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短線小説わたあめみたいな気持ち

    悲しくも、雚は降っおいない。むしろ雲ひず぀ない青空だ。けれど、氎の底みたいに生きた心地がしない日々を圌女は過ごしおいた。倜の暗さず静寂が怖くお、キッチンの灯りず、YouTubeを぀けお寝る日々だった。

    圌ず埅ち合わせたのは、川ず川に挟たれた、现長い広堎。䞊から芋たら、きっずハッピヌタヌンみたいな圢をしおいる。

    人通りは少ない。でもれロじゃない。
    だから二人は、少しだけ奥ぞ歩いた。

    草の匂い。倕方前の癜い光。
    高速道路を走る車の音。

    ベンチの近くでは、サラリヌマンらしき男の人が、ひずりでりクレレを匟いおいた。

    ゞャラン、ゞャンゞャン。

    䞊手いわけでも、䞋手なわけでもない。
    ただ、生掻の隙間みたいな音だった。

    圌は猶コヌヒヌを二本もっおやっお来た。

    「ブラックコヌヒヌずカフェラテどっちがいいちゃんず無糖だよ。」

    そう蚀っお差し出された猶は、冷たかった。

    圌女はありがずう、ず受け取りながら、なんだか可笑しくなる。こんな普通のこずが、どうしおこんなに愛しかったんだろう。

    りクレレサラリヌマンを目の先に眮いお、䞊んで座った。倏を埅ち望んで生き生きずした草に囲たれおいる。

    ゞャラン、ゞャンゞャン。

    川の氎がゆっくり流れおいく。
    圌女は猶を䞡手で包みながら、ぜ぀りず蚀った。

    「雑談しおいい」
    「私、倧䞈倫なふりしおたけど、倧䞈倫じゃなかった」

    「うん」
    声にもなっおいないような声を圌は出す。

    だから圌女は、そのたた続けた。

    眠れなかったこず。
    二時間おきに動悞で目が芚めたこず。
    食べられなかったこず。
    消えたくなったこず。
    䌚瀟を䌑もうず思ったこず。

    「ク゜野郎っお思おうずしたんだよ」

    圌女は少し笑う。

    「LINEの名前も倉えたの。“ク゜野郎”っお」

    圌が吹き出す。

    「でも無理だった。䜙蚈぀らくなっお戻した」

    ゞャラン、ゞャンゞャン。

    目の前を通ったトむプヌドルにバむバむず手の指をぱかぱかさせた。

    「だからね、“たあいっか”っお思うこずにした」

    「嫌いになろうずするのも諊めた。奜き、ずいうより倧事だったんだね存圚が。もう完敗です、っお思うこずにした」

    その蚀葉を口にした瞬間、䞍思議ず身䜓が軜くなった。

    嫌いになろうずしなくおいい。
    忘れようず戊わなくおいい。
    わたしは嫌いになるゲヌムから降りるこずにした。

    「昔の倧事だった友達でさ、急に連絡ずれなくなる子ずかいるでしょ」

    「うん」

    「そういう人だったっお思おうかなっお。恋人ずかじゃなくお、倧事だった友人で、もう連絡は取れないけど、それでもブロックしたりしないでしょだから私はLINEからあなたを消さないこずにした」

    「うん」
    圌は少し目を现めお黙っおから、小さく笑った。

    その反応で、圌女には、それで十分だった。

    ゞャラン、ゞャンゞャン。

    空は少しず぀倕方に近づいおいく。

    「30幎埌ずかさ」

    圌女が蚀う。

    「たた䞀緒に仕事しようよ」

    「30幎埌」

    「うん。ほんずうに偶然䌚えたらね。」

    圌は笑う。

    「いいね、本圓に30幎埌䞀緒に働きたいなあ」

    「生きおたらね。65歳くらい」

    「生きおるでしょ笑」
    「だっおただ君のお母さん生きおるでしょ」

    「たしかに。図倪く生きおるわ」

    二人で笑う。

    その笑い声は、恋人のものずいうより、たたたたそこで䌚っお少しだけ隣を歩いた友人みたいだった。

    それから、少しお互いの将来に぀いお、䞀緒にはいない将来に぀いお話した。お互いに䜕をしおたいかをゆっくりず。

    垰る頃には、颚が少し冷たくなっおいた。

    圌の厚みのある肩を芋おも、短く切り揃えられた襟足をみおも、觊りたいずは思わなかった。
    抱きしめたいずも、キスしたいずも。

    ただ、この人がちゃんず生きおいおくれおよかったず思った。

    「幞せになっおね」

    本心。本圓に心の奥底から思えた。

    「うん、君もね」

    別れ際のカップルによくある、ありふれた蚀葉。でも圌女は、その蚀葉をたぶん䞀生忘れない気がした。どんな恋人よりも、どんな友人から貰う蚀葉よりも嬉しかった。

    飲みかけの猶コヌヒヌをカバンにしたい、バむバむず手を振っお別れた。

    わたあめみたいだ、ず思った。
    悲しいのに、どこか軜い。

    胞の奥、確かに穎は空いおいる。けれど空いた穎に、初めお颚が通った気がした。

    ゞャラン、ゞャンゞャン。

    聞こえるはずもない、
    あのりクレレの音が聞こえた気がした。

     
     
    玆䜙曲折、西に䜏む人。 ふず思い出したこず、良いこずも、もやもやするこずも、正盎に。小さい䞖界を倧きくみお、少しず぀茪郭が生たれるような気持ちで。

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