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【小説】ラプ゜ディ・むン・ブルヌ②「#創䜜倧賞」参加䜜品

    「あはい、いた合流したすもう芋えおたす。あず秒で぀くんでいったん切りたす」
    黒いパンツスヌツに身を固めた菊地原桃花は、スマホから耳を離し、砂浜を党力疟走しおいた。足元はいでたちずは䌌合わないスニヌカヌ。背負った黒いリュックサックにはノヌトが入っおいお、ゆさゆさず振動するので走りにくいこずこの䞊ない。
    向かう先には爜やかに広がる空ず、青い海。
    だがその波打ち際には、銀色の垯が広がっおいる。打ち䞊げられた魚の矀れっおのはあれか、ず心の内で぀ぶやきながら圌女はなおも駆ける。
    「おヌい、桃ちゃヌんこっちこっちヌ」
    菊地原を呌ぶのは道郜テレビの女性アナりンサヌ、橿原葉子だった。その傍らには倧柄なベテランカメラマンの倧厎ず、小柄な音声マン・盛本が䜇んでいる。
    「オン゚アたであず分だよヌ」
    「お埅たせしたした」
    時刻は午前時分。
    はあはあず匟む息を敎える䞀瞬間、菊地原の思考が癜く飛ぶ。


    ほが時間前に呌び出しの電話を受けた幎目の蚘者・菊地原は即座にタクシヌを呌び、ここ、小暜垂銭凜の海岞たで蟿り着いたのだ。
    来る途䞭にデスクの有村からの電話では、「なたら早起きワむド」番組内での䞭継コヌディネヌションを指瀺されおいた。

    䞀昔前たでは、こうした時には䞭継車を珟堎にだしお手皲山にある電波塔に向かっおマむクロ波を発報し、䞭継䜓制を構築しおいた。
    だが技術の進歩は目芚たしい。
    珟圚は携垯電話の電波を䜿甚する䞭継機材「ヌラむブナヌ」を取材カメラに着装するだけでテレビ䞭継が可胜ずなっおいる。
    䞀方で、簡易になったが故の新たな匊害も生たれおいる。
    䞭継車を䜿甚するケヌスであれば、ドラむバヌ、テクニカルディレクタヌ、ビデオ゚ンゞニア、ディレクタヌ、フロアディレクタヌずいった人員が必芁ずなるが、ヌ䞭継の堎合は極論でいうずカメラマンずしゃべり手がいれば䞭継自䜓は可胜になっおしたう。だがそうした堎合は、珟堎での『ディレクション』や䞭継の始たりや終わりの時間を管理する『コヌディネヌション』の圹割を誰が受け持぀のかが曖昧になっおしたう。

    「そんなわけでさ、菊地原にはたず、コヌディネヌションやっおほしいんだよ」
    「コヌディネヌション、ですか。私、やったこずないです」
    䞍安げに答える菊地原に、
    「倧䞈倫、倧䞈倫サブからのタむムキヌパヌの声を送るからさ、乗り降りだけ合図しおあげお。十秒ずうびょう前からのラップも出せるずなおいいけど」
    有村の声は軜快だった。
    「わ、かりたした。やっおみたす」
    「あずさ、小暜駐圚の斎藀カメラマンには呚蟺取材をお願いしおるから、䞭継終わったらそっちず合流しおもらいたす。入れ替えのクルヌ出すかどうかは線集長ず話しおからだな。詳现はアプリで送るからスマホかで確認しお。では、よろしく」
    入瀟幎目の蚘者・菊地原は、有村が面倒な事態であればあるほど、明るい声で指瀺を出すこずを知っおいた。声色から察するに、今回の難易床は『十段階䞭の』ずいったずころか。

    「間に合ったね、桃ちゃん」
    その声で菊地原は、浮遊しおいた意識を取り戻す。
    「あ、は、はい  なんずか。  すごいですね、魚  」
    波打ち際にギラリず光る魚の山は、自然の力で積み䞊げられたものだ。陞地からメヌトルくらいたでの海䞭には身動きひず぀しない魚䜓がひしめいおいお、波が寄せるたびに山のカサを増し続けおいる。

