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映画シナリオ「匟切りの䞀座」(1/4)

    映画シナリオ、家族もの、時代劇、107分

    タむトル
    匟切りの䞀座
    海倖配絊甚: Bullet-Slashing Samurai Troupe

    キャッチコピヌ
    父さんのやり方が、僕は倧嫌いでした。
    海倖配絊甚: Father, I hate your lying-Katana.

    スペック
    ビッグバゞェット。歎史の文脈ず䞀家の呜運を重ね、新しい歎史的芳点を語る。アクションずドラマの融合。
    『ラストサムラむ』×『グレむテスト・ショヌマン』

    ログラむン
     嘘ずたこず。剣ず鉄砲。異なる正しさを信じた父ず子。剣を芋䞖物にする父ず、それは本圓の剣ではないずいう息子が、時代ず詊合の濁流に巻き蟌たれおいく。

     明治時代初期、䟍の身分を剥奪された剣術䞀家の長坂䞊さかがみは、撃剣興行げっけんこうぎょうずいう「剣を芋䞖物にする」こずを考えた。客に分かりやすくするため倧げさにせよず指瀺する坂䞊、それは剣ではないず反発する歊士。
     䞀座は、旧歊士ず政府の戊争、西南戊争を機に分解する。



    【登堎人物】
     
    坂䞊さかがみ 芚之進かくのしん元歊士。
           䞀刀流いっずうりゅう坂䞊掟、坂䞊道堎の䞻。
     
     匥䞀郎やいちろう長男。たじめで盎情的。
     匥二郎やじろう次男。自由闊達な性栌。
     杏あん  䞉女で末っ子。珟代っ子気質
           で頑固。
     しづ 坂䞊の劻、匥䞀郎たちの母。
           薙刀䜿いで盞撲奜き。
     
     
    十文字じゅうもんじ 真柄たすみ元歊士、
           槍䜿いで坂䞊の盟友。
           珟圚は「十文字そば屋」䞻人。
     
     
    束尟た぀お 友則ずものり 米問屋の跡
           取りで、杏ず結婚するこずに。
    野末のずえ 銬之助うたのすけ颚来坊の元歊士。
           奇抜な剣颚の、タむ捚しゃ流。
    桂少幎   坂䞊道堎最埌の匟子。
     
    倩狗面の男  謎の男。その正䜓は  。
     
     八染はっせん     やくざで興行垫。
           坊䞻頭、顔たで党身入れ墚。
           銀補の矩錻を持぀梅毒で萜
           ちた錻のカバヌ。
    把原さかきばら 鍵吉けんきち 実圚の人物。
           盎心圱じきしんかげ流圓䞻。
           撃剣興行げっけんこうぎょうの創始者。


    〇神奈川県、瓜生うりう神瀟、撃剣堎げきけんば
     
       どん、ど、どん。
       どん、ど、どん。
       勇壮な倪錓に法螺貝の音。
       神瀟の境内に土俵。その䞊に玅癜垯の
       巚倧屋根。䞀芋盞撲堎のようだが、な
       お広く倩井も高い。
       竹の柵の向こうの芳客たちは、興奮し
       お柵を぀かみ、揺らしおいる。
       わっず倧きな歓声。
       剣士たちの列が入っおきた。倪錓の音
       はさらに激しく盛り䞊がる。
       思い思いの竹刀長、短、倪、现、二
       刀、薙刀、槍、鎖鎌、杖、思い思いの
       防具面、倧鎧、鬌小手、すね圓お。
       先頭の坂䞊は、朱鞘の日本刀
       を頭䞊に掲げおいる。
    坂 䞊「撃剣興行げっけんこうぎょう 撃剣興行 倩地神
     明に誓っお歊士の魂を捧げん 拙者、坂
     䞊家圓䞻芚之進ず申す者 『匟切りの䞀
     座』の座長でござりたす」
       うおおおおず盛り䞊がる芳客たち。
       倧砲が眮かれお、劻のしづが
       匟をセットする。だがその匟は现工が
       しおあり、空砲である。
       坂䞊、抜刀しお、倧砲に䞊段で構える。
       再び倪錓が鳎らされる。
    芳 客「  息をのむ」
       䞀座の䞭の槍の剣士、十文字
       は、物陰の匥䞀郎、匥二郎
       に目配せする。
       うなづく二人。二人ずも、起爆スむッ
       チのようなものを持っおいる。
    十文字「ぞたすんなよ二人ずも。今日は空薬
     莢の火薬が倚いぞ  」
    坂 䞊「芋よ歊士の魂」
       火を吹く倧砲空砲。
       坂䞊は真っ向䞊段で切り䞋す。
       倧砲の煙がその倪刀筋で真っ二぀に。
       匥䞀郎、匥二郎、タむミングよく起爆。
       坂䞊の巊右埌方に爆炎がふた぀䞊がる。
       ぀たり、刀で倧砲の匟を切ったように
       芋える。
    芳 客「うおおおおおおおおおおおおお」
       どん、ど、どん。
       どん、ど、どん。
     
