メインコンテンツへスキップ
見出し画像

映画シナリオ「真下に落ちる流れ星」(1/3)

    映画シナリオ、ラブストーリー、青春、75分

    タイトル
    真下に落ちる流れ星
    (海外配給用: A Vertical Shooting Star)

    キャッチコピー
    灰色が金になった瞬間を、見たことがあるだろうか。俺はある。
    (海外用配給用: Have you ever seen gray turn to gold? I have.)

    スペック
    地方の学校周りだけで撮れる低予算映画。痛い青春。新進役者メイン。大人二人がラストに。
    『リリィシュシュのすべて』×『ゼログラビティ』

    ログライン
    転校生の美少女凪に恋した、天文部の聡。クラスのボスと凪は付き合うが、事態は危険にエスカレートしてゆく。彼女と二人きりの天文部の時間はいつも「ここではないどこか」の話。聡は決意する。
    (海外配給用: Satoshi, a member of the astronomy club, falls for Nagi, a beautiful transfer student. As she struggles against a toxic classroom hierarchy, Satoshi makes a calculated, quiet resolution.)



    真下に落ちる流れ星 
                 大岡俊彦


    【登場人物表】

    高野 聡(たかの・さとし 14)
          天文部。宇宙飛行士を目指して
          いる。
        (30) 宇宙飛行士。

    下原 凪(しもはら・なぎ 13)
          転校生。黒いカバーの小説をい
          つも読んでいる。
        (29) 翻訳業。

    野々宮 日馬(ののみや・はるま 14)
          陽キャのグループの、リーダー。
    遠藤 祥子(えんどう・しょうこ 14)
          野々宮の元カノ。

    谷 龍太(たに・りゅうた 14)
          天文部。聡の親友。

    ユウ (14)  野々宮グループ。
    トキヤ(14)    同。
    マリ (14)    同。
    ナルミ(14)    同。
    鷺宮 (15)  上の学年のイケメン。
    高校生男、女   野々宮の「客」。

    先生(40)
    下原 千代子(40) 凪の母。

    スティーブ(35) 聡の同僚。
    ハンス(35)   聡の同僚。

      ※ 中学時代がメインですが、その時は、
        「中学生たちの目線」を表現するた
        め、大人の顔は見えない(フォーカ
        スやアングルで)にしたいです。


    〇国際宇宙ステーション、内

       窓の外は、巨大な青い地球。
       それを背景に、金色の結婚指輪。
       宇宙飛行士の聡(30)がスティーブ
      (35)にその秘話を話す。
    聡  「今夜零時ちょうど。このステーショ
     ンは東京上空を、真東から真西に通過する。
     その瞬間、俺はプロポーズする」
    スティーブ「ワオ」
      スティーブは英語で喋り、日本語字幕。
    聡  「この指輪を落として、『真下に落ち
     る流れ星』をつくるんだ。今年はしぶんぎ
     座流星群の当たり年で、東の空はそれで満
     杯だ。その中に、垂直な流星が落ちてくる」
       地球の端は夕暮れから夜。
       そこに流星群が降っているのが見える。
       宇宙空間から見た流星群だ。
    スティーブ「すごいプロポーズじゃないか!
     サトシの彼女はそれを東京で見るのか?」
    聡  「……どこかは、知らない。第一、見
     てるかも分からない」
    スティーブ「は?」
    聡  「彼女の30の誕生日が今夜零時なん
     だ。俺は約束したんだ。もし30になって
     彼氏が出来てないなら、プロポーズするっ
     て」
    スティーブ「だからその彼女はどこ?」
    聡  「……どこにいるか知らないし、連絡
     の仕方も分らない」
    スティーブ「えーっと、最後に会ったのは?」
    聡  「十五年前、中二の時」
    スティーブ「……(頭を抱える)サトシ、お
     前はおかしい。現実を見ろ」
    聡  「分ってるよ。けじめなんだ。俺は彼
     女への思いを今夜捨てに来たんだ。この日
     この時間、東京上空を通るミッションだと
     知ってて、俺は志願したんだ」
    スティーブ「……まさか、ワンチャン行ける
     とか、思ってないよね?」
    聡  「……(首を振る)」
    スティーブ「ホントか?」
    聡  「……(あきらめきれずに首を振る)」
    スティーブ「サトシ」
    聡  「今から焼却投棄パックに入れる。零
     時丁度に落とす。大気圏内で燃え尽きて、
     俺の金色は灰色になるのさ」

