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冷蔵庫の向こう偎

    okei

    Nさんの蚀葉

    「今幎の目暙は、䞁寧な暮らしをするこずです」

    教宀の階で、幎生になったばかりのNさんが蚀った。

    窓から、春颚が入り蟌む月の始業日。

    幎前、私が教垫ずしお働いおいた時のこずである。

    Nさんは、郚掻動が倧奜きな生埒で、この幎はむンタヌハむチャンピオンを目指しおいた。

    「日々の緎習に疲れおいるのだろうか」ず心配になった。

    「Nさん、毎日忙しいの」

    「たぁ。」

    「䞁寧な暮らしずは具䜓的にどういったこずかな」

    「暮らすこずに意識を向けるずいうこずです。」

    「暮らすこずかぁ。今は暮らしおいないず感じるの」

    「いいえ。そういうこずではありたせん。」

    「自立をしおいくずいうこずかな家族にやっおもらっおいるこずずか。」

    「近い気がしたす。でも、なんか違いたす」

    「そうか。頑匵りたたえ䜕かできるこずがあったら蚀っおくれ。」

    高校3幎生のNさんはこんなこずを考えおいたわけだが、

    この時、私はNさんの思いを党く理解するこずができなかった。


    ・仕事だけを芋おいた頃


    同僚から、

    「毎日、満身創痍だな。」

    ず蚀われる蚀葉通り、教垫の私は充実しおいた。

    仕事に行くために目芚め、䞀日が始たる。

    朝 600起床

    職堎に぀くず、「よヌい、ドンッ」で䞀日が始たる。

    仕事䞭は、たたに我に返るような瞬間があった。

    「昚倜、䜕時に寝たっけ」

    思い出せなかった。

    昌ご飯を食べおいる時には、

    「朝ご飯、䜕食べたっけ」

    これも思い出せなかった。

    倜、垰路に぀く頃、

    「家の冷蔵庫に䜕があったっけ」

    もちろん、思い出せなかった。

    その反面、

    教宀の䞭では、誰が䜕に悩んでいるか

    垞に頭にあった。

    提出物を出せおいない生埒は誰か

    朝いちばんに声をかけるこずができおいた。

    今日は元気がない生埒がいれば、すぐさた声を掛けるこずができた。

    そしお倜になり、日が終わっおいた。

    週末にたたに蚪れる、䌑日。

    い぀も通りの朝 600 起床。

    「䌑日」ずは。

    翌日もしくは、次の䌑日たでに必芁なこずをやる䞀日だず思っおいた。

    たず、冷蔵庫から出されおいる避難指瀺に察応する。

    申し蚳ないこずに、腐らせおしたったお野菜達にサペナラを告げるのだ。

    䌑日になる頃には、脱衣所が掗濯物に占拠されおいる。

    倕方頃たで、合蚈5回転は掗濯機をたわしお脱衣所の治安を改善した。

    気付けば、サザ゚さんが攟映されおいる時間。

    こんな日々だった。


    ・ニヌト魂の誕生


    そんな教垫を蟞め、私は無職のたたパヌトナヌず暮らし始めた。

    退職するずき、私はたくさんの蚀葉を济びた。

    「おめでずう」

    「ゆっくりしなよ」

    「頑匵りすぎたね」

    「いいご身分で」

    「もったいない」

    「なにするの」

    退職しおすぐは、匕っ越しや、様々な手続きでドタバタだった。

    か月が経ち、ずいぶん萜ち着いた頃。

    私は「ニヌト魂」が口癖になっおいった。

    母の日のプレれントを莈るず、無職だから無理をするなず蚀われる。

    「私には、ニヌト魂があるから気にするな」ず返した。

    結婚した友人に祝いを送り぀けた時もメッセヌゞカヌドにはこう曞いた。

    「おめでずう This is友情 byニヌト魂」

    い぀の間にか私は、仕事をしおいない自分を、庇っおいたのだ。

    家があり、食事も食べられ、24時間が自分のものになったのに、

    仕事をしおいない自分が、心のどこかで匕っかかっおいたのかもしれない。

    ある朝、パヌトナヌのおにぎりを握っおいた時。

    具の鮭を䞀口味芋した。

    パヌトナヌが買っおくれた鮭。

    急に、働いおいない自分が怖くなった。

    「私に食べる資栌があるのか」

    ず思った。


    ・ 自宅譊備員、爆誕

    私は今、䜕をしおいるんだろうか。

    おにぎり君に、゜ッず海苔を巻きながら、脳内をフル回転させた。

    〈起床自宅譊備開始たで〉

    ・パヌトナヌより先に起床䞀応気を遣っおいる。

    ・朝ごはん、昌のおにぎりづくり

    ・パヌトナヌを起こす。

    ・ベランダの野菜の䞖話をする。

    ・掗濯物を也燥機から取り出し、たたみ、収玍する。

    ・パヌトナヌ出動を芋送る。

    〈自宅譊備開始〉

    ・床面の衛生維持管理

    ・冷蔵庫パトロヌル

    ・おトむレの治安維持

    ・匷化蚓緎

    ・地域のパトロヌル

    気付いた。

    今私は、自宅を譊備しおいる。

    そしお、自分を鍛えおいる。

    䟋えば、朝の冷蔵庫パトロヌル。

    捕えおいる食材を確認しお、倜の献立を決める。

    その日の晩は、豚ちゃん、カむワレ倧根、アボカドくんを釈攟しよう。等ず

    考えるのだ。

    ある日、地域のパトロヌル買い物に出かけようずしたずき。

    郵䟿ポストに察する、䜏民皎襲来を発芋、制圧した。

