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ダークダンス 第7話「暗躍」

    ―ヒーローと、怪人と。そして、わたしたちの、物語―



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    ダークダンス 第6話「新しいヒーロー」



    本編



    七 暗躍


    七‐① ダークダンスの活躍



    カップルの女 ボディネーション!

     
     

    と、助けを呼ぶ声。

    明かりが入ると街の一角。

    駆け付ける、ダークダンスと安岡。

     
     

    DD どうした?

    カップルの女 ボディネーション!のぶくんが……。

    DD なんだ。

     
     

    顔出しパネルに顔を突っ込んだ男が出てきて、

     
     

    カップルの男 抜けなくなっちゃって……。

    DD は?

    カップルの女 お願い、助けて!

    DD・安岡 ……。

     
     

    ダークダンス・安岡、パネルから男の顔を引き抜こうとする。

     
     

    カップルの男 痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!

    カップルの女 ああ!のぶくん!

    DD がまんしろ。

    カップルの男 痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!

    DD ダメだな。(安岡に)斬れ。

    安岡 え?……これをですか?

    DD 親衛隊発足のために徹底的にイメージアップしておくんだ。

    安岡 しかし……!この虎鉄は先祖代々受け継いだ、わたしにとって魂のような――

    DD お前の義を守るとやらの想いはそんなものか。

    安岡 これを斬るのが正義ですか!?

    DD 親衛隊ができるまでの辛抱だ!

    安岡 く……。

     
     

    安岡、頭を垂れ、虎鉄を握りしめる。

    やがて、キッとカップルの男を睨む。

     
     

    カップルの男 え……。

    安岡 やー!!

     
     

    安岡、剣をふる。

     
     

    カップルの男 ……!

     
     

    一瞬の間。

    パネルが真っ二つになる。

     
     

    カップルの男 とれたー!

    カップルの女 ああ!のぶくん!

    カップルの男 ゆうこちゃん!

     
     

    抱き合う二人。

     
     

    カップルの女 もう、心配したんだから!

    カップルの男 ごめんよ、ゆうこちゃん!

    カップルの女 ありがとうございます!

    カップルの男 ありがとうございます!

     
     

    去っていく二人。

     
     

    DD う……。

     
     

    胸の疼きを覚えるダークダンス。

     
     

    安岡 どうしました?

    DD いや、ちょっと……。

    安岡 具合が悪いんですか?

    DD いや。

    安岡 もう少し休んでおられた方がよいのでは。

    DD 大丈夫だ。親衛隊さえできてしまえば……。

     
     

    別の場所。

     
     

    トイレの男 ボディネーション!

     
     

    駆け付ける二人。

     
     

    DD どうした?

     
     

    トイレの男が出てきて、

     
     

    トイレの男 大変だ!トイレが詰まって、溢れそうなんだ!

    DD なに?

     
     

    二人、トイレを覗き、

     
     

    DD うお……。

    安岡 これは……。

    トイレの男 早くなんとかしてくれよ!溢れちゃうよ!

    DD カッポンカッポンするやつはないのか!

    トイレの男 カッポンカッポンするやつないんだよ!ああ、早く!なんか、なんか棒みたいな……。

    DD 棒?……棒……。

     
     

    周囲を見回す三人。

    ダークダンスとトイレの男の視線が虎鉄に止まる。

     
     

    DD・トイレの男 ……棒。

     
     

    安岡、二人の視線に気づき、

     
     

    安岡 ……ダメですよ!この虎鉄は先祖代々受け継いだ――

    DD 鞘だけだ!

    安岡 ここまですることないでしょう!

    DD 親衛隊のためだ!

    安岡 いくらなんでも!

    トイレの男 早く!

    DD ここを戦場だと思え!お前上官に逆らうのか?

    安岡 ……くっ。

     
     

    安岡、鞘を差し出す。

    ダークダンス、鞘を受け取り、便器の中を突っつく。

     
     

    DD ダメだ!もう少し細くないと。

     
     

    ダークダンス、安岡を見る。

     
     

    安岡 これだけは……これだけは!

     
     

    安岡、虎鉄を守るように抱きしめる。

     
     

    トイレの男 おい、ロン毛!さっさとしろよ!

    安岡 きさま……!

    DD 親衛隊ができれば、あの男ぶった切らせてやる!

    安岡 しかし……!

    DD よこせ。

     
     

    しばし見合う二人。

     
     

    安岡 せめて、わたしの手で……。

    DD 好きにしろ。

     
     

    安岡、泣きながら虎鉄を便器に突っ込む。

    水の流れる音。

     
     

    トイレの男 流れたー!