    〇投棄パックの中に混入させた指輪

       ハッチが開き、真下に地球が見える。
    T 「真下に落ちる流れ星」

    〇十五年前、田舎の県、雨の降る中学校

    T  「十五年前 六月」

    〇同、教室(外は雨)

    聡(14)NA「灰色が金色になった瞬間を、
     見たことがあるだろうか。俺はある。それ
     は俺の人生に閃いた、一撃の稲妻だったの
     だ」
       転校生、凪(13)が紹介される。
       黒板に書かれた「下原凪」の字。
       聡、彼女の美しさに衝撃を受ける。
       凛とした背の高い彼女は、都会的で、
       大人びた美人だ。
       ぽーっとなる聡はじめクラスのみんな。
    凪  「下原……凪です(ぺこりとする)」
    先生 「高野。隣の席空いてるだろ。面倒み
     てやれ」
    聡  「……(まだぽーっとしている)」
    先生 「高野?」
    聡  「は、はい。……えっ」
       凪が隣の空席に座る。
    聡  「あ、はい。……えっ」
       先生は授業の続きを。
       凪は机を移動して、隣に。
    凪  「まだないんで(教科書を見て)」
    聡  「あ。……ああ、ああ」
       慌てて自分の教科書を、机と机の間に。
       さかさま。直す。
       聡のノートには、授業と関係ない計算
       式や数値計算が、真っ黒に埋まってい
       る。
    凪  「(それに気づく)」
    聡  「あ。……マックホルツ第一周期彗星
     の軌道」
    凪  「?」
    聡  「俺天文部なんだ。宇宙飛行士目指し
     てんの」
    凪  「……」
    聡  「(早口で)太陽の重力だけで計算す
     るから予測がずれるんだ。木星の影響を考
     慮して、三体問題で解けば精度は上がって
     ……」
    先生 「何喋ってんだそこ」
       凪、立って報告。
    凪  「……私がトイレの場所を聞いてたん
     です。自己紹介で緊張してたので。行って
     いいですか」
       背筋がきれいで堂々としている。
    先生 「お、おう。……どうぞ」
    凪  「(聡に)地図書いて?」
       聡、慌ててノートに書いて破って渡す。
       凪、優雅に教室を去る。
    聡  「……(ただ見送るのみ)」

    〇休み時間、教室(外は雨)

       さっそく皆に囲まれ、質問攻めを受け
       る凪。
    野々宮(14)「ねえねえ凪ちゃん神奈川のど
     こから来たの? 家近い?」
       と慣れ慣れしく語りかけながら、隣の
       聡の椅子に、半ケツを滑りこませる。
    聡  「ちょっと……」
    野々宮「いいじゃん。ゴメン。(すぐ凪に向
     かい)俺野々宮日馬。ていうか、仲良しに
     なろうよ! みんなで今日歓迎会やろう!
     カラオケとか好き? え、何が好きなの?」
    凪  「……」
       机の上に文庫本を置く。黒いカバーが
       ついていて、中身は分らない。
    野々宮「本好きなんだ! スゲエ! 小説? 
     なんとか殺人事件みたいなやつ?」
    祥子(14)「日馬、小説はみんな殺人事件
     だと思ってる?」
       どっと笑うみんな。野々宮グループの、
       ユウ、トキヤ、マリ、ナルミ(14)
    祥子 「凪ちゃん美人だね? ウチらと仲良
     くしてよ」
    聡  「……」
       その場に居づらく、席を立つ聡。
    野々宮「(聡に)サンキュ! (凪に)そうそ
     う、俺たち仲良しになりたいわけ!」
       祥子は野々宮の腕にまとわりつく。