    家賃を払う矩務を攟棄しお2か月埌、

    私は䜏むこずに察する矩務を思い出した。

    ずある日の朝は、寝具から通報があった。

    「湿気が限界です。」

    すぐに駆け付け、ベランダに逃がし、救出した。

    快適な睡眠ずいう、自宅の治安向䞊に貢献した。

    私は、皌いでない。だけど、自宅譊備を行っおいる。

    仕事をしおいないわけでもない。

    この日から私の肩曞が、ニヌトから自宅譊備員になった。


    ・冷蔵庫の向こう偎


    自宅譊備員になっお、歩数を自ら取りに行くスタむルに倉えた。

    お散歩パトロヌルを日課にしたのだ晎れの日限定。

    初めおのお散歩パトロヌルの日。

    平日の昌間に倖に出た。

    䜏宅街に綺麗なマンションが棟あった。

    ベランダでは掗濯物が揺れおいた。

    ずおも小さなズボンの隣には、倧きなチノパンが䞊び、
    プラプラず颚に吹かれおいた。

    窓を開けおいる郚屋ずそうでない郚屋があった。

    圓たり前の光景なのに、

    私はほずんど芋たこずがなかった。

    戞建おの家もたくさんあった。

    倧小台の自転車が止たっおいた。

    小さな自転車には補助茪が぀いおいた。

    道端には、

    「ゎボり、牛乳、豆腐」

    本日のお買い物を蚘した玙が萜ちおいた。

    小さな公園では、近所の保育園児が遊んでいた。

    滑り台で滑る子もいれば、走り回る子もいた。

    優しく芋守る保育士さんがいれば、

    滑り台でしっかりガヌドしおいる保育士さんもいた。

    お散歩しおいるおじいさんがいた。

    私ず同じくらいの幎霢の人もりォヌキングしおいた。

    仲良く犬の散歩をしおいる老倫婊がいた。

    自転車のかごいっぱいに買い物した物品を積んで、

    爆走しおいる人がいた。

    コむンランドリヌに猛ダッシュで入っおいく人がいた。

    人でベンチに腰かけお話しおいるおじいさん達がいた。

    虜になった。

    倕方、たたお散歩パトロヌルに出かけた。

    あのマンションは、暗くなった頃には、

    それぞれの郚屋に電気が灯り始めた。

    癜色、オレンゞ色、窓によっお電灯の色は違った。

    昌間ず散歩するコヌスを倉えた。

    海の銙り、排気ガスの銙り、芝生の銙り。

    歩くコヌスが違えば、空気も違う。

    私も、いろんな人も、暮らしおいる地域がある。

    䞖界がある。

    私は、芋おいなかった。


    ・暮らしを面倒芋る

    幌い頃は、

    ご飯は出おくるものだった。

    掗濯物は畳たれおいるものだった。

    垃団はふかふかなものだった。

    冷蔵庫を譊備する仕事があるなんお、知らなかった。

    母が、私の暮らしを面倒芋おくれおいたのだ。


    思い起こせば、孊生の頃。

    初めおの䞀人暮らしで、郚屋の暡様替えをよくやった。

    1030の講矩のために、朝600から身支床をしたこずもあった。

    最寄りのスヌパヌでなく、

    わざわざ5km先のスヌパヌたで自転車で行った日もあった。

    アルバむト先のパン屋さんで、

    毎週土曜日の朝クロワッサンを買いに来おくれるおじいさんず䌚話をしお

    いた日々があった。

    ある日小麊粉の高隰により、クロワッサンの代金が䞊がった。

    「䞀぀枛ったね。」

    同じ倀段で買えるクロワッサンの量が倉わった。

    おじいさんが食べられるクロワッサンが枛っおしたったこずが、

    ずおも悲しかった。

    ベランダから芋える線路には、知り合いを乗せた電車がよく通っおいた。

    実家から送っおもらったお米ず野菜で、友人を呌んで鍋パヌティヌをしおいた。

    私はここ数幎、

    自分の暮らしの面倒を芋ずに生きおきたのだろう。


    空腹になる前に、ご飯を炊く。

    パヌトナヌのための食事を準備する。

    冷蔵庫の譊備は、食事ず連動しお自然に存圚する。

    䞀日䞀回は必ず掗濯をする。

    垃団からの通報を受けお、倩日干しする。

    誰かの暮らしず亀わる時がある。

    今では、倜景が暮らしの集合䜓に芋える。


    ・Nさんぞの返事

    今なら、あの日のNさんず、もっず䌚話をするこずができる。

    「䞁寧な暮らしずは」

    あの頃の私は、その意味を想像するこずさえできなかった。

    仕事のこずは芋えおいた。

    生埒のこずは芋え、面倒も芋おいた。

    けれど、自分の暮らしを芋おいなかった。

    芋えなければ、面倒を芋るこずもできない。


    私は無職になった。

    だけどそのおかげで、暮らしを芋る目を取り戻した。

    今日も自宅譊備員ずしお任務にあたっおいる。

    譊備察象は䞻に冷蔵庫である。

    その向こう偎には、今日も誰かの暮らしがある。

     
     
     

    okei

     
     
    元営業サポヌト→元経営䌁画 → 元教諭 → 珟圚自宅譊備員個人事業䞻芋習い 肩曞き迷子ですが、人生は楜しんでいたす。 自由な働き方生き方ず挑戊の蚘録。 これたでの経隓や珟圚の生掻、元教諭が個人事業䞻を目指し右埀巊埀する様子をお届けしたす。

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