昨日は誕生日だった日の日記 2026/5/21

 怯えながらエレベーターに乗りこみ、7階のボタンを押して上昇しながら8階のボタンを押しなおす。8階にはブックオフのあるはずで、しかし目の前には夜のビル街が開けていて、人で満載だった。ボロっちいビルにいたはずだったのになあ。歩くと人とぶつかり、謝ると、その人は高校のころの先輩で、卒業してから連絡をとっていない。
 などという夢。結局は彼女と少し話しただけで、ブックオフもほとんど回れなかった。それでも起きてからしばらくは、なんだか幸せで起きたくなく、何度か近所にブックオフがもう一軒なかったか考えてから、やっぱり夢は夢だと不幸せになった。先輩のSNSはすべて消されていた。

 20日は誕生日、22歳になり祝われ、ありがとうと何度かLINEした。
 こんなものだ。
 10時に起きる。レポートを書く以外にやるべきことはない。たぶん就職活動をしたほうが良いのだろうけれども、なんにせよ気分よくいるためにそんなことはできずにいる。

 夢の気分は消えないままに、とてもブックオフに行きたかった。それはブックオフに行きたいのではなくって、どこかに行きたいだけなのだ。
 とにかく週に一回は通う地元のブックオフに行って、帰りになにか酒でも買って、コンビニでブリトーかなにか買えば結構な気分になれるだろう、と昼飯を食べながら思う。
 雨が降っていた。
 雨は好きだ。音は素敵で、においも素敵なのだから。
 あんまりにも素敵なものだから、外に出ようという予定は消えて、さっさと死にたくなった。
 予定は嫌いだ。

 誕生日を昨日のことのように感じる。実際、今年の誕生日は昨日だったわけだけれども、その前の誕生日も昨日のことのように思えるのだった。

 過去をなんとか漁ろうとした。
 その先輩をフルネームで検索してみたり、かつてあったチャットコミュニティのWebアーカイブの残っていないか確認してみたり、Twitterの自分への@を遡ってみたりする。
 無益。先輩はたぶん死んでおらず、チャットコミュニティは死んでいて、自分はずっと死にたそうにしていた。

 誕生日かあ、そう、誕生日だったのだ、22歳の。たった22年しか生きていない。無為に、たった22年を費やした。思い出はたくさんあるわけだが。

 はじめてタバコを吸ったときのことを覚えている。はじめて酒を飲んだときのことを覚えている。
 それでも夢に見るのは、先輩とブックオフなのだ。ときどき、ゲームセンターも見る。
 そしてまた、Minecraftの昔のことを思い出し、たぶん兄弟のことも思い出すのだった。あのころも金が欲しかった。

 将来の夢について聞かれなくなったのは、いつごろからだろう? かつてはしつこく聞かれていたと思うのだが。
 私は作家になりたいと答えていた。他に楽そうな仕事はなかった。答えている内に、本気でなろうと思いはじめた。
 楽な仕事などなさそうだった。
 私はなにもしたくなくなっている。
 将来の夢を聞かれたら、どう答えよう? いまがその将来なのだった。

 子どものままだ。
 金が欲しい。ブックオフに使うための金。

 誕生日プレゼントは2つもらった。
 1つは親から本を。1つは死んだチャットサービスでつくった、たぶん生きた友だちから、歌を。

 2人ともそのうち死ぬだろうし、そうなったとき私は2つのプレゼントを抱いて泣くのだろうか。つまり、その前に私が死んでいなければ、ということだが。

 レポートを書き終え、やるべきことはなかった。
 ただ眠れない。


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