    〇教室、六時間目終了のチャイム

       みんなカバンを出す。
    野々宮「凪! 歓迎会行こうよ!」
    祥子 「ウチらの溜まり場連れてくし!」
    マリ 「とりあえずお茶しよ?」
    凪  「……」
       それを眺める聡に気づく。
    凪  「教科書、ありがと……高野くん」
    聡  「ああ。じゃ、下原さん」
       野々宮グループと共に帰る凪。

    〇放課後、天文部部室

       ひなびた部室。谷(14)と聡の二人
       だけ。
       聡はノートPCをいじっている。
    谷  「お前のクラス、スゲエ美人転校生来
     たんだって?」
    聡  「もう噂届いてんのかよ」
    谷  「二時間目には回って来たっつーの。
     俺も見に行ってたし!」
    聡  「来てたのかよ」
    谷  「……(ニヤニヤする)」
    聡  「何」
    谷  「隣の席なんだろ?」
    聡  「……おう」
    谷  「……」
    聡  「なんだよ」
    谷  「ワンチャン付き合えるかも、とか思
     ってるだろ」
    聡  「思ってねえし。ていうか、早速野々
     宮のグループとか入ったっぽいし」
       聡、ノートPCに戻る。

    〇翌朝、通学路

       聡、凪に声をかけるイメトレをしてい
       る。
    聡  「(独り言)偶然じゃん、下原もこっち
     方向?」
    聡  「(独り言)教科書っていつもらえん
     の?」
    聡  「(独り言)世界三大流星群って知って
     る?」
       遠くに凪を見つける。
    聡  「え」
       凪、野々宮と手をつないでやって来た。
       (だがいつも凪は無表情だ)
    凪  「あ(立ち止まる)」
    野々宮「(凪に)誰?」
    凪  「同じクラスの」
    野々宮「?」
    凪  「高野くん」
    野々宮「ああ。(聡に)何?」
       聡の目は、二人のつないだ手しか見え
       ない。
    聡  「あ……いや」
    凪  「あ、私たち、付き合うことになった
     ので」
    聡  「え? ……は?」
    野々宮「いやー、手ェ早いよな俺! 困っち
     ゃうわー!」

