
ダークダンス 第10話「ダークダンス、再び」
―ヒーローと、怪人と。そして、わたしたちの、物語―
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本編
十 ダークダンス、再び
街のはずれにはバリケードが築かれている。
犯罪者やその身内、
都市から追いやられた者、
住む場所を失った者など、
闇の世界の住人たちが、
その外で暮らしている。
ここは街にほど近いバリケードの外側。
三人の街の男女が、闇の住人の女を取り囲んでいる。
男はバットを持っている。
女2は闇の住人から奪ったカバンを持っている。
女1 おとなしくしろ!
男 フェンス越えりゃ俺たちがあきらめるとでも思ったのかよ。
闇の住人 返せよ!
男 取り調べだよ。取り調べ。
カバンの中身をひっくり返す女2。
闇の住人 やめろ……!!
女2 おい、お前IDは。
闇の住人 ちょっと家に置いて来て――
女1 ウソつくんじゃねーよ!
女1、闇の住人を殴る。
男 お前IDもねーくせに街うろついてたのかよ。犯罪者が。
闇の住人 犯罪なんか――
女1 存在が罪なんだよ、お前らは!
男 よし、じゃあシンタイ検査だ、シンタイ検査。
女2、闇の住人の持ち物を物色しながら、
女2 あっはっは!いいねー。
闇の住人 ……。
男と女1、闇の住人を捕まえ、地面に倒す。
男 服の中になんか隠し持ってるかもしんないからなぁ。
女1 そうそう、凶器とか。薬物とか。
女2 ほら!さっさと脱げよ。
闇の住人 やめろ!離せ……!
と、やっているところに、
アヤコ いい度胸してるねぇ、あんたら。
荷物を携えたアヤコが登場。
男 なんだお前。
アヤコ たった三人でバリケード越えて来るなんて。ここらで死んでも誰もあんたらの死体なんて拾ってくれないよ。
女1 は?誰が死ぬって?
アヤコ どうせ口で言ってもわかんないんだろ。ほら。
アヤコ、かかって来いの仕草。
女1 殺していいよなこいつ?
男 おお、やれやれ!
女1 ……おらぁ!
女1、アヤコに殴り掛かる。
アヤコ、攻撃をかわすとともに、女1の腹に膝を突き立て、すかさず顔面に一撃を加える。
女1 っぐ!!あ……。
のたうち回る女1。
男 てめぇ。
男、アヤコと対峙する。
女2 やっちまえ!
男、バットを振り回す。
アヤコ、軽くかわし、バットを奪い取る。
そのまま、男の鼻先をはじく。
男 うう……。
アヤコ、男が顔面を押さえているところを蹴り飛ばす。
男 ぐあぁっ!
女2 シュウヤ!!
アヤコ こんなもん振り回すからには、それなりの覚悟はできるんだろうな?
アヤコ、女2にバットを突きつける。
女2 ボ、ボディネーショ~ン!!
間。
アヤコ 来るわけないだろ。ここらにはカメラないんだよ?それに、もし声が届いたとしても、あいつが来るまであんたら生きてられるかな?
女2 ああ……。
女2、逃げる。
男 お、おい!
それを見て男も逃げる。
アヤコ こいつ連れてけ!
男、引き返して来て、女1を連れて逃げる。
アヤコ、闇の住人のカバンと、散らかった荷物を拾う。
闇の住人 ありがとうございます。
アヤコ いいよ。街のやつらが嫌いなだけだから。家どっち?
闇の住人 え。あっちです。橋の方。
アヤコ 橋……か。おんなじ方向だ。一緒にいこっか。
闇の住人 はい。
アヤコと闇の住人、はけていく。
照明変化。
田代とアヤコの住む家。
田代、ヤブと酒を飲んでいる。
ヤブ そしたらあいつらしっぽ巻いて逃げてったよ!
田代 情けねぇやつらだなぁ。
ヤブ 武器全部捨てて必死でバリケード登ってよ!みんなで石投げまくってやったよ!
田代 引きずり降ろしてぶっ殺してやりゃよかったんだ。
ヤブ ほんとだなぁ、なにが自警団だよなぁ。いやー、それにしてもアヤコちゃんはつえーなぁ。
田代 まだまだだよあんなの。にしてもおっせーなぁ。なにやってんだあいつ。
田代、酒を注ごうとし、壺を傾けるが、中身がない。
田代 あれ。そんなに飲んだか?
ヤブ え、もうしまい?
田代 んだよー。調子出てきたとこなのによぉー。
田代、ヤブのぐい呑みを見る。
気づいたヤブ、慌てて飲もうとする。
田代、その手を押さえる。
ヤブ これは俺のだ。
田代 もともと俺のだろ。
ヤブ アヤコちゃんが盗ってきたんだろ。
田代 うるせぇ、よこせ!
ヤブ やめろ、こぼれんだろ!
