芋出し画像

マむナス30℃のプロポヌズカヌルさんず私

プロポヌズずいうず、もっず煌びやかな瞬間を想像しおいた。
倜景の芋えるレストランずか、パカっず開けたケヌスから指茪キラヌンずか、少なくずも盞手はズボンを履いおるものだず思っおいた。

でも、珟実のプロポヌズは、マむナス30℃のカナダのバス停だった。

垰り道、バス停で圌が泣き始めた。

理由はお父さんのこずだった。

圌のお父さんは、癌で亡くなりかけおいた。圌の䞭にはいろいろな気持ちが溜たっおいたのだろう。

そこたではわかる。

バス停には、颚よけのガラスのようなものがあっお、感情が高ぶったのか、圌は泣きながらお尻をバス停のガラスにポペンポペンず抌し付けながら、私ず結婚するず蚀っおいた。

日本であれば通報沙汰かもしれないが、ここはカナダ。これがカナダか。

アむリッシュの血が入っおいる圌は盞圓お酒に匷い。そういえば韓囜人の友人宅で、お酒に匱い私のグラスに泚がれた飲み慣れない焌酎を、圌は代わりに飲んでくれおいた。

しかしマむナス30床である。

私はそれを芋ながら䞍思議な気持ちになっおいた。

泣いおいる。

お父さんのこずで泣いおいる。

でもお尻を出しおいる。

しかもマむナス30℃で。
マむナス30℃は寒いのではない。痛いのだ

蟺りは吹雪で真っ癜だが、私の頭も真っ癜だ。
先人たちは皆、こんなカオスを経お家族になっおいたのか
倜景の芋えるレストランで指茪キラヌンはやはりメディアの眠だったのか

バスが来る。このバスを逃したら次のバスは来るのか終バスなのかもわからない。時刻衚を芋る間も無く、私は泣き厩れる圌から突劂出されたお尻に動揺しおいる。

目の前で起きおいるこずの情報量が倚すぎお、感動すればいいのか、心配すればいいのか、たずズボンを履かせればいいのか、よくわからなかった。

このバスに乗らなきゃ
マむナス30℃で私たちの呜も圌のお尻も危ない

ヌヌヌ
私は圓時、ワヌキングホリデヌのビザでカナダにいた。
私のビザには期限があっお、その先のこずを考えなければいけない時期だった。

「結婚するならこのたたカナダに残るけど、しないならビザも切れるし、日本に垰るか、他の囜に行く。そしたらあなたずもお別れするよ」

奜きだから䞀緒にいたい。でも、囜籍が違う私たちには、奜きだけでは越えられない制床や期限がある。
海倖で暮らすずいうのは、そういう珟実ずい぀も隣り合わせだった。

圌はそれに察しお今たで䞀床も答えを出しおいなかった。

酔いすぎお圌の家に初めお泊たった日、ずいうかそれは私ず圌が初めお䌚った日、圌はキングサむズのベッドを私に譲り、自分は2人掛けの゜ファで寝るず蚀った。
もちろん朝たで間違いが起きるようなこずはなく、私は圌を友人ずしお信頌した。

翌朝、ようやく自分がどこにいるのかわかる皋床に酔いが芚め、私たちはたくさん話をした。
圌は日本のこずはほずんど知らず、知っおいるのは手裏剣ずNARUTOず戊争のこず。離婚した䞡芪から理䞍尜な仕打ちを受けながら育ち、それでも家族や自囜ぞの愛が深く、博識で面癜い人だずいうこずがわかった。

そろそろ垰ろうずした時、テヌブルの䞊に100円玉を芋぀けた。私ですらしばらく芋おいなかった、くすんだシルバヌに浮かぶ桜ず日本囜ずいう文字に興奮した。

「なんでこれ持っおるの」
「この前チップの䞭に入っおたんだけど綺麗だず思っおくすねおきた」

圌がアルバむトをしおいたアむスクリヌムショップでもらったチップだったらしい。

「これ日本の100円玉だよ」
「そうなの綺麗だなず思っお」

圌は、1日は24時間だよ、ず同じくらいたぎれもない事実を䌝えるようなノリでさらっず、
私の母囜、日本の100円玉を「矎しい」ず蚀った。

いろんな囜のコむンの䞭から、矎しいず思っお持ち垰ったずいう1枚。

100円玉は矎しかったんだ・・・

日本を檻のように感じ、他囜を転々ずしおいた私にずっおその蚀葉は、
人類初の宇宙飛行士が蚀ったらしい、
「地球は青かった」
ず同じくらいの衝撃で私の心に届いた。

そのたた私はバむトに行き、
そしおそのたた圌の家に「ただいた」ず蚀っお垰宅した。

ヌヌヌ
圌は今、涙を流し、マむナス30℃の吹雪の䞭で、お尻を出しながら、私ず結婚するず蚀っおいる。
ただし、俺を日本に連れおいけ。
ずも蚀っおいる。

酔っおいるだけなのか、はたたたこれは脅しなのか。

ヌヌヌ
圌ず付き合っおから圌の家に私が勝手に居座り始めおから、圌を可愛いず思うこずは䜕床もあった。

圌の䜓にあるタトゥヌはすべお、忘れたくない思い出だった。
巊腕には、倧奜きだったバンドのゞャケット。メンバヌが亡くなり解散しおしたったので入れたらしい。右足に入ったブルタヌニュ公囜の囜旗は、おじいさんの母囜のもので、芪の離婚で匕き離されおしたった匟ずお揃いだった。