    〇教室、授業中

       凪はすでに教科書を持っていて、机は
       離されている。
       彼女の横顔を、聡は盗み見ている。

    〇放課後、天文部部室

    聡  「ワンチャンは、机くっつけた時だけ
     だったか……」
    谷  「やっぱワンチャン狙ってたんじゃん」
    聡  「まあ、あると思うじゃん」
    谷  「ねえよ」
    聡  「ラプラスの悪魔を信じろ。この世の
     全ての粒子の位置と運動量さえ分かれば、
     全粒子の運動は軌道計算できるんだ。それ
     が運命だろ」
    谷  「多体問題はカオスになって予測でき
     ねえってなったろ」
    聡  「それはミクロの話だろ。マクロで考
     えりゃ流れは予測できんだろ。つまりそれ
     が運命だ」
    谷  「じゃあ、ワンチャンない運命が待っ
     てるかもじゃん」
    聡  「……」
       ノートに、手計算の続きを書いていく。
       と、扉がガラリと開く。
       凪が立っている。
    聡  「え」
    凪  「あ。……いるかなって思って」
    聡  「俺?」
       凪、うなづく。聡は谷に勝ち誇った顔。
       凪、黒いカバーの本を出す。
    凪  「しぶんぎ座って、何? この中に出
     てくるんだけど、イメージできなくて。…
     …(天井に貼った全天球図を見て)この中
     に、ある?」
       ×   ×   ×
       PCのしぶんぎ座の検索結果。
       天体観測器としての四分儀と、しぶん
       ぎ座。
    聡  「(ヲタクっぽく早口に)四分儀って
     のは、北極星にこう当てて、緯度を測る船
     乗りの道具なのね。地図とこれと風向きで、
     マストの方向を決めたんだ。だから星座に
     なったのは当たり前なんだけど、星座が8
     8に整理された時に消えて、今はもうない」
    凪  「ない星座。それでか……」
    聡  「でも、しぶんぎ座流星群の名前には
     残ってるよ。ちょっと待って」
       聡はノートPCを叩き、自分の撮った
       写真を見せる。星座と流れ星。
    聡  「このへんがしぶんぎ座」
       マウスで線を結ぶ。
    谷  「こいつ全部自分で写真撮ってんの。
     しかもすげえのは、地球の自転に合わせて
     んだぜ」
    凪  「?」
    聡  「夜って暗いじゃん。だから何分間か
     シャッターを開けっぱじゃないと星は撮れ
     ないじゃん? でもその何分かで地球が動
     くじゃん」
       星が軌跡を描いた写真。一方聡の写真
       は、地面側が動いている。
    谷  「だから星を止めるために、カメラに
     自作モーターつけてんのこいつ。自転と逆
     に動くように」
       地面のブレ。静止している星。
    凪  「……成程」
    聡  「あ」
       流れ星の写真たちの中に、垂直に落ち
       る流れ星が写っているのを見せる。
    聡  「『真下に落ちる流れ星』って、レア
     じゃね?」
    凪  「そんなことあるの?」
    聡  「天球360度ある中の、たまたま0
     度の時があればあるよ。偶然の偶然の偶然
     で」
    凪  「……うん。しぶんぎ座が分って、よ
     かった。ありがとう」
       本をカバンにしまって、立つ凪。
    聡  「本、好きなんだ」
    凪  「(うなづく)」
    聡  「……あ。ここ、誰も来ないから、静
     かに本読めるよ?」
    凪  「……」
    聡  「あ。あ、別に、どこででも読めるか」
       凪にラインが来る。
    凪  「野々宮に呼ばれたんで、行くわ」
       扉を開ける。
    聡  「はあ、モテるやつらはいいよなあ」
    凪  「(立ち止まって)別に、あの人を好
     きじゃないよ」
    聡  「え?」
    凪  「処世術。他の寄ってくる男、断りや
     すいでしょ」
    聡  「……」
    凪  「私、私を好きな男、嫌いなの」
       微妙な笑顔の凪。笑うのが苦手な感じ。
    聡  「……」

    〇オシャレなカフェ

       トレイでみんなの飲み物を運んでくる
       祥子。
    ユウ 「サンキュー祥子!」
    祥子 「これユウの、これナルちゃんとマリ、
     あと野々宮くん」
    野々宮「(凪に)どれ?」
       凪、指さす。野々宮わざわざ立って凪
       の分を取ってあげる。
       露骨にイチャイチャする野々宮。
    祥子 「……」
    マリ 「祥子、二人は付き合うって決めたん
     だから、切り替えてこ?」
    ナルミ「うちら、結束力でナンボでしょ?」
    祥子 「うん。そうだよね」
    凪  「(祥子が見ているのに気づき、微笑
     む)」
    祥子 「(微笑み返す)」

    〇(日替わり)放課後、天文部

       ガラリと入ってる凪。
       PCを見てた聡と谷はびっくりする。
       凪、二人を邪魔しないように端の席に
       座る。
    凪  「……あのグループといると疲れちゃ
     う。ここなら見つからずに本読める」
    谷  「あ、お茶飲む? ジュース買ってく
     るわ」
       気をきかせてやったぜ、と聡に目で訴
       え、去る谷。
    聡  「……(PCを叩きながら、チラ見)」
    凪  「……あ。迷惑?」
    聡  「(首を振る)全然、ずっといていい
     よ。俺も、ここしか、居場所ないし」
    凪  「……いい場所じゃん」
       無言に戻る二人。聡、何を話していい
       かわからない。
    聡  「……あの、天文部入ってもいいんだ
     ぜ!」
    凪  「?」
    聡  「部活、って言えば、簡単に呼び出さ
     れなくない? 本も読み放題」
    凪  「……ナイスアイデア」
    聡  「……あ、で、」
       タイミング悪く、ジュースを買ってき
       た谷が帰ってくる。
    谷  「……?」