    DD よくやった!

    安岡 わたしは……わたしは……。

    トイレの男 ありがとう!

    DD う……。

     
     

    ダークダンス、胸の疼きを覚える。

    別の場所。

     
     

    孫の女 ボディネーション!

     
     

    駆け付ける二人。

     
     

    DD どうした。

    孫の女 おじいちゃんが……!!

     
     

    喉をおさえ、苦しんでいる老人が出て来る。

     
     

    老人 ぐ……う……。

    孫の女 お餅をのどに詰まらせて!

    DD 餅?

     
     

    ダークダンス、安岡を見る。

     
     

    安岡 死んじゃいますよ!

    DD 餅だけ切れ!

    安岡 できませんよ!

    老人 ぐ……げ……。

    孫の女 早くなんとかして!おじいちゃんが!あ!あ、あ、あー!!

     
     

    老人、死ぬ。

     
     

    孫の女 おじいちゃん!おじいちゃーん!

     
     

    ダークダンスを見る女。

     
     

    DD 寿命だ。

    孫の女 そんな!おじいちゃーん!

    DD 何が光影流だ。使えない。

    安岡 な……。

     
     

    安岡、老人のところへ行き、老人の上体を起こす。

     
     

    孫の女 ちょ、何するの。

    安岡 ちょっと抱えてろ。

     
     

    と、女と交代し、

     
     

    安岡 は!

     
     

    と、老人の心臓部に、拳で突きを入れる。

     
     

    老人 ぶはっ!……んぐっ。

     
     

    老人息を吹き返し、餅を飲み込む。

     
     

    孫の女 おじいちゃん!

    安岡 光影流秘伝の奥義『心刺活殺(しんしかっさつ)』。敵の心の蔵を止めることもできます。

    DD やるな……。

     
     

    また遠くから、ボディネーションを呼ぶ声。

     
     

    DD 行くぞ。

    安岡 はい。

     
     

    二人、声のする方へ。

    時間経過とともに、ところ変わって吉岡宅。

    吉岡、テーブルを拭いている。

    ダークダンス・安岡が帰って来る。

     
     

    吉岡 おかえりなさい。

    DD ああ。ただいま。(安岡に)おい、刀は玄関に置いとけ。

    安岡 あ、はい。

     
     

    虎鉄はゴミ袋に突っ込まれている。

     
     

    吉岡 あら。刀は安岡さんの魂のようなものでしょう?そばに置いておいてくださいな。

    DD ダメだ!

    吉岡 なぜです?

    DD それは……。

    安岡 あ、いいんです。今日は、玄関に。

    吉岡 そうですか?

     
     

    安岡、虎鉄を玄関に置く。

     
     

    吉岡 お疲れさま。

    DD ああ。今日はお前のためにカレー作ってくれてるんだぞ。

    安岡 え?

    吉岡 市販のルーでぱぱっと作るカレーですけど、食べてってください。

    安岡 はあ。

    DD ほら。座れ。

    吉岡 せまくてすいませんけど。どうぞ。

     
     

    ダークダンス・安岡、座る。

     
     

    吉岡 あ、カレー、もう少し時間かかるんで、お茶、入れますね。美味しいお茶、買ってあるんで。

    DD 俺が入れよう。

    安岡 あ、わたしが。

    吉岡 いいですよ。今日わたし休みだったんだから。

     
     

    吉岡、お茶を取りに行く。

     
     

    安岡 すみません。

    DD なにがだ?

    安岡 いえ、せっかく吉岡さんお休みなのに。

    DD 気にするな。二人は苦しい。

    安岡 え。

     
     

    吉岡、コップとペットボトルの「おーいお茶」を持ってくる。

     
     

    吉岡 おいしいお茶。

    安岡 ああ、ありがとうございます。

    吉岡 すいませんねぇ、ずぼらで。

    DD ずぼらじゃない。仕事で疲れてるんだ。

     
     

    と言いつつ、ダークダンス、お茶を取り、コップに注ぐ。

     
     

    吉岡 こういう言葉に甘えちゃって。

     
     

    ダークダンス、安岡・吉岡にお茶を差し出す。

     
     

    安岡 すいません。

    吉岡 ありがとうございます。

    DD う……。

    吉岡 どうしました?

