
うちのお局事務員① ~午後2時の高級茶タイム~
それでは、第1話
どこの会社にもいると思う。
うちの「伝説のお局事務員」です。
勤続年数は誰も正確に知らない。
新入社員が入ってきては辞め、所長が代わり、組織図が変わっても、彼女だけは変わらずそこにいる。
そんな彼女の日課のひとつが、午後2時の「高級茶タイム」である。
まず誤解しないでいただきたい。
所長にお茶を出すわけではない。
来客にお茶を出すわけでもない。
ましてや、事務所のみんなのために入れるわけでもない。
自分のためだけである。
しかも、なかなか良いお茶だ。
会社の経費で購入された高級茶葉。
本人曰く、
「眠気防止だから」
とのこと。
午後2時になると、おもむろに席を立ち、丁寧にお茶を入れる。
そしてパソコンの前に戻る。
ここからが本番だ。
ズズーーーーッ。
一口飲む。
「あーーー。」
ため息なのか感想なのか分からない声を発する。
数秒パソコンを見る。
また、
ズズーーーーッ。
「あーーー。」
これを繰り返す。
一度や二度ではない。
20分くらい続く。
海外の人が見たら、日本の伝統文化の実演かと思うかもしれない。
少なくとも私は、最初の頃、
「何か悩み事でもあるのかな」
と思った。
違った。
ただ、お茶を飲んでいるだけだった。
しかも毎日。
時計を見なくても分かる。
ズズーッ。
「あーーー。」
が聞こえたら午後2時だ。
最近では事務所の標準時として活用できるのではないかと思っている。
国立天文台には申し訳ないが、うちの事務所で最も正確な時報はお局事務員のお茶タイムである。
明日もきっと午後2時になると、
ズズーーーーッ。
「あーーー。」
が始まる。
私はそれを聞きながら、
「今日も平和だな」
と思うのである。