    〇海

    T  「七月」
    ユウ 「一番乗り!」
    トキヤ「つめてーっ!」
       など、男子は真っ先に海に入る。
       野々宮グループが遊びに来ている。
       女子はパラソルの下。
    祥子 「凪、水着似合ってる。カワイイよ」
    凪  「あ、ありがとう。……祥子さんも」
    祥子 「祥子でいいって言ってんじゃん」
    凪  「……祥子」
    祥子 「うん。それでいい。この夏はいっぱ
     い遊ぼうね!」
    凪  「あ……うん」
    祥子 「あ! 日焼け止め塗ってあげるよ! 
     凪、色白いから焼けたら大変でしょ? こ
     れフランス製のなんとかって成分入りのや
     つ!」
    凪  「あ……ありがとう」
    祥子 「はい背中向けて!」
       背中を向ける凪。
    祥子 「……(ほほ笑んで)」

    〇病院、外、夜

       救急車のサイレン。
       救急車の扉が開く。中から苦しむ凪。
       濡らしたタオルが落ちると、凪の背中
       が真っ赤になっている。
    凪  「(救急隊員に)大丈夫です、歩ける
     んで……」
    救急隊員「中から熱くなってきたら危ないか
     ら、ちゃんとお医者さんに言って!」
       付き添う野々宮と祥子。

    〇教室、休み時間

    祥子 「だからほんとにゴメンって言ってん
     じゃん。フランス製のアレが合わないって
     思わなかったし!」
    野々宮「一生火傷の痕とか残ったらどうすん
     だよ!」
    祥子 「でも大丈夫って言われてたでしょ?」
    野々宮「……」
    祥子 「凪が来たら直接謝る。それでいいで
     しょ?」
       後方の言い合いを、背中で聞く聡。
       凪の休みの机を眺める。

    〇教室、授業中

       凪、がらりと扉を開けて入ってくる。
       祥子、野々宮たちと目を合わせる。
       祥子、手を合わせて謝るしぐさ。
    聡  「(小声)背中、もう大丈夫なの?」
    凪  「(うなづく、小声)聞いたの?」
    聡  「(小声)野々宮たちがケンカしてた。
     わざとじゃないって」
    凪  「(小声)……私もそう思いたい」

    〇校舎裏

       野々宮、ユウ、トキヤに呼び出された
       聡。
    聡  「え? なんですか……何?」
    野々宮「だからさ。俺はそうは思わないんだ
     けど、みんなが言うんだ。凪をキミが狙っ
     てるとかさ」
    聡  「えっ……そんなことないですよ」
    野々宮「そうだよな! 凪は俺と付き合って
     るし、やっぱ被害妄想だよな! よかった
     ー!(肩を組む)」
    聡  「……」
    野々宮「あ、でもこの二人がさ、やんないと
     けじめつかないって言うんだよね」
    聡  「?」
       画鋲で左手の人差し指が刺される。
    聡  「いって! 何? えっ」
    野々宮「俺は別にやりたかった訳じゃないん
     だけどさ、これから高野くんが凪好きにな
     っちゃうかも知れないじゃん?」
    聡  「え……だから、狙ってないし」
    野々宮「その言葉が聞きたかったんだ! ゴ
     メンな! 絆創膏いるよな!」
       野々宮は絆創膏を渡す。

