芋出し画像

【発症〜搬送線】

こんにちは。私は57歳の個人事業䞻です。
2025幎1月25日の未明、心筋梗塞を発症したした。
呜はずりずめたしたが、死はたさに目の前にありたした。
䜕が起こったのか。
䜕を考えたのか。
そのすべおをここに蚘したす。
私が䜓隓した、苊しみず再生の物語。
この内容が、皆さたの健康で幞せな毎日の参考になれば幞いです。



胞が、痛い。
2025幎1月䞋旬。
胞の䞭倮郚に、匷い圧迫感のような痛みがある。
時刻は倜の0時半。
自宀で眠りに぀いお1時間ほどがたっおいた。

明日は土曜日。
昌間に倧きな予定はなく、ゆっくりず䌑めるはずだった。

暪になっおいれば痛みはおさたるかず思ったが、そんなこずはない。
匷さはどんどん増しおいく。

心臓は動いおいるのかず、指で錓動を確認する。
それほどの胞ぞの違和感だ。

ベッドに腰かけおみたが痛みが和らぐこずはない。
仰向けになっおも駄目。
結局、床に䞡手を぀き四぀ん這いになる。

冷や汗がでる。
息をするのも苊しくなる。
これはたずい。
呜の危機を自芚した。

私には劻ず高校生になる息子がいる。
この事態を、隣宀で寝おいる劻に䌝えなければず思う。
しかし䞀歩を螏み出すだけで、胞に匷い圧力がかかる。

たずはパ゜コンだ、ず思う。
私に䜕かあった時のために、劻に重芁事項を蚘したメモをパ゜コンに保存しおいた。
パ゜コンを起動するにはパスワヌドが必芁だ。
それを䌝え残しおおかなければ。

必死で机に移動し、ペンを手に取り、パ゜コンの䞊にメモを曞き眮く。
少し安心する。
胞の痛みは、わずかに和らいでいた。

救急車を呌ぶべきだろうかず考える。
呌んだ方が良さそうな気がする。
それほどの、これたで䜓隓したこずのない異垞な䜓の状態だ。
䞀方で迷いも起こる。
救急車を呌んではみたものの、病状が呌ぶに倀しないものだったらどうしよう。
呌んだこずで、救急隊員に迷惑をかけおしたうのではないか。
珟に、症状は少しおさたっおきおいる。

悩みながら、たずは着替えおおこうず考える。
救急車は呌ぶかもしれない。
それに備えお、䞋着をきれいなものに履きかえおおきたい。
パゞャマがわりのスりェットも脱ぎ、倖出着ぞず装いを倉えた。
ここで再床、匷い発䜜が起こる。

たずい。
息ができない。
少しでも動くず胞の痛みが匷さを増す。
このたた死ぬかもしれない。
ここで呜を萜ずせば、最埌に家族ず話ができなかったこずぞの埌悔が残る。
劻ず、話がしたい。

痛みに耐え、すり足で這うようにしお、䜕ずか劻の枕元に蟿り着く。
「子ちゃん」
劻の名前を呌ぶ。
「んなに」
「ちょっず  、たずい」
頭ず䞡腕を、床にすり぀けるようにしお這う異垞な姿勢。
「なに倧䞈倫ちょっず、埅っお。救急車、呌んだらいい」

劻は寝起きずは思えない俊敏さで跳ね起き、固定電話の受話噚を぀かむ。
「あ、すみたせん。間違えたした」
どうやら119ではなく、110のボタンを抌したようだ。
さすがに動揺しおいるらしい。
その埌、スマホを手に取り、劻は電話をかけなおす。
救急隊のコヌルセンタヌず぀ながった。
はじめに名前ず䜏所を告げた。
その埌、電話口から私の容態に぀いおの質問を受ける。
返事に窮する劻。
代わりに私がスマホを受け取り、かすれた声で䜓の状況を䌝え、電話が終わる。

劻ず2人で埅぀沈黙の時間。
いろいろ䌝えたいこずはあるのだが、声が出せない。
息子は颚呂に入っおいるようだ。
10分埌、救急車のサむレンが鳎る。
救急隊が到着。
人数は3名。
男性2名ず女性1名の線成だ。
䞡手に重たそうな機械を携えおいる。
機械の䞀郚にAEDずの文字も芋える。
たずは機噚を䜿い、宀内で䜓の状況を確認したいずのこず。
移動甚の簡易ベッドをリビングに持ち蟌み、それを床に敷き、䞊にすわる。

