10年ぶりに歯医者に行った話


私は歯医者さんが苦手だ。
前回受診したのは10年も前。
治療は痛いし怖いし自分の意思で動けない、そして人に口の中を見せるのも恥ずかしい。

いい大人が何を言っているんだと笑われるかもしれないけれど、本当に泣いてしまいそうなほど怖いのだ。


歯医者が嫌いだからこそ、毎日それはそれは丁寧に歯を磨きフロスもしてマウスウォッシュも使っていた。

それでも歯茎から出血はするし歯茎が下がって歯は長くなるし、着色汚れもあった。下の歯の裏を鏡越しにのぞけば歯石もこびりついている。


どうにか自分で出来ないかと歯石取りセットを買って動画を見ながらやってみたこともあった。
でもやっぱり素人が上手くできる訳もなく、無駄に歯茎を傷つけ口内は血まみれ

歯医者が怖いという理由一つでお金と時間をかけ余計口内を傷つける、そんな自分が情けなくてやり切れない気持ちになった。


歯の汚れが気になり、食事も笑顔も思うようにできなくなってきた。

いよいよこれは逃げられないところまで来たなと思った。


ネットで近くの歯科医院を複数調べる。
口コミを見る。目星をつける。スマホを置く。
そんなことを何日も何日も繰り返した。

そしてある夜、予約してしまえばもう行くしかなくなるのだ!!!!!!!と勢いで予約した。



どうしよう。予約してしまった。
逃げられない。吐きそう。怖い。
うわああああああああああああああ


毎日カレンダーを見るたびに、受診日が迫ってきている事実に耐えられず胃が病んだ。



そして当日

朝から動悸と吐き気が止まらない
耳鳴りもいつもより大きい
行くのをやめてしまおうかと何百回も思った。

それでも深呼吸をしながらなんとか用意をして、冷や汗をかきながら歯科医院へと向かった。


到着したはいいものの、予定よりかなり早く着いてしまった。

しかしこの何もしない時間がより恐怖を増幅させてくるので、そのまま小走りで院内へ。


受付で早く着いてしまった事を伝えると初診だから記入するものが多くちょうどいい時間だと言われた。良かった。



受付で用紙を渡され記入していると"歯科への苦手意識があるか?"という質問欄があったので筆圧強めに丸をつけておいた。
この恐怖心を分かって欲しい、優しくして欲しいというわがままな願いも込めて。


記入が終わるとあっという間に呼ばれた。

扉を開けるとそこにはあのイスや器具が並んでいる。

何でもない顔をしながら座ったはいいがブワッと汗が噴き出てきて呼吸は浅くなり手が震えた。


歯科衛生士さんが私の記入した用紙を一通り眺めた後、"大丈夫ですよ"と微笑みながら声をかけてくれた。

それからこれから使う予定の器具と何をどのくらいの時間でするのかまで細かく説明してくれた。

あまりにも優しい。それでもまだ残る恐怖心。
ありがたさと情けなさで涙が出た。

歯科衛生士さんからしたら本当に厄介な人間だっただろう。申し訳ない。


そしてレントゲンなどの検査をして、ゆっくり歯のクリーニングをしてもらった。

施術をしてもらっているうちに恐怖も薄れ痛みはあれどそれ以上に歯科を受診できている自分と歯が綺麗になる嬉しさが勝った。


そして歯のクリーニングが終わると歯科医師が歯を詳しく見てくれた。

なんと虫歯は0本…!静かに歓喜した。



最後にフッ化物の塗布をしてもらったら子供の頃使っていた歯磨き粉の味がして懐かしい気持ちになった。


次回は歯のクリーニングだけでいいとのことで予約とお会計を済ませ医院を後にした。



帰り道、あまりにも体が軽くて背中に羽が生えたのかと思った。

心の重さは体の重さに直結しているんだな。


私の長い長い一日が終わった。




勇気を出し行動できた自分
この経験がまた自分自身への信頼と繋がっていく。



あの日、情けない自分から目を背けずにいてくれてありがとう。
あの夜勇気を出して予約してくれてありがとう。
行きたくない気持ちでいっぱいだったのに行動してくれてありがとう。


そして何より担当してくれた歯科衛生士さん、歯科医師さん、受付の方々、本当にありがとう。


また無理になる日が来てしまうかもしれないけれど、そんな時は行動した先にあるこの言葉にならないあったかい気持ちを思い出してまた勇気を出せますように。










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