    DD なんでもない。

    安岡 今日何度も。

    吉岡 やっぱりもう少し休んでた方がいいんじゃないですか?検査の結果もまだ出てないんですから。

    DD いや、これはそういうのじゃない。ありがとうって言葉を聞くと……なんかおかしくなるんだ。

    吉岡 なんですかそれ?

    DD わからん。ありがとうはなしにしてくれ。

    吉岡 なしって。あなた正義の味方なんかしてたらそれこそありがとうだらけじゃないですか。

    安岡 ええ。今日も何度も。

    DD ああ。ボディネーションにありがとうは不要だとマスコミに書かせよう。

    吉岡 何バカなこと言ってるんです。この人、冗談と本気の区別がつきづらいでしょ?

    安岡 は、まぁ。

     
     

    電話が鳴る。

     
     

    吉岡 いやな予感。

    DD 病院か?

    吉岡 大きな事故でもあったのかな。

    DD 出るな。

    吉岡 そういうわけには。

    DD 出かけてたって言えばいい。

    吉岡 ダメですよ。

     
     

    吉岡、電話に出る。

     
     

    吉岡 もしもし吉岡です。

     
     

    別スペースに、外科部長が出てくる。

     
     

    部長 あー、吉岡くん。すまないね、休みのところ。

    吉岡 いえ。

    部長 今から、来れないか。

    吉岡 今からですか?

    部長 田代氏のことなんだけどね。

    吉岡 え?

    部長 ……検査の結果が出たんだが。

    吉岡 ……はい。

    部長 君には、一刻も早く伝えておいた方がいいんじゃないかと思って。

    吉岡 ……。



    七‐② 足音



    廃墟。

    田代、一人で座り、アヤコの歌を口ずさんでいる。

    少しして、アヤコが入って来る。

     
     

    アヤコ ちょっと、その歌。なんで?

    田代 ああ。……アヤコちゃん、時々歌ってるだろ?

    アヤコ ……。

    田代 なんて歌?

    アヤコ ……しらない。

    田代 そっか……。

    アヤコ 何してたの?

    田代 ん?いや、ボーっと。

    アヤコ へー。いい身分だね。

    田代 え、あ、ごめん。

    アヤコ 冗談だよ。よく言われるんだ。グーランに。ボーっとしてるって言うと。食いもんでもなんでも探してこいって。

    田代 ああ、ごめんね。いつも。

    アヤコ おじさんはしょうがないよ。街に出たら騒ぎになっちゃうし、おじさんも具合悪くなるもんね。

    田代 うん、でも……なんとかしないと、な。

    アヤコ 大丈夫だよ。わたしが養ってあげる。

    田代 アヤコちゃんが?

    アヤコ うん。食べ物捨ててるところいっぱい知ってんだ!だからわたしがずっと養ってあげる!……あ、おじさんが、いる間は。

    田代 おじさんがいる間、か……。

    アヤコ うん。いる間……。

    田代 アヤコちゃん、なんで俺のこと助けてくれたの?

    アヤコ え。だって、おじさんのこと、誰も助けないでしょ?

    田代 誰も助けないから、助けてくれたのか。

    アヤコ うん。なんで?

    田代 ううん。すごいね。アヤコちゃんは。

    アヤコ え?

    田代 すごいよ……。

     
     

    グーラン、新聞を持って入って来る。

     
     

    グーラン ちょっと、大変だよ!

    田代 え?

    グーラン あんた、これ見た?

     
     

    田代、グーランから新聞を受け取り、記事を見る。

     
     

    田代 『ボディネーション大活躍!?便所の詰まり――

    グーラン ああ、それじゃない。こっちこっち!

     
     

    グーラン、田代の持っている新聞を奪い、別のページを開いて示す。

     
     

    田代 『ボディネーション親衛隊発足へ』?

    グーラン 正義の軍隊だってさ。ここいらの連中は、正義が盛り上がるとわたしらみたいな人間はみんな排除されるっていうんだけど……。あのボディネーションの軍隊だ。あたしはむしろ、街をめちゃくちゃにぶっ壊してくれるんじゃないかと思うんだけどねぇ!

    田代 なに喜んでるんですか!

    グーラン だって、ねぇ?

    アヤコ え、なんであいつが街ぶっ壊すの?

    グーラン ん?いろいろあんだよ!あんたちょっと黙ってな。

    アヤコ なんでよ!

    田代 こんなもの作らせちゃダメだ。なんとか止めないと。

    グーラン 止めるたってどうすんだよ。反対運動でもすんの?

    田代 奴と、戦います。

    グーラン 分が悪いねぇ。

    田代 なぜです?