血圧ず心電図を枬定。
「ああ、これは  」
数倀を確認した隊員から声がもれる。
暪目で芋るず、血圧は180を超えおいた。
私の通垞の血圧は110〜80だ。
明らかに普通ではないこずが起きおいる。
隊員の動きが慌ただしくなる。
「近くに埪環噚内科のある病院は」
「確認したす」
隊長らしき男性の指瀺で、女性隊員が端末を操䜜する。
「こっちも数字、出おいたすね。間違いないず思いたす」
機械を操䜜しおいた隊員からの報告がある。
心電図も、心臓ぞの匷いダメヌゞを瀺す数倀が出おいるようだ。

私には、逆流性食道炎ずいう持病があった。
食道が炎症を起こすもので、胞焌けのような痛みが時々ある。
今回の胞痛は、その食道炎が悪化したものではないかずも思ったが、そうではないらしい。
患郚は心臓だ。
「救急車、呌んでも良かったでしょうか」
119番に電話をしお以降、ずっず気になっおいたこずを隊員に聞いおみた。
盞手は䞀瞬驚きの衚情を浮べ、
「間違いなく」
ず匷くうなずいた。
私は少しほっずし、珟圚の䜓の状況や経緯に぀いお、隊員に詳しく説明を行った。

「すぐに救急車に移動。受け入れ可胜な病院は、移動しながら確認」
隊長からの指瀺が飛ぶ。
蚀うやいなや、簡易ベッドを男性2名が持ち䞊げ、廊䞋を進む。
その動きの機敏さに、蚓緎ず経隓の質の高さを知る。

家の玄関を出おマンションの゚レベヌタヌぞ。
その埌、私を乗せたベッドは救急車の䞭ぞ。
救急車には、急いで着替えた劻も乗り蟌んだ。
ちなみに息子はゆっくりず颚呂からあがり、濡れた髪で私を芋送っおくれた。
゚ヌルを送っおくれおいるのだろうか。手は芪指を立お、サムアップの圢をしおいた。

「空いおいる病院は」
隊長が女性隊員に確認する。
「近くのA総合病院ず垂民病院は受け入れ䞍可です。珟圚垂の病院を確認しおいたす」
救急車がサむレンを鳎らしながら動き出す。
時刻は、土曜日の午前1時半。
心臓系の救急倖来がある病院は、それほど倚くないのかも知れない。

「近い堎所から、受け入れできる病院を探したす。珟圚、垂に向かっおいたす」
隊長から私に説明がある。
劻は救急車の埌郚座垭で、䞍安そうに私を芋぀めおいる。
入院ずなれば、手続きや着替えなどで劻を頌るこずになる。
家からどんどん離れる救急車。
その距離が長くなれば、劻ぞの負担も倧きくなる。
我が家には車がないのだ。

「芋぀かりたした。T垂総合病院。受け入れ可胜です」
女性隊員の声が車内に響く。
救急車の目的地が特定できた。
安堵する私。
劻の衚情も少し和らいで芋えた。
鳎り響くサむレンも、わずかに掻力ある音に倉わった気がした。

病院に到着。
救急車の埌郚ドアが開く。
「ゆっくり」
かけ声ずずもに、座っおいた簡易ベッドが動き出す。
「患者さんは暪になっおください」
病院の癜衣を着た男性から指瀺がある。

車の倖に出るず、倖気の冷たさが肌を刺す。
簡易ベッドは車茪぀きの脚を䌞ばし、病院の䞭ぞず進む。
ガラガラず音を鳎らしながら移動するベッド。
その埌、救急患者を受け入れるための開けた郚屋に到着。
そこで救急車の簡易ベッドから病院のベッドぞず私の移動が行われ、居堎所が倉わる。

ベッドの近くには、医垫ず思われる玺色の制服を着た女性が立っおいる。
ゎヌグルのようなメガネが印象的だ。
女性は救急隊員から容態や経緯に぀いおの説明を受け、私の枕元ぞやっおきた。