二人、酒の奪い合いをしていると。
荷物を携えたアヤコ、入って来て、
アヤコ 昼間っからおっさんふたりで何やってんだよ。
ヤブ あ、アヤコちゃん。
ヤブが気を取られた隙に、酒を飲もうとする田代。
ヤブ あ。
再び奪い合いに。
アヤコ やめなよおっさん!みっともない。
田代 みっともよさで酔えるか!
アヤコ、袋から酒を出し、
アヤコ ほら。
田代 おお!!
田代、アヤコのところへ行き、酒に手を伸ばす。
アヤコ、ひょいと酒を引き、
アヤコ 畑は。
田代 え。
アヤコ 畑。
田代 ちょっと、体調がよくなくてな。それで、ヤブに診てもらってたんだ。
アヤコ へー。
田代 あしたは、ちゃんと行くから。
アヤコ こっちは体張ってんだからね。
と、アヤコ、田代の前に酒を置く。
田代 アヤコさまさま!
田代、アヤコを拝む。
田代 今日はなにぶんどってきたんだ?
袋の中身を物色する田代。
ヤブ いいなー。俺もアヤコちゃんみたいな娘か嫁さん欲しいなー。
アヤコ なに言ってんの。
アヤコ、缶詰を手にした田代に、
アヤコ それはグーランのとこに持ってくやつだよ。
ヤブ でもアヤコちゃん気ぃ付けてな。
アヤコ 大丈夫だよ。警察も自警団ものろいんだから。カメラの位置も全部頭に入ってるし。捕まんないよ。
ヤブ だけど最近、新しいボディネーションが出て来たんだろ?
アヤコ、ヤブの言葉を遮るように、
アヤコ あー、楽勝楽勝そんなの。
田代 ん?なんだそれ?
アヤコ なんでもないなんでもない!フェンスの中で正義のヒーローごっこしてる雑魚がいるだけ!ここで静かに暮らしてる限り、あたしらにはなんの関係もない。
田代 ふざけやがって。なにが正義のヒーローだ。だったらあのフェンスなんとかしろってんだ。
アヤコ いいじゃんフェンスあった方が。あたしはこっちの暮らしの方が好き。畑耕して。いるもんがあれば、向こうから拝借してくりゃいいんだから。
グーラン、ドア口にやって来て、
グーラン いた!
グーラン、後ろを振り返って、
グーラン シマ!いたよ!!ヤブ!大変だよ。シマんとこの子が!
赤子を抱いたシマ、入って来る。
シマ 朝から下痢しててさっきミルク吐いて。熱も39℃越えてて!
ヤブ、赤子にふれ、
ヤブ 熱はいつから?
シマ 昨日から。
ヤブ、カバンから聴診器を取り、赤子の腹部にあてつつ、
ヤブ 食欲は?
シマ ない。
ヤブ、聴診器の音に耳を傾ける。
ヤブ ……ゲロに黄色いもん混じってたか?
シマ 混じってた。
ヤブ すぐに病院に連れてかないとダメだ。
グーラン 何言ってんだ医者はあんただろ!
ヤブ こんなところで手術できるか。街の病院じゃないとダメだ。お前偽造ID持ってるか?
シマ あるわけないだろそんなの!
アヤコ すぐに作らせよう。
ヤブ そんな時間ねぇ。
グーラン 街の奴から奪ったらどうだ。赤ん坊連れてる女なんかゴロゴロいるだろ?
アヤコ 今IDは全部顔写真がついてんだよ。
グーラン じゃあどうするんだよ!?
田代、部屋の端に座って、ただ黙って酒を飲んでいる。
シマ お願いするよ。……お願いする。あいつらだって人間だ、わかってくれるよね?必死にお願いしたら、診てくれるよね?医者って人の命救いたいって人たちだろ?目の前に消えそうな命があったら、診てくれるよね?
皆、うなづくことができない。
シマ 規則とか決まりとかより、人の命の方が大事だって言ってくれるよね?
一同 ……。
シマ ……あたしが……どこの人間かなんてこの子には関係ないじゃない!!
赤子を抱き、泣きくずれるシマ。
一同 ……。
田代、ぐい呑みを置き、
田代 シマ。預かっていいか。その子。
シマ ……。
田代 病院に連れて行く。
グーラン どうする気だ。
田代 力ずくだ。医者脅してでも手術させる。
アヤコ そうするしかないね。シマ?
シマ ありがとう!あたしも行く!
アヤコ シマはここにいて。
シマ でも!
アヤコ 足手まといなの。気持ちはわかるけど。ね?
シマ うう……お願いします……。
シマ、赤子をアヤコに託す。
アヤコ ありがとう、任せてくれて。
シマ ……ありがとう!ありがとう!
アヤコ かならず連れてかえる。約束する。
田代 ありがとう……か。よし、行くか。
田代・アヤコ外へ出て行く。
グーラン ちょっと!どこの病院行くんだ!
アヤコの声 ミドリ病院だよ!
溶暗。
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