    〇タむトル『匟切りの䞀座』
     
    〇オヌプニングシヌク゚ンス
     
       剣士たちの詊合。
       基本は剣道のような打ち合い。
       だが今にない叀流の技が豊富だ。切り
       䞊げお裏小手を狙う、片手剣拳で殎
       る、投げ、䞡柄の竹刀杖、鎖鎌。
       審刀の坂䞊は玅癜の旗を䞊げ、芳客た
       ちが盛り䞊がる。
       圓時の錊絵たち。
    タむトル『明治維新』『四民平等』『秩犄凊分』
     『士族解䜓』
    ナレ 『歊士の䞖は終わり、日本が近代囜家
     ぞず生たれ倉わった明治の初め。歊士たち
     は突劂身分を奪われた。ある者は歊士の商
     売を倱敗し、ある者は圹人ずなった。だが
     倚くの歊士たちはいただ䜕もできず、ただ
     さたよっおいた。
     ――歊士は、どこぞ消えたのだろう』
     
    〇盞暡原、雪のちら぀く朝
     
       小田原城が遠くに芋える町。
       その䞭の歊家屋敷。
      『明治九幎、神奈川県』
     
    〇坂䞊家、母屋ず道堎、雪がちら぀く
     
    〇同、道堎内
     
    匥䞀郎「セダヌヌヌヌッ」
       長男の匥䞀郎が、竹刀で坂䞊にかかる。
       次男の匥二郎は正座で芋おいる。
       冬の癜い息。赀くなる肌。
       だだっ広い道堎に、たった人だ。
    坂 䞊「ダメだ、ダメだダメだダメだ」
    匥䞀郎「䜕がですか、父䞊」
    坂 䞊「ここ ここも ここもここ 
     も」
       次々ず匥䞀郎の手足を竹刀で叩く。
    坂 䞊「䞀刀流坂䞊掟の奥矩は『剣の埌ろに
     身を隠す』だぞ ここもここも、はみ出
     しおおるではないか」
    匥䞀郎「無理です 棒䞀本の埌ろにどう隠
     れろず」
       坂䞊、青県に構える。隙がない。
    匥䞀郎「  」
    坂 䞊「姿勢の正しきが、勝぀」
       匥䞀郎、なんずか真䌌する。
    坂 䞊「うむ。よし次、匥二郎」
       匥二郎、青県ではなく、斜めに構える。
       剣に身を隠すどころか、䜓を晒す。
       正座した匥䞀郎は抗議する。
    匥䞀郎「父䞊 話が違うじゃないですか」
    匥二郎「兄者は兄者の剣。俺は俺の剣だろ」
    匥䞀郎「ぞ、屁理屈ばかり」
    坂 䞊「構わん。匥䞀郎、お前はたっすぐで
     母䞊のしづに䌌た。匥二郎の自由さは、さ
     だめし俺に䌌たのだな」
       匥二郎の剣は動。たくみにフェむント
       をかけ、暪ぞ回り蟌むタむプ。しかし
       簡単に坂䞊に胎を抜かれる。
       匥二郎、䞀瀌。
    坂 䞊「戞口を芋お桂くん、遅いな」
    匥二郎「どうせたた寝坊だろ」
       ず、姿を珟し䞀瀌する桂少幎。
    匥䞀郎「遅いぞ 剣に志した者がたるんど
     る」
    桂少幎「あの  申し䞊げにくいのですが、
     今日はそれを蟞める、ず蚀いに来たした」
    坂 䞊「蟞める よそぞ行くのか」
    桂少幎「いいえ。剣自䜓を蟞めるんです。今
     時、剣なんお圹に立たないんで」
    坂 䞊「  動きが固たる」
     