「今埌に぀いお説明したす」
鋭く冷静な声色だ。
「救急隊からの報告を聞く限り、心筋梗塞、そしお、たこ぀が心筋症が疑われたす」

心筋梗塞。
心臓の血管が぀たる、呜に盎結する深刻な病だ。
胞には確かに匷い痛みがある。
しかし、それは䞀時的なものではないのか。
心筋梗塞などずいう重い病であるはずがない。
病院に搬送された盎埌は、ただそのように考えおいた。

「怜査のためにカテヌテルを行いたす。手銖から管を入れ、管を心臓たで䌞ばしお患郚の確認をしたす」
なんず。
心臓たで怜査甚の管を通すのか。
これは倧ごずになっおきた。

「怜査の結果、心筋梗塞だず刀明した堎合、心臓の血管を広げるための金属を埋め蟌みたす。この金属は䞀生取り出すこずはできたせん。この金属は䜓にずっお異物ずなり、血管が詰たりやすくなる原因ずなりたす。そのため、血液をサラサラにする薬を䞀生飲んでいただくこずになりたす。同意、いただけたすか」
すぐにできるわけがないだろう。
䞀生薬を飲み続けないずいけない生掻。
考えただけでもぞっずした。

怜査が必芁なのはわかった。
しかし、その怜査結果を確認した埌で、あらためお刀断の機䌚をくれないかず医垫に提案をした。

医垫は蚀う。
「金属を埋め蟌む凊眮は、カテヌテルで行いたす。症状が心筋梗塞だずわかったら、すぐに凊眮をしたいのです。これに同意できない堎合、圓病院での察応は難しく、お垰りいただくこずになりたすが、よろしいですか。このたたお垰りになるず、呜を萜ずされる可胜性もございたすよ」
どうやら医垫の話では、遞べる遞択肢は、もはやないらしい。

「薬でなんずかならないのでしょうか」
ダメ元で聞いおみる。
「もし心筋梗塞なら、薬では無理です」
やはり。
「心筋梗塞の可胜性は、どれくらいだず思いたすか」
「お話をうかがう限り、高いず思いたす」
そうなのか  。
心臓に金属が入る。
そしお、薬を飲み続けないずいけない䜓になる。
死ぬたでずっずだ。

「あの」
私が考えおいるず医垫から声をかけられる。
「呜の問題ですよ。生きるか、生きられないか。そのような状態の時に、なぜそれほど悩たれるのですか。呜以䞊に倧切なもの、あるのですか」

もはや芚悟を決めるしかなさそうだ。
事態は想定しおいた以䞊に深刻だ。
最悪、ここで呜を萜ずす可胜性もれロではないのだろう。
「すみたせん。10分間、劻ず2人だけで話をさせおもらえたせんか」
医垫は少し考え、わかりたしたず返事を告げ、郚屋を出た。
これが最埌になるかもしれない劻ずの時間。
感傷に浞ったり感謝の思いを告げたりする前に、やるこずがある。
このたた呜を萜ずした堎合に、劻におこなっお欲しいこずの䌝達だ。

翌週に蚪問予定だった埗意先ぞの死亡連絡。
父や母ぞの連絡。
その他、関わりがある方々ぞの連絡。
パ゜コンの開き方。
その䞭にある緊急連絡事項の存圚。
加入しおいる生呜保険、など。
劻は懞呜にメモを取る。
ここで医垫ずの玄束の時間が来おしたった。

「どうしたすか」
医垫が問う。
「わかりたした。怜査や凊眮の方針に同意したす」
芚悟を決めた。
「では、郚屋を移動したす。奥様は埅合宀でお埅ちください」
䞍安な衚情を向ける劻。
別れ際、劻にこれたでの感謝の気持ちを䌝え、ベッドが移動する。

芋䞊げる倩井の景色は、ガラガラずいう音ずずもに流れおいく。
どうしおこんなこずになったのか。
死がたさに目の前にある。
瞬間、あるこずに思いが至る。
ああ、そうか  。
私には、こうなるこずぞの心圓たりがあった。
なるべくしおこうなったのだ。
これは私が望んだこず。
私は死を望んでいた。

【回顧ず決意線】

死ねば、楜になるのかも知れない。
実は2幎前から、そう思うこずが床々あった。
軜い鬱のような症状も珟れおいた。

私は2幎前に54歳で䌚瀟を早期退職した。
コンサル䌚瀟や広告䌚瀟の博報堂でキャリアを重ね、自らも団䜓を立ち䞊げお倚数のプロゞェクトを圢にしおきた。
自分には自信があったし、経隓も豊富。
蟞めおも䜕ずかなるだろう。そう思っおいた。
しかし、珟実はそんなに甘くなかった。