    〇朝、下駄箱

    凪  「……」
       左右が逆にして置いてある。
       周囲を見渡すが、誰もいない。

    〇次の朝、下駄箱

    凪  「……」
       今度は右だけない。

    〇教室、授業中

       右だけスリッパを履いている凪。
       聡から手紙が。
    聡の手紙『なんで右だけスリッパなの?』
    凪の手紙『なくした』
    聡の手紙『なんで右だけなくすの?』
    凪の手紙『なくしたから』
    聡  「……」
       自分の上履きを脱いで、右を渡す。
    聡  「(小声で)貸す」
       ためしに履くと、サイズが小さい。
    聡  「(小声で)かかと潰していいから」
       右だけかかとを潰した上履き。
       右だけ靴下の、聡の足。

    〇放課後、天文部部室

    聡  「なんかやべえ匂い感じるんだよ。凪、
     いじめられてんじゃねえかな」
    谷  「誰に? なんで? スクールカース
     ト上位にそんなことある?」
    聡  「……美人すぎて恨まれることあるだ
     ろ」
    谷  「あんの? そんなこと」
    聡  「……(首をかしげる)」

    〇朝一、下駄箱

       柱の陰で監視する聡。

    〇翌日、朝一、下駄箱

       柱の陰で監視する聡。

    〇翌日、朝一、下駄箱

       柱の陰で監視する聡。
    聡  「!」
       祥子が凪の上履きを出している。
    聡  「何やってんの」
    祥子 「えっ。あ、やだ間違えちゃった」
    聡  「なにそれ、いじめ? 嫌がらせ?」
    祥子 「間違えただけって言ってるでしょ」
    聡  「……本人に言おうか」
    祥子 「何言ってんの。私と凪は仲良しよ」
    聡  「やっぱり凪のって知っててやってん
     じゃん」
    祥子 「……(周りを見渡して)校舎裏、行
     こ?」
    聡  「?」
    祥子 「女の子のオッパイ、見たことないで
     しょ。見せてあげる」
    聡  「は?」
       だが聡は祥子のオッパイから視線を外
       せなくなる。
    祥子 「(にやりと笑う)」

    〇校舎裏

       ブラウスのボタンを外して、ブラの谷
       間を見せる祥子。聡、生唾を飲み込む。
       ブラをめくり、乳房を見せる祥子。
       (背中側からで、もろには見せない)
    祥子 「……どう? いいでしょ?」
    聡  「(ただうなづくのみ)」
    祥子 「触っていいよ。揉んだことないでし
     ょ、生乳」
    聡  「(おそるおそる触る)」
    祥子 「やわらかく揉んで」
    聡  「(揉む)」
    祥子 「……そう。……上手。……あっ(つ
     い感じてしまう)」
    聡  「……」
       突如我に返り、気持ち悪くなってその
       場を逃げ出す。
    祥子 「あ! ちょっと!」

    〇夕焼け、自転車で走る聡

       ただただ自転車を漕ぐ聡。
       全速力で漕ぐ。
       息が切れて止まる。
       左手の絆創膏。右手の感触。
    聡  「あーーーーー! あーーーーー!」
       と叫ぶことしか出来ない。

    〇放課後、天文部部室

    聡  「俺、決めたよ谷」
    谷  「なんだよ」
    聡  「野々宮に振られた元カノの遠藤祥子
     は、仲良しの振りをして下原に嫌がらせを
     している。女同士の醜い争いだ。俺は姫を
     陰ながら救う、真の騎士となる。いわば忍
     びだ」
    谷  「ナイトとニンジャ、どっちだよ」
    聡  「だから影のヒーローだよ」
    谷  「だからどれだよ」
    聡  「協力しろ、相棒」
    谷  「?」


    (2/3につづきます。
    凪を救うための、聡の一世一代の行動とは。
    そんな騎士みたいなことが???)
    https://note.com/oooka_/n/n5133a6e13afc


     
     
    見えない感情を、見える表現にする人。 blog: https://oookaworks.seesaa.net/ 映画監督、脚本家、CMディレクター。 ドラマ「風魔の小次郎(脚本・メイン監督)」、CM「クレラップ」「北海道シチュー」、映画「いけちゃんとぼく(脚本・監督)」。

    あなたへのおすすめ