

知らないおっちゃん。

勝手に私の名前を覚えて、

勝手に「元気でな」と声をかけてくれた。

普通に考えたら変な話だ。

でも、


そんな人が自然にいるこの街は、

やっぱり少しあたたかい。

美咲「そうやな……神戸には絶対ない光景やな」

そうつぶやいて、

私はいつもの電車に乗り込んだ。



みなさんは、地元に帰ると「なんかいいな」と思う瞬間はありますか?

#創作大賞2026
#エッセイ部門

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