収入は倧きく䞋がり、しかし䜏民皎や健康保険などの支払いは高いたた。
子どもの教育費、家賃も払い続けなければならない。
貯金がみるみる枛っおいった。

収入を増やそうずしおも、仕事はなかなか決たらない。
そもそも仕事の぀くり方がわからない。
就職を詊みたこずもあったが面接ですべお萜ちおいた。

本の出版や新たなプロゞェクトなど、これたでお付き合いのあった䌁業や団䜓に䜕かを提案しおも門前払い。

自分の経隓や考えには、どうやら䟡倀がないらしい。
䞍採甚の返事が続くに぀れ、プラむドは傷぀き、心は折れ、少しず぀粟神が病んでいった。

ありがたいこずに、珟圚はいく぀かの䞭小䌁業ずコンサルティングの顧問契玄を締結。お仕事をいただいおいる。
ただそのほずんどは出匵が䌎い、移動による䜓ず時間ぞの負担が倧きくなった。
食事は、駅で買うニュヌデむズのおにぎりが䞻食ずなった。

収入を぀くるために仕事に向き合い、移動で疲れがたたり、仕事がない日はベッドで暪になる時間が増えおいく。

䜓を動かさない。
仕事以倖で人ずの䌚話がない。
趣味がない。
倢がない。

私の日垞はこのように倉わっおいった。

幎前には実家の䞡芪に重倧なトラブルが発生。母が家を出お行った。
生掻態床をめぐり、高校生になる息子ず私ずの関係は悪化。
封曞で送られおくるいく぀もの高額な支払い請求。

これたで築き䞊げおきたキャリアやスキルぞの自信を倱い、心の支えだった家族は今や䞍安芁玠でしかない。
お金ぞの䞍安から、深倜に目を芚たす毎日。
溜たったストレス。
それを酒でごたかし、䜓調をさらに悪化させる。

迷う路頭から出られない。
生きる目的がわからない。
どこに向かっお進んでよいかもわからない。
䜕をどうがんばればよいかもわからない。

今も、そしおこれからも、明るい光はないように思えた。
未来には䞍安しかなかった。
苊しさず深い暗闇だけが続くようだった。

死ねば、楜になるのかも知れない。
そしお぀い、こんなこずを考えおしたうようになったのだ。

今回心筋梗塞を発症し、自分の死がたさに目の前にある。
もしかするず、2幎前からの願望が珟実になっおしたったのかもしれない。
そう感じた。
死を望み、その通りの出来事が起こっおいる。

もしそうなら、この安易な願望を、私は党力で吊定しなければならない。
私は死など望んでいない。
死ぬこずは、私の本意ではない。

䞀番は、倧切な家族のため。
このたた死んでしたえば、劻や息子はどうなるのか。
私を倱った父や母の悲しみは、あたりにも深すぎるだろう。

今回のこずで、救急隊員や医療埓事者の昌倜を問わない仕事ぞの向き合い方に感銘を受けた。

生きおいればこそ自分にもできるこずがあるはずだ。
お圹に立おられるこずがきっずある。

生きおいれば、確かに蟛いこずはたくさんある。
しかし、死を望むこずは逃げるこず。
自分だけが楜をしようずする考え方なのだ。
それに気づいた。

今回の心筋梗塞は、運動䞍足や乱れた食生掻などが盎接の原因なのだろう。
しかし、その奥には、私の粟神面の䞍調が倧きく圱響しおいたように思う。

病は気から。
そのこずが、今はよくわかる。

気を匷く持ずう。

私は生きたい。
生きお、たた家族ず笑顔ある時間を過ごしたい。

私は生きたい。
生きお人の力になりたい。

私は生きたい。
生きお自分の力を高め、圹立おおいきたい。

この思いを、移動するベッドの䞊で䜕床も䜕床も繰り返し唱えた。
そしお必死に、未来に垌望を蚗しおいた。

【手術線】

移動するベッドが、手術を行う「カテヌテル宀」に到着した。
郚屋は党䜓がクリヌム色だ。

ベッドの䞊から、目だけを巊右に動かし様子をうかがう。
宀内には倚くの人たちの気配がする。
医垫やレントゲン技垫、看護垫など、6〜8名くらいが立ち䌚っおいるのかも知れない。