    〇同、庭
     
       庭を挟んだ母屋から、朝食を運んでく
       るしづず杏。
       走り去る桂少幎。
    杏  「あれ どうしたの桂くん」
     
    〇同、道堎内
     
       道堎の板間に正座しお、家族で朝食。
       具のないみそ汁、挬物ず麊のおかゆ。
       静かに食べおいた䞀家だが、杏が溜息
       を぀いお、正座を厩す。
    し づ「杏」
    杏  「だっお板間でずっず正座は痛いよ 
     道堎飯はもういい加枛嫌よ」
    坂 䞊「ふむ、道堎飯ずはうたいこず蚀うな」
    匥二郎「うたいこず蚀っおる堎合じゃねえだ
     ろ」
    し づ「私たちがかろうじお暮らせるのも、
     母屋を神谷さんに貞しおるお家賃のおか
     げでしょう」
    杏  「軒先貞しお母屋取られるじゃない
     の 最埌のお匟子さんも蟞めちゃっお、
     この道堎も坂䞊家ももうおしたいよ」
    匥䞀郎「道堎は金を皌ぐ堎所ではない。剣を
     磚く堎だ」
    杏  「剣でご飯が食べれるの」
    匥二郎「剣で飯をすくっお食べる真䌌」
    杏  「そういうこず蚀っおるんじゃないよ
     ゞロ兄」
       回想の桂少幎。走り去る。
    杏  「桂君の蚀うこずは正しいわよ 新
     時代よ いくさも終わったし、そもそも
     いくさは鉄砲だし、歊士ず剣の時代なんか
     ずっくに終わっおるし 知恵ひず぀で
     女でも枡っおいける時代なのよ」
    坂 䞊「剣は、圹に立぀ぞ」
    杏  「どうやっお」
    匥二郎「剣で飯を食う真䌌」
    匥䞀郎「睚む」
    し づ「坂䞊家の二人扶持ににんぶち、来月から䞀日䞃合
     に枛らされるそうです。いよいよ道堎を売
     りたすか」
    匥䞀郎「道堎は駄目だろ どこで暮らす」
      神棚の朱鞘の倧小の倪刀。
    し づ「じゃあ、坂䞊家の䌝家の宝刀を売り
     たしょう」
    男たち「剣は駄目だろ」
    し づ「道堎か、剣か、どちらかを売らない
     ず」
    杏  「私、十文字さんの所で働きたす」
    坂 䞊「」
    杏  「歊士の商売で䞀番成功しおるの、十
     文字さんのそば屋さんでしょ そこで
     商売を孊びたい」
    し づ「歊家の嚘がはしたない」
    杏  「歊家も平民ももうないの 新聞読
     んでる」
     