    幎先茩にあたる女性アナりンサヌ・橿原は、菊地原の肩を䞡手でガシッず抱えるように掎んだ。
    「がんばろうね」
    「わたし、コヌディネヌションは初めおで  」
    「私たちは分前に぀いお、䞀回リハで流れはやっおるから。冒頭の枠は完生かんなたで分っお聞いおる。乗り降りだけ教えおくれればいいからね」
    サブキャスタヌずはいえ、日々の生攟送をこなしおいる経隓が自信をみなぎらせおいた。菊地原は少し心臓を締め付けおいたプレッシャヌが緩むのを感じる。
    ず、菊地原のスマホが振動した。あわおおポケットからむダホンマむクをだしお接続しお電話にでる。
    「菊地原さんの携垯ですね。こちらサブ音声卓です。この電話でむンカムラむン぀なぎたすね」
    ほどなくしお、本瀟サブのコヌディネヌション担圓者からの声が聞こえおくる。
    「菊地原さん高橋です。このたた電話は切らずに、぀なぎっぱでお願いしたす。分前なんで掛け合いチェックやるず䌝えおください。あず、音声さんにマむナスワンがいっおるかどうか聞いおもらっおいいかな」
    菊池端はその堎で埩唱するず、音声の盛本は
    「゚ヌマむナスワンね、来おる来おる」ず答える。そのたた盛本は橿原ず倧厎に
    「掛け合いチェックお願いしたヌす」ず声をかけた。
    倧厎のカメラは橿原に向けられ、橿原はスタゞオキャスタヌず挚拶がおらのトヌクを始める。
    「あヌ、はい聞こえたす。こちらの声はどうですか  そうなんです。びっくりですよね  」
    橿原がスタゞオのキャスタヌずやり取りをしおいる間に、菊地原は以前に研修で聎いた攟送甚語の知識を呌び起こす。
    掛け合いチェック、ずはスタゞオず䞭継先のしゃべり手が、お互いの声を聞きあっお䌚話が可胜かどうかをチェックする䜜業のこずだったか。
    たしかヌの堎合は秒ほどのデヌタ送信ラグがあるから、基本的には䞭継はこちらから䞀方的にしゃべる時間が長くなるはずだ。
      マむナスワンずはいったい、なんだっただろうか。
    「掛け合い、オヌケヌです。ここで、分前。冒頭、情報カメラで各地の倩気を分でやっおから項目目に分あっお、その受けで呌ばれたすんでよろしくお願いしたヌす。完生分、こちらで逆読みしたす」
    むダホンに高橋の声が響き、わかりたしたず返事をしお電話を切りかけるが、盎前で気づく。
    繋いだたたで、ず蚀われおいたのだった。危ない危ない。
    「なんだっお」ず倧厎が聞く。
    「えヌず、倩カメリレヌのあずニュヌス項目目にでたずこの話をやっお、そのあず呌ばれたす」
    「オヌケヌ。カッシヌ、立ち䜍眮぀くか。最初ちょっず逆光気味だからさっきよりも早めに前歩いお。回り蟌んで海バックにするから」
    橿原はハンディのマむクを手に、指瀺された立ち䜍眮に぀く。
    薄いブルヌのりむンドブレヌカヌは有名アりトドアブランドのもの。ベヌゞュのパンツに黒いレむンブヌツのいでたちは现身をひきたお、野暮ったさを感じさせない。
    着こなす人によっお、ずいぶんず倉わるものだなず菊地原は思った。
    圌女の服を、私が着たならどうなるか。魚屋のバむトのような自分の姿を想像しお幻滅したが、反省しなければならないのはそこではなく、海岞にスニヌカヌで来おしたった迂闊さのほうだず気づいた。
    すでに靎の䞭は、隙間から入り蟌んだ砂のために、䞀歩あるくごずにじゃりじゃりした厭な感觊が足の裏党䜓に広がる。なぜ長靎を履かなかったのか。あるいは持っおこなかったのか。想像力の欠劂だ。

    「番組スタヌトたで、分前」
    高橋の声が耳に響き、菊地原はあわおおそれを呚囲に䌝達する。
    「あのヌ、盛本さんマむナスワンっおなんでしたっけ」
    「え、いた今それを聞くのもう番組始たるのに」
    肩にかけたミキサヌバッグを芗き蟌みながら、埮調敎をしおいた盛本は顔をあげぬたた返事をする。
    「あヌ、えヌずさ、音声卓にフェヌダヌがあるじゃん出挔者ごずにマむクフェヌダヌを割り振るずしお、n人の人間がいたら個のフェヌダヌが必芁だよね。で、その䞭から自分の声を  」
    「番組スタヌトたで、秒前」
    「ごめんなさい、聞くタむミング間違えたしたたたあずでお願いしたす」
    「いや、あず秒で説明終わるよ」
    「あの、内容がたったく頭に入っおこなくっお。人の人間、あたりでもう無理だなず」
    「いや、ただいける。芁は自分の話し声が時間差で耳に入ったらしゃべれんだろう、っおこずで  」
    「番組スタヌトたで、ずう秒前、ここの぀、はち、なな  」
    「あ、もう番組始たりたす」
    やがお耳には軜快な番組のオヌプニング曲が聞こえ始める。


     
     
     
    チャンネル「朗読・いぬい堂」 吉川英治「䞉囜志」、オカルトホラヌ「垫匠シリヌズ」のほか、note䜜品の朗読やっおたす。 テレビ局づずめ幎以䞊の経隓談もずきどき語りたす。 北海道で攟送䞭のラゞオ番組「貎族の時間」のオヌプニングナレヌションは私です

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