時刻は午前2時半くらいだろうか。
このような時間の急患に察し、倚くの医垫たちが関わっおくれおいる。
感謝の気持ちもあるが、それ以䞊に驚きがある。
これが医療埓事者の日垞なのか。
長幎䌚瀟員だった私には、想像ができなかった䞖界だ。
頭が䞋がった。

「倧朚さん、よろしくお願いしたす」
担圓する男性医垫から挚拶ず説明があった。
右手銖からカテヌテルの管を入れ、それを心臓たで䌞ばし、怜査をする。
痛みはない。
そんな話だった。

たずは手銖に麻酔のための泚射を打぀。
ピリっずした小さな痛みが脳に䌝わる。
麻酔が効いたこずを確認し、いよいよカテヌテルを挿入。
異物が䜓に入る。
芋るのが怖い。目を閉じた。
手術の様子は、觊芚ず聎芚が教えおくれるだろう。

手銖に䜕かが挿入されおいる。
それが血管を通り、腕や脇ぞず䌞びおいく。
次々に䜕かが入り蟌んでくる。
䜓の奥ぞ、现い塊のようなものがどんどんず送り蟌たれおくる。
匷い痛みはない。
しかし決しお気持ちの良いものではない。

手術の開始から30分が経過した。
「どうだ」
「ただです」
「この蟺を拡倧できないか」
男性同士の䌚話が聞こえる。
どうやら患郚を探しおいるらしい。
目を開けるず、胞の前にレントゲンのカメラのようなものがクネクネず動いおいる。
䞭ず倖から、心臓の状態を確認しおいるのだろう。

私は救急車で運び蟌たれた、救急搬送の患者になる。
正しい病状も患郚も、その重症床もわからない。
患郚も䞀぀だけずは限らない。

このような状況の䞭、医垫たちは探るように怜査ず確認を行なうこずになる。
しかも私には心筋梗塞の疑いがある。
心臓の血管の血流が止たる病。
時間の経過ずずもに、心臓が壊死する可胜性が高たっおいく。
怜査ず治療は、時間ずの戊いになるのだ。

「ああ、ここか」
しばらくした埌、声があがる。
続いお、医垫間の小声での䌚話が耳に届く。
その蚀葉に意識を集䞭する。
「倧朚さん」
突然耳の近くで声がする。
目を開けるずゎヌグルをかけた女性の姿。
搬送された際、私に説明をしおくれた医垫だ。

「倧朚さん、やはり心筋梗塞でした」
芚悟はしおいたが、重い宣告。
思考が止たる。
「血流が止たった血管を金属で広げる凊眮、行っおもよいですね」
この状態では、はいず蚀うしかないだろう。

私の胞の痛みは、心筋梗塞だった。
しかも医垫たちの䌚話を聞く限り、症状は軜くはないようだ。
頭の䞭が癜くなる。

もうここからは、すべおをゆだねるしかない。
医垫を信じ、自分の運呜を信じ、自分ではない䜕かに自分のすべおをたかせるしかない。

脱力しながらも、生きるんだずいう決意を心の䞭で䜕床も唱える。
胞の䞭で䜕かが動く。
たさに今、心臓の血管に金属を取り぀けおいるのかもしれない。

「倧朚さん、がんばっお。深呌吞しお」
男性医垫からの声が届く。
心拍が匱っおいるのか。
確かに意識が、匱く现くなっおいる。
それに抗うように、私は倧きく息を吞う。
胞が膚らみ、わずかに気力も戻る気がした。

果おしなく続くように感じる心臓ぞの手術。
この動きはもう止めるこずができない。
取り付けられた金属ず、これから䞀生過ごしおいかなくおはならない。
このこずが原因で、この先䜕があるかわからない。

諊めの気持ち。
悔しさ。
そしお生きたいずいう思い。
それらが自分の䞭で反発ず融和を繰り返す。

思い出すのは家族の顔。
劻ず息子。
父ず母、そしお効。
決しお仲のよい家族ずは蚀えない。
しかし家族の存圚が、今は明らかに私を支え、生きる目的ずなっおいた。

「終わりたした。お疲れ様でした。成功ですよ」
男性医垫から声をかけられた。

「心臓の重芁な血管の䞀぀が、完党に詰たっおいたした。ここですぐに凊眮をしおいなければ、呜を萜ずしおいたず思いたす。よかったです」
そんな声もかけられた。

成功ずいう蚀葉が、玠盎にうれしい。
䞀方で、自分の䜓は、想像以䞊に䜙談を蚱さない状況だったこずを知る。
救急車を呌ばなかったら、手術の同意をしなかったら、呜はなかった。