    〇十文字そば屋、倖芳
     
       客であふれる掻気あるそば屋。
       坂䞊ず杏がたずねおくる。
     
    〇同、内倖
     
       倧柄の䞻人、十文字が出迎える。
    十文字「おう 坂䞊の そっちは  杏
     ちゃん 倧きくなったね」
       杏、ぺこりずお蟞儀。
    坂 䞊「剣を振る動䜜ただ、やっおるか」
    十文字「もう、随分ずやっずらん」
    坂 䞊「なたったか」
    十文字「ここのそばは党郚俺が打っおる。力
     こぶを芋せお衰えおはおらん぀もりだ。
     今日はりチのそばかい」
    坂 䞊「いや、実は  」
       衚の貌り玙。『女絊急募、賄付き』
    十文字「そこたで困っおおるのか。分った。
     䜕なら匥䞀郎ず匥二郎どのも雇うぞ」
    坂 䞊「それには及ばん。息子たちには剣
     の時間を取らせたい。傘匵りでしのぐさ」
    杏  「十文字にあの、私、商売を勉匷
     したいんです」
    十文字「商売か。俺も最初は倧倉だった。こ
     こに入り婿しなければ、偉そうな歊士の商
     売のたただったろう」
       ず、埀来で人々が隒ぎ出す。
    町の人「暎れ牛だ」
       皆、倖ぞ出る。
       牛が雄叫びを䞊げながら向かっおくる。
       飌い䞻らしき蟲民が远い駆けお来る。
    蟲 民「止めおくれヌ」
       逃げ惑う人々。坂䞊はその流れに逆ら
       っお牛の正面に。
       腰の剣の鯉口を切る。
       泣きながら牛を远う蟲民。
       坂䞊、それを芋お剣を鞘にしたい、牛
       の背䞭にひらりず飛び乗る。
    坂 䞊「どう どう どう」
       カりボヌむのようになだめようずする
       が、牛は桶屋に突っ蟌んで、桶たちを
       ぶっ壊しお気絶。
     
    〇同、内
     
    十文字「どう どう坂䞊の真䌌はは
     は倧倉だったな」
    坂 䞊「面目ない」
       そばをいただいおいる坂䞊ず杏。
       坂䞊は額に湿垃を。
    十文字「お䞻ほどの腕があれば、牛のそっ銖
     ごず叩き切れただろうに」
    坂 䞊「商売道具を倱わせる蚳にはいかんだ
     ろ」
    十文字「ふん。お䞻らしい。りチで雇おうか、
     牛乗り䟍が絊仕䞭ず看板に出しおな」
    坂 䞊「よせよ。俺は暪浜で働く」
    十文字「暪浜」
    坂 䞊「荷䞋ろしの仕事が、あるず聞く」
     
    〇暪浜の枯
     
       船がたくさん入枯しおいる。その積み
       荷の荷䞋ろし、倧八車を匕く仕事。
    監督 「刀より重いもの持ったこずねえんだ
     ろ だから䟍は䜿えねえんだよ 俺の
     ほうがここでは偉いんだからよ 俺の
     蚀うこずを聞けク゜䟍」
       倧八車を小石に乗り䞊げひっくり返し
       おしたう坂䞊。
    監督 「銬鹿野郎 ど玠人が」
    坂 䞊「すみたせん  すみたせん  」
       髷はばらけ、汗たみれに。
       ×   ×   ×
       飯䌑憩。人倫たちは握り飯をがっ぀く。
       坂䞊は䞁寧に䞀口だけ食べ、残りは懐
       に入れる。
       氎桶の所にゆき、ごくごくず氎ばかり
       飲む。
       それを芋おいた髷の男把原。
    把 原「氎が奜物でござるか」
    坂 䞊「氎が、奜物でござる」
    把 原「  お互い、倧倉ですな」
    坂 䞊「髷を芋おお䞻も、歊士でござるか」
    把 原「䞀瀌しお把原鍵吉ず申す」
    坂 䞊「把原   幕府講歊所こうぶしょの剣術垫範、
     盎心圱じきしんかげ流の把原殿」
       思わず深く䞀瀌する坂䞊。
    把 原「たあたあたあ。倧袈裟でござる」
    坂 䞊「そんなお人が  倱瀌ながら、なん
     でこんな所に」
    把 原「枯は、払いが良いのでな」
    坂 䞊「申し遅れたした。拙者、坂䞊芚之進。
     䞀刀流坂䞊掟の小さな道堎をやっおおり
     たす」
    把 原「䞀刀流  坂䞊掟」
    坂 䞊「田舎流掟でござるよ」
       把原の手が擊り傷だらけなのに気づい
       お、坂䞊は懐から、小さなハマグリの
       貝に入った膏薬を枡す。
    坂 䞊「この塗り薬は効くでござる。残り少
     なくお申し蚳ないが、差し䞊げたす」
    把 原「䞀瀌する刀ず車は、握り方が違
     うでな」
    坂 䞊「党く。車など、初めお持った」
       二人、居所のない䞭で笑いあう。
     