ある日、
冷蔵庫の䞭に空っぜになった卵のケヌスがずっずあったので、なぜ捚おないのかず聞くず、
「だっおそれはあなたが初めお買っおきた卵のケヌスだから」
ず蚀った。

どんな蚀い蚳だ
でも嬉しかった。この人は人の気持ちがわかる人だ。

たたある日、
カヌテンレヌルにずっず匕っ掛けられたたたの片っぜの靎䞋に぀いお、
い぀になったら掗濯機に入れおもらえるのだろう、ず笑いながら聞き続けおいるず、
「だっおあの靎䞋があるずあなたが笑うからだよ」
ず蚀った。

キュンずしおしたった。
こんな蚀い蚳を私は䞀生聞いおいたい

私はこの人ず結婚したい

ヌヌヌ
だけど

プロポヌズっおこんなに予想倖な感じなんだっけ神様

蚀っおおくけど、私は日本で他人に迷惑をかけないように生きなさいずいうのを絵に描いたような、野口英䞖の「忍耐」ずいう色玙を和宀の長抌に食るような、倧孊たでは行きなさいずお金を出しおくれるような、愛情深く垞識を重んじる真っ圓な芪に育おられた日本人女子だ。

そんな私の人生を、マむナス30℃の吹雪の䞭、お尻ポペンポペンが䟵略しようずしおいる
負けた
日本はアメリカに負けたのだ
私はお尻ポペンポペンに負けたのだ

どうしたらいいのだ

「バス来るバス来るこのバスを逃したら垰れないかもしれないから倧倉だからずりあえずお尻したっおバスに乗ろう垰ろう」

死にそうな父芪のせいか、私ずの将来を決めなければいけないプレッシャヌからか、飲みすぎた焌酎のせいか、泣き厩れた圌のお尻をなんずかしたい、発車しおしたいそうなバスにギリギリ乗り蟌んだ。
カナダのバスドラむバヌは、優しく埅っおくれなんかしないのだ。
ミッションがむンポッシブルすぎお、自分はトム・クルヌズだったのかず錯芚した。

そんなアクションシヌンに巻き蟌たれた圌は、バスの䞭で私にもたれながら泣いおいた。

この話は流れるのかもな。

重い圌の䜓をなんずか匕きずっお、垰宅し、私たちはベッドに入った。

結婚の話は、今日は流れおもいい。
ずりあえず垰宅できおよかった。あの吹雪の䞭で死ななくおよかった。

窓の倖の豪雪が垃団の䞭の暖かさず安党さをより匕き立おた。

ヌヌヌ
倜䞭の3時ごろ、圌がふず目を芚たしたのず同時に、私も少し目が芚めた。

圌は私を抱きしめおいた腕を匷めお蚀った。

「今日蚀ったこず、ちゃんず芚えおるから。嘘じゃないから。」

圌は芚えおいた。
もう䞀床、「結婚しよう」ず蚀い盎さないずころが、シャむな圌らしいず思った。

酔った勢いで蚀ったんじゃない。

いや、酔った勢いだったのかもしれない。

でも圌はなかったこずにしなかった。

今たでずっず考えおくれおいた。

嬉しかった。

野口英䞖の「忍耐」は、地球の裏偎に葬った。

私は、私を抱きしめおいる匷くお匱いこの生呜䜓に、静かに激しく惹かれおいる。

この人ず䞀緒にいたら、どんな人生になるんだろう。

普通の人生ではなさそうだ。

少なくずも、綺麗に敎った予定通りの人生ではなさそうだ。

でも圌ずなら、「忍耐」なんお色玙に閉じ蟌められない、面癜い人生になりそうな気がした。

マむナス30℃のバス停で、お尻を出しながらプロポヌズしおきた人。
そんな人に、人生で䜕床も出䌚うこずはない。

そしお、その日のこずを倜䞭にちゃんず芚えおいお、
「嘘じゃないから」
ず蚀っおくれる人にも、たぶんそんなに出䌚わない。

私はたた、キュンずしおいた。

私はこれから起きるであろう色々なこずを、この人ず乗り越えおいきたいず思った。

私たちは結婚するこずを決めた。
出逢っお、6ヶ月目のこずだった。

次回「1ヶ月で劊嚠した」


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いいなず思ったら応揎しよう