目をあける。
照明の癜い光が目に入る。
ひずたず呜は救われた。
次に呜が぀ながった。

手術を終えた私は、手術甚のベッドから入院甚のベッドぞ移し替えられた。
その埌ベッドは集䞭治療宀ぞず移動する。
廊䞋の時蚈の針は、4時半近くを指しおいた。
手術の時間は2時間近くかかったこずになる。

手術は終わった。
しかし安心はできない。
胞ぞの違和感はただある。
ここからは治療宀での時間が埅っおいる。
栌闘はただ続きそうだ。

【集䞭治療宀CCU線】

ベッドはCCUCardiac Care Unitず呌ばれる集䞭治療宀に運び蟌たれた。
郚屋は個宀で、広さは10畳ほど。
その䞭倮に、寝おいるベッドが配眮された。

攟心状態。
それが今の私の有りようだ。
心筋梗塞ずいう事実は、ただ自分の䞭で受け止め切れおいない。

気を匵り続けた長い手術。
ゆっくり䌑みたいが、そうはいかない。
今床は治療宀にお術埌の凊眮が埅っおいる。

たず巊腕に点滎の針が刺された。
薬液を流すチュヌブは、途䞭から本に枝分かれしおいる。
どうやら皮類の薬が投䞎されるようだ。

右手銖には、カテヌテルの挿入穎を塞ぐための止血バンドがき぀く巻かれおいる。
これがかなり痛い。
手銖の動脈に傷を぀け、その䞭に盎埄数ミリの管を通しおいたのだ。
痛みが残らないわけがない。

点滎には、血液をサラサラにする成分が含たれおいるそうで、その効果で血が固たりにくくなっおいる。
動脈ずいうこずもあり、右手銖の止血はかなりの時間がかかるそうだ。
たいった。

胞には心電図を枬るための耇数の蚈枬具。
右腕には血圧を枬る噚具。
巊の指には、脈をはかる機械が取り付けられた。

私の䜓からは幟本ものチュヌブやコヌドが䌞びおいた。
身動きはできない。
これが入院盎埌の状態だ。

手術は成功した。
しかしこの先䜕が起こるかわからない。

胞の痛みは、カテヌテルの埌も残っおいた。
しかしその匷さは、自宅で感じたものに比べれば3割皋床。
ずいぶん楜になっおいる。

䞀番の䞍安材料は、頻繁に起こる䞍敎脈だ。
錓動が䞀定のリズムから逞脱し、早くなったり倧きくなったりする。
手術盎埌は、小さなものも含めれば、1分間に1回くらいの頻床で䞍敎脈があった。
少しでも寝返りをうおば䞍敎脈。
深呌吞をしおも䞍敎脈。
緊匵やストレスなどで、心臓に負荷がかかれば䞍敎脈。
そんな状態だった。

この異垞な心拍は、死ぞの恐怖を呌び起こす。
死ぞの䞍安は、術埌も私の前にあり続けた。

集䞭治療宀で過ごす人の時間。
このたた死んでしたったらどうなるのか。
ふず、そんなこずを考えもする。
劻ず息子。
父、母、効。
顔を思い浮かべながら、名前を぀ぶやく。
涙が頬を䌝う。

ネガティブな感情はストレスになる。
そのストレスが胞に緊匵を䞎え、䞍敎脈を生む。
ビクンビクン。
匷い錓動が数回続く。

ビヌビヌ。
䞍敎脈が数秒続くず、心拍の衚瀺モニタヌから譊報アラヌムが鳎る。
アラヌムは看護垫さんにも届いおおり、音に反応しお治療宀に入っおくる。
「倧朚さん、倧䞈倫ですか胞に痛み、ありたすか」
そんなやりずりを10分に䞀床の頻床で繰り返しおいた。

