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【純文学】25,200秒【832文字】

    私は家族を愛している。

    25,200秒

    私が小学校から帰って来ると、
    安いファンデーションの匂い、化粧台の前に座る母親

    TVの音が大きい。
    振り返る祖父が私に1000円とメモを渡し
    また、再放送の時代劇に視線が戻る。

    私は何するわけでもなくランドセルを置いて座る。

     ドライヤーの音が消えて
    バンッと棚の閉まる音…
    母親が仕事に向かう時間だ。

    「愛してる」そう言って扉を閉める
    カッカッカ.…廊下に響く音が遠くなっていく



    そして、祖父と2人の時間が始まる。

    祖父はいつもと同じ昔話をする。
    寒い国の人に「鼻をこすれ」と怒られた話。
    食料の買出しの時牛肉より豚肉の方が高かった話。

    部屋から出ることのできない祖父が、
    時々こちらを見ながら、遠い世界を話してくれる

    その声を今でも覚えている。

    少し外が薄暗くなる

    お腹が空いてきたので外に買出しに行く
    1人…じゃ無い。空想の友達との時間だ。

    薄暗くなった空を見上げながら
    「月が見えたよ」
    「川の音が大きいよ」
    「スーパー混んでるよ」
    いちいち気になる事を友達に話す
    返事を聞いた気がした

    スーパーでお酒とお惣菜とお菓子を買う
    お菓子を独り占めしながら少しだけ遠回りをする
    暗くなった町を歩くのは少し悪い事をしてるみたいで楽しい。

    星が綺麗な日は教えてもらった星座を探す
    しばらくして友達に別れを告げ家に帰った。

     祖父に日本酒を渡して
    母親の匂いがするおにぎりとお惣菜を晩御飯にする。
    匂いをお惣菜でごまかしながら食べてると
    祖父が話かけてくる。

    「ワシがいない方がお前は自由になるのにな…」



    …私は聞こえないフリをして祖父の部屋に居座る。
    TVの中の大人たちだけが笑ってた。


    ニュースが始まる頃にもなると、
    母親が仕事から帰ってくる。いつもってわけじゃないけど…

    酒の匂い。酸っぱい匂い。
    そしてファンデーションの匂い。

    布団の準備を始めると母親が手伝ってくれる。
    しばらくすると着替えないまま寝床につく。


    訪れた静かな時間
    私も寝るために祖父の部屋へ戻る。



    25,200秒





          ◇   ◇   ◇




     
     
    はじめまして。 音楽や本、人や言葉に触れて、残ったものを書いています。 拙いですが、何かが残ればいいかなと よろしくお願いします。

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