    〇十文字そば屋、内
     
       掋装の男、束尟が、郚䞋を匕
       き連れおやっおくる。
    杏  「いらっしゃいたせ」
    束 尟「そばを人数分くれ」
    杏  「  油あげか玉子は぀けたすか」
    束 尟「 䜕故そう思った」
    杏  「疲れおらっしゃるように芋えたので、
     粟の぀くものを、ず思いたしお」
    束 尟「ここの店の教えか」
    杏  「いえ。私がそう思っただけで」
    束 尟「名は、なんず申す」
    杏  「ここは十文字そば屋です」
    束 尟「違う違う笑。そなたの名だ」
    杏  「」
    束 尟「お䞻、商売の才があるず芋た」
    杏  「才」
    束 尟「人を芋る目だ」
       ×   ×   ×
       別の日。
    束 尟「杏はおるか」
    杏  「いらっしゃいたせ」
       ×   ×   ×
       別の日。
    束 尟「杏はおるか」
    杏  「いらっしゃいたせ 束尟さん」
    束 尟「今日は米盞堎に぀いお教えに来た
     ぞ」
    杏  「ありがずうございたす」
       資料を芋せ、向かいに座れ、ず束尟。
       座る杏。
     
    〇坂䞊家、道堎内、朝食
     
    杏  「父䞊、埡報告がありたす」
    坂 䞊「なんだ」
    杏  「私、祝蚀を䞊げたい人ができたした」
       匥䞀郎、匥二郎、みそ汁を吹く。
       坂䞊、しづを芋る。
       知らなかったず銖を振るしづ。
    杏  「十文字そば屋に通っおくれおいる束
     尟友則さんです。最初はお金の勉匷をさせ
     おず頌んだら、快く教えおくれたした。そ
     れで分かったんです。お金っお䞊䞋するの。
     束尟さんは困っおる人には米を安く譲っお、
     偉そうな人から高く取るの。束尟盞堎っお
     蚀われおる」
    坂 䞊「䜕者だ、その男は」
    杏  「東京の、束尟米問屋の跡取りです。
     暪浜で勉匷しおお、もうすぐ戻るんですっ
     お。私も本家に぀いおいきたいのです」
    坂 䞊「平民ではないか。歊士の嚘は、歊士
     ず結婚しなさい」
    杏  「それは昔の䟡倀芳でしょ」
    坂 䞊「いかん。歊士には歊士の  」
    杏  「もう歊士の䞖の䞭じゃないのに、ど
     うしお父䞊もむチ兄もゞロ兄も分らない
     の どうしお刀を振っお、ちょんたげ結
     っおるの どうしお束尟さんず倫婊にな
     れないの」
    匥䞀郎「明治政府などずいうものは、たかが
     薩長土肥の集合䜓。ただ歊士の䞖に戻せる」
    匥二郎「兄者」
       杏、立ち䞊がる。お蟞儀。
    杏  「私、駆け萜ちしたす。今たでお䞖話
     になりたした」
    坂 䞊「駆け萜ち、っお、もっず黙っおやる
     ものだろ」
    杏  「私の食べる分がなくなるから、お兄
     たちは腹いっぱい食べられるわよ いい
     口枛らしでしょ」
       杏、駆け出す。
       しづ、远う。匥二郎も远う。
       匥䞀郎を止める坂䞊。
    坂 䞊「杏はこうず決めたら譲らん。垰っお
     こんだろう。お前ず同様、母䞊のしづに䌌
     たなあ」
    匥䞀郎「  」
       坂䞊、神棚を芋る。
    坂 䞊「頃合いだな。刀を取っおくれ」
    匥䞀郎「えっ」
       ×   ×   ×
       小倪刀で、髷を切る坂䞊。
    坂 䞊「これが明治のざんぎりか。匥䞀郎も
     やるか」
    匥䞀郎「私はやりたせん。歊士の魂です」
    坂 䞊「圢が倉わっおも、魂があれば構わん
     よ」
    匥䞀郎「  」
     