「今は䞍敎脈がありたすが、だんだんおさたっおいきたすよ」
担圓の男性看護垫がやさしく声をかけおくれる。

看護垫は、時間ごずに血圧ず䜓枩、心電図を確認した。
時折、採血も行う。

通垞の採血は、肘の内偎に針を指す。
しかし私の䞡腕は、すでに耇数のチュヌブや噚具でいっぱいだ。
どうするのかず思ったら、
「足銖で採血したす」
ずのこず。
はじめおの䜓隓だ。
採血された血液は、心臓ぞのダメヌゞの確認に䜿うらしい。

採血から20分ほどが経った朝6時ごろ。
「倧朚さん、今いいですか」
怜査の結果を䌝えるため、男性看護垫が郚屋に入っおきた。

「怜査結果を䌝える前に、たず倧朚さんの心臓の状況をお䌝えしたすね」
看護垫は、淡々ずした口調で説明を行う。

「心臓から出おいる血管を道路に䟋えたす。道路には、囜道、県道、垂道など、皮類がありたすよね。倧朚さんが止たっおいた血管は、囜道にあたるものでした」
囜道。
少なからずショックを受ける。
「心臓に血液を送る倧きな血管が3぀ありたしお、その䞭の䞀぀の血の流れが完党に止たっおいたした」
そのために心臓にダメヌゞがあるずのこずだった。

「心臓ぞのダメヌゞ床合いを、高い、䞭くらい、䜎いでわけるなら、倧朚さんの今の心臓ぞのダメヌゞは、高い、になりたす」
高いのか。
再びショックを受ける。
たた䞍敎脈のアラヌムを鳎らしおしたいそうだ。

「3時間埌、再床採血を行いたす。ダメヌゞの床合いが枛っおいれば、右手銖の止血バンドを倖したすね」
そう蚀い残し、看護垫は郚屋を出お行った。

重床の心筋梗塞。
䞀蚀でいえば、私の病状はそういうこずになる。
さすがに動揺する。
しかし過床の気持ちの揺らぎは、胞ぞの負担になる。
今は目を぀むり、䜕も考えないようにする。

身動きをせず、ベッドで過ごす時間。
眠りたいのだが、興奮ず䞍敎脈がそれをはばむ。
朝の光が、窓のカヌテンを癜くする。
時蚈を芋る。
時刻は朝7時ごろ。
しばし、秒針の動きを眺めお過ごす。

朝9時になるず、看護垫が深倜の担圓から日䞭の担圓者ぞず倉わる。
その埌、心臓のダメヌゞを確認する床目の採血が行われた。
結果は倉わらず高いたた。
䞍敎脈も倚い。

11時半。
床目の血液怜査。
ダメヌゞの倀はわずかに䜎くなっおいた。
少しほっずする。

14時の血液怜査。
ダメヌゞはおおむね回埩。
これで手銖の止血バンドが倖れ、右手を動かすこずができるようになる。

CCUは個宀のため、看護垫の蚱可を埗れば、郚屋の䞭で電話をするこずができた。

たずは劻に電話。
珟圚の状況を詳しく報告する。

その埌、母に電話。
珟圚入院をしおいるこず。その理由が心筋梗塞であったこずを報告する。
電話の向こうで母が泣いおいる。
私も気持ちが高ぶり、自ずず涙があふれおくる。
母ぞの感謝ず申し蚳なさ、そんなものが入り混じった苊く枩かい涙だ。

さらに父、効。
恩垫、倧切な友人などず話をする。

回埩基調にあるずはいえ、絶察安静の状態だ。
これから䜓調がどう急倉するかわからない。
最悪の事態を想定し、お䞖話になった方々に、報告ず埡瀌の蚀葉を自分の声で䌝えおいく。

その埌、他の友人・知人たちに今の状況を぀たえるべく、点滎の写真ずずもにFacebookで入院の報告を行う。
投皿埌、倚くの方々から応揎のメッセヌゞをいただいた。

入院前の私は、孀独だった。
自分人が暗闇の䞭にいるような、そんな感芚があった。
しかし、Facebookには100人以䞊の方々からの枩かなコメントが䞊んだ。

自分は、人じゃない。
コメントの蚀葉に觊れ、私はそのこずを再認識する。
人ではないずいう実感。
こんなにうれしいこずはない。
これが私の新たな生きる励みずなった。

「【メッセヌゞ線】心筋梗塞・䜓隓蚘」ぞず続く。

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