
【高田馬場②】友人【連作短編】
「おばちゃんの店でいい?」
「いや、今日はもう1人呼んでるから別の店で」
「なに?彼女出来た?」
「違うよ」
「何?相手は男?」
「いや、女性だけど…」
「僕、知ってる人?」
「面識あるよ。ちゃんと紹介したことないけど…」
「あぁ…そういうことね。了解。」
こいつは、いつもこうだ。
察しが良いというか…わかってるというか…
震災の影響で上京した時も、こいつだけが
同情もせず、俺を腫れ物みたいに扱わなかった。
おかげで、学生時代の思い出は笑い話であふれてる。
…まぁ礼を言っても「そうか?」ってはぐらかすだけだろうけど。
「駅の向こうにできたイタリアンの予約とったから、奢れよ」
頭の中に口座の残高が浮かぶ。
「ワインなら…」
「オッケー。『女性』にも奢るんだろ?それでいいよ」
「予約何時?」
「馬場に18:00。先に店行くから、駅で待ち合わせして2人で店においでよ」
そう言うとスマホから店の詳細を送ってくれた。確認すると、昔2人でよく行った居酒屋の跡地にできたイタリアンだとわかった。
「別に来なくてもいいよ。店の裏のホテルはまだつぶれてないから」
「お、お前なぁ!!!」
声が上ずった俺を見てニヤニヤしながら
「おっさんになっても恋は大切だからね」
そう言って先に外に出ていった。
「子供か。あいつは…」
… さてと、彼女に連絡しないと。とりあえずLINEを開いて
18:00 馬場駅です
の文面を送信し…いや。(早稲田口)って入れたほうがいいな。
18:00 馬場駅(早稲田口)です
素っ気無いな。仕事じゃ無いし。絵文字入れたほうがいいか?
⌚18:00馬場駅🐴(早稲田口)待ってます🙂↕️
…ヤバっ!! 我ながら怖ぇぇ。これじゃ無い。
普通でいいんだ。文面整えて…送信っと。
中3の頃の思い出がよぎったのは、
絶対に黙っておこう…
「でも、こういうの久々だなぁ」
…
「『恋は大切』か」
自分に嘘ついても時間の無駄だしな。
出たとこ勝負でいくか…
うん。忘れ物は無い。
後は…
「おばちゃんの店の前だけ回避しないと」
そう自分に言い聞かせて馬場駅に向かった。
次の話はこちら
※'26.6.7 3話投稿