    〇坂䞊家、道堎内、春
     
      『同九幎、春』
       坂䞊、匥䞀郎、匥二郎が皜叀䞭。
       十文字が駆け぀ける。
    十文字「坂䞊の、芋たか お觊れを」
     
    〇垂䞭
     
       満開の桜の䞋の、立お札を芋る人々。
    立お札『倧瀌服䞊軍人譊察官吏等制服着甚の
     他、垯刀犁止の件 明治九幎䞉月二十八日
     倪政官垃告』
       『垯刀犁止』のアップ。
    坂 䞊「垯刀  犁止  」
    十文字「断髪せよ。俞犄は幎々枛らす。藩は
     解䜓、仕事は各自で探せ。そしお぀いに、
     魂たでも取りあげるか」
    坂 䞊「  」
       駆け付けた若い士族が叫ぶ。
    士 族「なんだ䞀䜓どういうこずなんだ」
    坂 䞊「うん。倚分、こういうこずだ」
       垯を緩め、腰の倧小を抜く。
       垯がハラリず萜ち、ふんどしがあらわ
       になる。
    士族たち「  」
       同じこずをする。
       立お札の呚りに、はだけた着物ずふん
       どし姿の、䞞裞の者ばかりになる。
       桜の花びらが、静かに散っおいる。
    坂 䞊「  」
       倩を仰いで、泣いおいる者も。
      『廃刀什 明治九幎䞉月』
     
    〇埌日、坂䞊家、道堎内
     
       䞀人で裁瞫する坂䞊。
       刀袋を瞫い、うなづく。
     
    〇垂䞭
     
       巡査ず、若い䟍の野末が、立
       お札の前でもめおいる。
    野 末「貎様、無瀌だぞ」
    巡 査「士族ず蚀えども垯刀は犁止だ そ
     この札を読め」
    野 末「刀を捚おろだず」
       野末は腰の刀を抜こうずする。
       その手を止める坂䞊。
    坂 䞊「お若いの。『垯刀は犁止』ずいうわ
     けだから、『腰に差しちゃいかん』ずいう
     だけだぞ」
       坂䞊は、袋に入っおいる刀を芋せる。
    坂 䞊「持っお歩くならば法に觊れぬ。なあ、
     巡査殿」
    巡 査「むっ。垯  刀  ではない」
    坂 䞊「ふふふ」
       野末、腰から刀を抜き、䞡肩に担ぐ。
    坂 䞊「そうそう。野歊士みたいで栌奜いい
     ぞ」
    野 末「ふん」
       満足しお歩き出す野末。
       そこぞ、手玙を持ったしづが。
    し づ「お前様、お前様」
    坂 䞊「ご機嫌だなしづ。䜕かあったか」
    し づ「杏から文が届きたしたよ」
    坂 䞊「なんず」
    し づ「読む父䞊、母䞊、勘圓同然で飛
     び出しおごめんなさい。でも私は元気です。
     詳しくは報告したすが、私の考えで、今月
     の皌ぎがなんず倍になりたした」
    坂 䞊「芗き蟌んで元気な字だ。元気そ
     うじゃないか」
    し づ「怒っおらしたのではなくお」
    坂 䞊「あの時怒っただけだ。今はそうでは
     ない。私の倧事な嚘だぞ い぀か束尟殿
     ずも䌚わねば」
    し づ「あ、あずこれも」
       錊絵の刷られた、盞撲のチラシ。
    し づ「お盞撲よお盞撲 来週巡業がやっ
     おくるの」
    坂 䞊「しづは盞撲が奜きだのう」
    し づ「歊家の嚘ですもの 歌舞䌎はお話
     が決たっおるでしょう お盞撲は立ち合
     っおみるたで、どっちが勝぀か分らないの
     よ   あヌ、でも朚戞銭は払えないわ
     ね  音だけでもせめお聞けないかしら」
       チラシを手に取り、眺める坂䞊。
    坂 䞊「あっ」
    し づ「どうされたした」
    坂 䞊「  あああああああ」
     
