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Photo bymikiluna

E35:「ハむタツ」に行くの

    43幎前の倏、担任の先生が蚀った。
    「お母さんずお話したよ。源倪くんは倏䌑みの宿題しなくおいいからね」
    そばで聞いおいたクラスメむトが「いいなあ」ず呟いた。事情を知らなければ、それはたぁ矚たしいに違いない。

    小孊校幎生の倏䌑みは、ほずんどを、ずある斜蚭で過ごした。
    「甘くお、苊しくお、哀しくお、楜しくお、ほろ苊い」
    そんな倏だった 。

    ふだんできない歩行蚓緎を、集䞭的にしたしょう、ずいう病院偎の提案だった。病院には「孊校」が䜵蚭され、手足の䞍自由な子どもたちが「孊校」ず「病院」を埀埩しながら、集団生掻を送っおいた。

    そこに小のチビ助が、倏䌑みの期間だけ、限定で攟り蟌たれたのである。

    斜蚭には実に様々な「肢䜓䞍自由児」がいた。
    日䞭ベッドの䞊で過ごす子もいれば、
    「お前はレヌサヌか」ずツッコミたくなるような元気な車怅子の子もいた。

    僕のように、危なっかしいながら歩いたり、走ったり出来る子は皀で 、その分みんなのサポヌト圹に回るこずも倚かった。
    ふだんの孊校では「お手䌝いの必芁な困った子」が
    ここでは人の圹に立぀、元気な源ちゃん。
    みんなの茪の䞭に入るうれしさ、「ごため」だの「みそっかす」だの、そういうものずは無瞁な䞖界が、ここには広がっおいた。
    それが、ただ、ただうれしかった 。


    幎生最幎少なので、倚少意地悪もされたが、うんず離れた䞭孊生の人たちは、こずさら僕をかわいがっおくれた。
    今にしお思えば、しょっちゅう぀たらないこずで、びいびい泣いおいたので、攟っおおけなかったのかもしれない。倜になるず「家に垰りたい」ずぐずる僕を、屋䞊や瓶コヌラの自販機に連れ出しおは、慰めおくれた。
    今、埩刻版の瓶コヌラを芋るず、䞍意に泣きたくなる。懐かしいのではない、あの頃を思い出すからだ。コヌラの冷たさずお兄ちゃんの笑顔。なんであんなに優しかったんだろう。

    なぜだろう、いた急にお兄ちゃんの名前を思い出した。
    noteは本圓に䞍思議なチカラを持っおいる。


    䞭孊生の女の子にもかわいがっおもらった。
    ずくに䞭のゆりちゃん仮名は優しかった。
    ロフストランド杖に、装具をはめ、
    今思えばずいぶん歩きにくかっただろうに
    いろんな所ぞ連れお行っおくれた。

    ただ、そんなゆりちゃんも、
    ぀だけ連れお行っおくれない堎所があった。
    それが「ハむタツ」だった。

    「ねえ、ゆりちゃん、ハむタツっお䜕運ぶの」
    「源ちゃんは知らなくおいいの、そんなの」
    「ずるいよっ 僕も連れお行っおよ」
    「ダメよ ね。すぐ戻っおくるから、埅っおお」

    そもそも
    僕にずっお、本来ハむタツは「魅力的」なものだった。
    「おかぐちや」で䜜った豆腐や揚げを、スヌパヌや飲食店に卞す「配達」

    孫の僕が぀いお行くず、取匕店の人は
    「あ、源ちゃんえらいね、配達おっだいよんのけ」
    手䌝っおるのかいず蚀っお、お菓子やゞュヌスをくれる。そんな「魅惑的な」䞖界ず盎結するものだった。


    「看護婊さん」や「技垫さん」「先生今考えれば理孊療法士」も
    みんな「ハむタツ」ず蚀っおいた  ような気がするのに
    どうしおだれも実態を教えおくれないのだろう
    小坊䞻は腕組みしながら倧いに䞍満だった。
    時々こっそり぀いお行ったが、い぀も芋事に撒かれるのだった。

    い぀も優しいゆりちゃんが、ある時間になるず
    口をぞの字に曲げお「ハむタツに行かなきゃ」ず蚀っおいた。
    困ったような、怒ったような、そんな暪顔だった。

    僕はひずりがっちになるず
    窓の倖の倕焌けを睚みながら
    なぜか『ホテル・カリフォルニア』が脳内再生されるずいう、なんずもマセたガキだった。圓時盛んにラゞオから流れおきたのを、倕焌けずずもに芚えおいたのだず思う。

    「あヌあ、぀たんないの」
    倕闇ず孀独がドン・ヘンリヌの切ない歌声ずマッチした。
    意味もわかんないくせに 。


    それから幎埌、䞭の倏䌑み。
    奇しくもあの時のゆりちゃんず同じ14歳。
    ぀けっぱなしのテレビで芋たNHKの番組
    「ハむセツの介助は慎重になっおいただき 」


    雷に打たれたように立ち尜くす14歳がそこにいた。

    たるで神様が
    「同じ歳」になった僕に耳打ちでそっず教えおくれたように 。

    たるで神様が
    圌女の恥じらいや、苊悩や、哀しみをちゃんず理解できるタむミングを芋蚈らっおいたかのように 。


    小のあのころ
    昌間は楜しかったのに、
    倜になるず窓の倖を芋およく泣いた。
    い぀か、歩けなくなるのかな、ず。
    なんで僕はここにいるのだろう、ず。
    どうしお人でここにいるのだろう、ず。

    もちろん
    お兄ちゃんやゆりちゃんを思う䜙裕などなかった。

    ゆりちゃんも泣いたのかな。
    思春期たっただ䞭の少女は、
    「ハむタツ連れおっお♪」ず笑顔で远いかけおくる
    小をどんな思いで撒いたのだろう。

    遅ればせながら自分が14歳になっお
    幎越しに、胞が締め付けられる思いがした 。


    隠語だったのか
    幌さ故の聞き間違いだったのか
    もう、それを今さら確かめたずころで意味はない。


    2022幎
    たた、倏䌑みの季節が来た。
    久しぶりに『ホテル・カリフォルニア』を聎いおみる。

    ゆりちゃんは57歳。お兄ちゃんは58歳。
    どこかで幞せに暮らしおいおほしいな、ず思う。

    すごく、優しかったから。


    最近、歩くのが぀らくなっおきた。
    だけど、やっぱり、ただ歩きたいな。



    お読みいただき、ありがずうございたした。
    【゚ッセむ 35】

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    50代。詩人。空を芋䞊げ䜕か曞く男です。蚀葉はできるだけ穏やかに優しくありたいですね。以前スタ゚フにお番組を配信しおいたした。珟圚は䞍定期配信です。https://stand.fm/channels/635ddc11b4418c968d4fbe42

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