
『青い果実が熟れるとき』 第12章:果実のゆくえ(終)
第12章:果実のゆくえ
ホテルの最上階、夜の帳が下りた一室は、今や山下天音という美しき蜘蛛が支配する絶対の領域と化していた。
天音が完璧に先回りし、岡田が求める「極上の癒やし」を提供し続けていた情報のソース――。
それは、どれだけ緻密に勉強を重ねたとしても、ただの大学生が辿り着けるような、ネットの検索データなどでは決してなかった。
彼女は、岡田の知らない裏側で、彼の周囲にいる男たちへと次々に触手を伸ばしていたのだ。
岡田が最も信頼を置いている古くからの友人、彼の会社の機密を握る経営幹部、さらに、最大のライバルであるあの有能な秘書の、私生活に不満を抱えていた夫にまで――。
天音は、二十代前半という瑞々しく弾けるような「若さ」と、男を一度で虜にする「極上の躰」を最大の武器として、彼らを次々と甘い罠に嵌めていった。
あの西麻布のベッドの上で見知らぬ男に蹂躙され、岡田の腕の中で完全に淫らに開発されたその肉体は、いつしか男たちを狂わせる極上の毒を帯びていた。
『岡田はね、次のプロジェクトで…』
『あいつ、実はこういう女が好みで…』
男たちがふとした瞬間に漏らす、岡田の公私すべての秘密。
天音は複数の男たちのベッドを渡り歩き、その肉体を通じて、岡田のすべてを吸い上げていた。
男たちの欲望で編み上げた巨大で緻密な蜘蛛の巣。その中心に、何も知らない岡田が自ら囚われにやってくるのだ。
多くの秘密を握られた岡田は、すでに会社経営の意思決定すら、天音のお好み通りに動かされる操り人形へと成り下がっていた。
彼の築き上げた地位、正式な妻さえも立ち入れない莫大な財産のすべてが、実質的に天音の掌の上で転がされているに等しかった。
◇
「ん……っ、あ、あぁ…」
月明かりだけが照らすベッドの上で、シーツが激しく波打つ。
天音はベッドに四つん這いにされ、背後から岡田の巨大な質量によって、激しく肉体を突き上げられていた。突かれるたびに、天音の大きめのお尻の肉がたぷたぷと揺れ、男の欲情をこれでもかと煽り立てる。
「天音、やっぱり君が…一番落ち着くよ」
岡田は完全に理性を失い、天音の引き締まった腰を掴んで、何度も何度も最奥の子宮口へと熱量を叩きつけていた。
テレビで華やかに微笑む女子アナも、完璧に仕事をこなす秘書も、今の岡田の頭の中には存在しない。
彼の世界は今、目の前でたぷたぷと波打つ天音の肉体と、吸い付くような極上の器の快感だけで満たされていた。
天音は自ら激しく腰を揺らし、岡田の気持ちいいツボを正確に抉りながら、心の中で冷酷に嘲笑っていた。
(そうよ、岡田さん……もっと私に溺れて。あなたの友人たちも、部下たちも、みんな私の中でこうやって声を上げて、あなたの秘密を全部差し出してくれたわ……)
「あ、いく……! 天音、お前だけだ…っ!」
岡田が叫び、天音の最奥へドクドクと濃厚な精液を何度もぶちまける。
天音はその圧倒的な熱量に震え、自身も深い絶頂に達しながら、自らの上に倒れ込んでくる岡田の身体を優しく抱きとめた。
すべてを絞り取られ、満足そうに天音の胸元で深い眠りに落ちていく岡田。有能な経営者として世間を転がしているつもりの男が、実は裏で、自分を全能の神だと信じ込ませるための蜘蛛の巣に、身動きが取れないほど絡め取られている。
天音は下腹部からドロリと溢れ出る彼の粘度を感じながら、まだ平らな自分の腹部にそっと手を当てた。
彼の地位、彼の財産。そして、今このお腹の中に確実に宿りつつある、彼のすべてを引き継ぐ後継者。
天音は岡田を完全に支配するだけでなく、その優秀な遺伝子までも自らの胎内に宿し、文字通り彼のすべてを我が物にしようとしていた。
眠る岡田の髪を愛おしそうに撫でながら、天音は窓の外に広がる東京の夜景を見つめ、静かに、昏(くら)い微笑みを浮かべている。
――果たして、彼女のことを「悪女」などと呼べるのだろうか。
男を立て、望む癒やしを与え、その愛を一身に受け止めながら、泥を啜ってでも欲しいものをすべて毟り取る。
最初から男を手のひらで転がし、その血肉を吸い尽くして未来を繋ぐ――。
女はみんな、こんなものかもしれない。
(終わり)