    〇倜、十文字そば屋の前
     
       タンポ぀きの槍を振り回し、構える十
       文字。䞀方、青県に竹刀を構える坂䞊。
    十文字「じゃあ、詊しおもらおうか」
       二、䞉合打ち合い、離れる。
       攻めこもうずする坂䞊の右脛を、十文
       字の槍が払い、寞止め。
    坂 䞊「むっ」
    十文字「昔からそうだ。足元がお留守だぞ」
    坂 䞊「足元を固めろ、人生のようにか」
    十文字「ふふん」
    坂 䞊「もう䞀本いいか」
       次は槍を捌き、坂䞊が懐に入り蟌み面
       を寞止め。
    坂 䞊「䞉本目は  い぀かやろう。腕は鈍
     っおいないようで、安心した」
    十文字「どういうこずよ 俺に『剣士にな
     れ』ずは」
     
    〇倜、坂䞊家、道堎内
     
       月明かりの挏れる道堎。
       だだっ広い道堎に䞀人立぀坂䞊。
       壁に貌った盞撲のチラシ。
       道堎が盛んだった頃の、ドヌンずいう
       螏み蟌みの音。パヌンずいう竹刀の音。
       打ち合う竹刀、剣士たちの気合、笑い
       声。
       しづが、薙刀の竹刀を持っおくる。
    し づ「䜕か、お迷いになっおらっしゃるの
     ね」
    坂 䞊「よく分るな」
    し づ「女房なので」
       二人は竹刀ず薙刀を構え、詊合開始。
       しづが坂䞊の突進を避け、右脛に䞀本。
    し づ「足元がお緩いです」
    坂 䞊「もう䞀本」
       しづが右脛にフェむントを入れる。
       気を取られた坂䞊は、返しの面打ちに
       やられる。
    坂 䞊「もう䞀本」
       䜕合かのち、やはり右脛に䞀本。
    し づ「戊堎なら、䞉床死んでたす」
    坂 䞊「そうだ。だが死なない所が、詊合の
     良さでもあるな。䜕床でもできる。盞撲の
     ようにだ」
    し づ「どういうこずです」
    坂 䞊「剣の詊合を、お盞撲のように客に芋
     せお金を取れないだろうか」
    し づ「  」
    坂 䞊「今私たちがやったこずを、剣の興行
     ずするのだ。駆け出しから暪綱たで番付を
     ぀け、東の剣士ず西の剣士に別れお、死ぬ
     こずもない剣の詊合を皆で芋物するのだ」
    し づ「  」
    坂 䞊「どう思う」
    し づ「なんお玠敵な お盞撲の、剣術版
     ですか」
    坂 䞊「剣の腕を持お䜙しおいる者たちに仕
     事を䞎えられる。食える。客は喜ぶ。そし
     おしづは楜しい。䞉方埗だろう」
    し づ「玠敵。なんお玠敵なの」
    坂 䞊「そうだろう」
    し づ「うふふ。䜕より、あなたが笑っおい
     るのが玠敵よ」
    坂 䞊「気づいおいなかった  ん 
     俺、笑っおいるか」
    し づ「うなづくそれでお金を皌げたら、
     母屋を取り戻せたすか」
    坂 䞊「うむ。道堎も剣も、売り払わなくお
     枈む」
     
    〇八染の遊郭、倖芳
     
       怪しげな町の䞀番奥にそびえた぀、竜
       宮城のような遊郭の前に立぀坂䞊。
    坂 䞊「深呌吞しお  頌もう」
       呚りの人、堎違いさに笑う。
     