    グーラン 痛い目に合わせたくらいで、あいつがやめるかね?

    田代 それは……。

    グーラン あんた、あいつを殺せんの?

    田代 ……。

    グーラン あっちはどうだろうね。

    田代 ……。

    グーラン 街の人間を盾にするかもしれないよ。

    田代 でも、このまま放っとくわけには。

    アヤコ いいじゃんほっとけば!おじさんが戦うことないよ。

    グーラン なに。あんたこの男にボディネーションやっつけて欲しくないの?

    アヤコ いいよ、あいつはわたしが大人になったらやっつけるから。おじさんは戦っちゃダメ。ね?

    グーラン よっぽどあんたのことが気に入ったみたいだね。

    田代 大丈夫だよ、アヤコちゃん。おじさん負けないよ。

    アヤコ だめだよ!おじさんはここにいないと。ね?ね?

    田代 ……わかった。戦うのはやめだ。

    アヤコ ほんと?

    田代 うん。

     
     

    田代、アヤコと目の高さを合わせ、

     
     

    田代 ただ、おじさんはどうしてもあいつと会って話さなきゃならないことがあるんだ。それは避けて通れない。

    アヤコ でも……。

    田代 今話しておかないと、街がめちゃくちゃになってしまうかもしれないんだ。

    アヤコ いいじゃん、街なんかどうなったって。

    田代 ここだって、めちゃくちゃにされちゃうかもしれないよ。

    アヤコ ここも?

    田代 そしたら、おじさんもボディネーションだけじゃなくて、軍隊とも戦わなくちゃいけなくなるかもしれない。そうなる前に、話をしておきたいんだ。

    アヤコ うん……。

    田代 大丈夫だって!危なくなったら、すぐ逃げる!な!

    アヤコ 約束?

     
     

    田代、よぎりそうになる迷いをすぐに打ち消し、

     
     

    田代 ……うん、約束する!

    アヤコ わかった!

    グーラン だけどあいつとた――話すったって、今のあんたじゃ、あいつに近づくこともできないんじゃない?

    田代 それなんですよね。どうしましょう?

    グーラン んー……。

    アヤコ そんなの簡単じゃん。

    田代 え?

    アヤコ 今まで通りやればいいじゃん。

    田代 今まで通り?

    アヤコ おじさんが街でおもいっきり暴れんの。

    田代 え、俺が!?

    アヤコ うん。

    グーラン そうか!怪人ダークダンスが街でおもいっきり暴れたら、ボディネーションは現れないわけにはいかないね!

    田代 俺が暴れる……?

    グーラン はっはっは!こりゃおもしろいねぇ!やんなよあんた!街で暴れまくってやんな!

    田代 ……確かに。やつが来る前に街の人たちを遠ざけておけば、奴に盾に使われる心配もない。

    グーラン いいよいいよ!最高だよ!あたしも行っていい?

    田代 え?

    アヤコ わたしも行く!

    田代 ダメですよ!

    グーラン こんなおもしろいもん見逃せないよ!それにいちど街でおもいっきり暴れてみたかったんだよ!

    アヤコ やりたい!やりたい!

    田代 ダメです!危険ですよ。

    グーラン 大丈夫だよ!あたしも怪人のふりするからさ。そしたら街の連中、逃げ回るばっかりで、誰もあたしに手ぇ出しゃしないよ。

    田代 警察に撃たれますよ!

    グーラン 警察が来る頃にゃ怪人やめて、街の人間のふりしてその辺に隠れてるからさ!

    アヤコ わたしも行く!

    グーラン それまでに金目のもん徹底的に集めんだよ!

    アヤコ うん!

     
     

    盛り上がる、グーランとアヤコ。

     
     

    田代 ダメです!ダメダメ。絶対にダメです。ここにいてください!

    グーラン ……なんだ、つまんないねぇ。

    田代 アヤコちゃんもだよ!ここで待っててな。

    アヤコ つまんないねぇ。

    田代 約束ですよ。

    二人 ……。

    田代 約束。

    二人 ……。

     
     

    アヤコ・グーラン、田代から目をそらし、部屋をうろうろする。

     
     

    田代 返事!

    二人 ……。

    田代 返事!!

     
     

    二人、田代から離れていく。

    照明変化し、

    音楽。

    舞台は街へ。



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    尾米タケル之一座 作・演出。コントやら。舞台やら。 尾米タケル之一座HP https://okometakeru.jp/ 脚本・演出などお仕事のご相談はこちらまで→okometakeru@yahoo.co.jp

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