    〇同、客間
     
    八染「そい぀はなァ、撃剣興行ずい
     うのさ」
    坂 䞊「撃剣興行」
       花魁たちを䟍らせた、興行垫八染。
       スキンヘッドに顔䞭含めた党身に入れ
       墚で、銀の錻を付けおいる。
       客間は悪趣味な眮物だらけ。
    八 染「打撃の撃に剣ず曞く。『剣を撃぀』っ
     おこずだな。『剣術』ずいう蚀葉の䜿甚は、
     明治政府から犁止されたろ。だから撃剣っ
     お蚀葉を線み出しお、興行にした奎が東京
     にいるのさ」
    坂 䞊「東京」
    八 染「知らなかったのか」
    坂 䞊「うなづく」
    八 染「それに気づいたのは、日本で二人目
     っおこずか お前さん、倩才の類かも知
     れんな」
    坂 䞊「はあ」
    八 染「去幎の春、䞡囜広小路りょうごくひろこうじ河川敷を皮切
     りに、北蟰䞀刀ほくしんいっずう流の二代目千葉呚䜜ちばしゅうさく、神道しんずう
     無念むねん流の斎藀新倪郎さいずうしんたろう、我も我もず倧流行。
     だがあっずいう間に犁止されちたった」
    坂 䞊「なんでだ」
    八 染「歊士の埩暩を煜るっおな」
    坂 䞊「  成皋」
    八 染「最初に䞡囜で始めた男の名は  そ
     う、たしか盎心圱流の把原鍵吉」
    坂 䞊「把原どのか」
    八 染「知っおるのか」
       回想。枯で䌚った䟍。
    八 染「そばは今、䞀杯いくらだ」
    坂 䞊「十文字そばは、䞀杯䞀銭」
    八 染「剣士は䞀日で䞉十銭もらえる」
    坂 䞊「䞀日で」
    八 染「朚戞銭は䞀朱もんめ。満員埡瀌なら、寺銭、
     道具代、宣䌝費差っ匕いおもただ儲る。幞
     い、撃剣犁止は東京城内のお觊れよ。ここ
     神奈川県は  範、疇、倖」
       八染、身を乗り出す。
    八 染「それには掟手で目立たんずいかん。
     アンタ、こないだ牛の背䞭に乗っお桶屋ぶ
     っ壊したんだろ」
    坂 䞊「お恥ずかしい」
    八 染「いいじゃねえか、有名人だ。だから
     『牛乗りの䞀座』っお名乗ろうぜ お前
     さんが牛に乗っお宣䌝するんだよ」
       床の間の、牛に倧きなマラがある眮物
       を指す。いやあんず嬌声をあげる花魁。
    八 染「目立぀だろ 撃剣だろ バカ受
     けだ」
     
    〇垂䞭
     
    八 染「撃剣ヌッ 撃剣ヌッ」
       『撃剣』ののがりを持ち、小倪錓を打
       ち鳎らす八染。
       牛の背䞭に乗り、朱鞘を掲げる坂䞊。
    八 染「瓜生神瀟で䞃日のち 座長は牛乗
     り坂䞊先生 盞暡の藩の䟍が、䞀の朱もんめで
     お立合い」
       十文字、しづ、匥䞀郎、ほか剣士たち
       が、防具に竹刀姿で緎り歩く。
    匥二郎、ビラを配る。
    匥二郎「䞀刀流坂䞊掟 倩心おんしん流に無倖むがい流
     剣士たちも飛び入り倧募集だよヌッ」
       人々が集たっお来る。
       その䞭に、肩に剣を担ぐ野末。
     
    〇坂䞊家、庭
     
    十文字「頌もう」
       門前に、槍を担いだ十文字。
    坂 䞊「来たか 十文字」
       坂䞊はしづず共に「坂䞊撃剣䌚」の看
       板を぀くっおいる。
       埮笑む十文字。さらに。
    野 末「頌もう」
    坂 䞊「おう い぀ぞやの若歊者」
    野 末「䞡肩に刀を茉せ䞞目蔵人たるめくらんど盎䌝、
     タむ捚しゃ流の野末銬之助」
       道堎では、満杯の剣士たちが竹刀を打
       ちあっおいる。匥䞀郎も匥二郎も。
       それを芋る八染、坂䞊、十文字、しづ。
    し づ「こんなに道堎が賑やかなのは、い぀
     以来でしょう」
    坂 䞊「剣に生たれ、剣に生きるず誓った者
     が、ずっず腐り続けおいた。だが死んでな
     い。死んでないのだ」
       十文字、しづ、うなづく。
     


    2/4に぀づきたす。
    動き出した撃剣興行。だが興行ず剣の乖離が倧きくなっおゆく  
    https://note.com/oooka_/n/n4f12d3738f60


     
     
    芋えない感情を、芋える衚珟にする人。 blog: https://oookaworks.seesaa.net/ 映画監督、脚本家、CMディレクタヌ。 ドラマ「颚魔の小次郎脚本・メむン監督」、CM「クレラップ」「北海道シチュヌ」、映画「いけちゃんずがく脚本・監督」。

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