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今朝、俺は1時間、自分の脳と戦った。

家を出た。

ドアを閉めた。

数歩、歩いた。

そのときだった。

来た。

最悪のタイミングだった。

まだ家は見えている。

戻ろうと思えば戻れる。

脳が即座に判断した。

「戻れ。」

わかってる。

俺だって戻りたい。

だが、ここで戻れば、

バスに間に合わない。

朝のバスは待ってくれない。

俺の事情なんて知らない。

俺が今、

どれだけ重大な局面を迎えているのか。

運転手は知らない。

俺は家を見た。

バス停を見た。

もう一度、家を見た。

そして決めた。

行く。

この判断が正しかったのか。

この時の俺には、

まだわからなかった。

第一関門

バス停に着いた。

まだいける。

いや、

いける気がする。

脳は言っている。

「今ならまだ戻れる」

黙れ。

もうここまで来た。

バスが来た。

乗る。

そして、

座る。

よし。

座れた。

これはデカい。

今日はとにかく、

立ってはいけない。

理由はまだ言えない。

だが、

立てば何かが終わる。

そんな気がした。

バスが走り出した。

俺は静かに座っていた。

外から見れば、

ただ通勤している45歳会社員である。

だが内側では、

とんでもない戦争が始まっていた。

来る。

耐える。

引く。

よし。

勝った。

……

また来た。

おい。

さっき帰ったやろ。

脳が言う。

「次の停留所で降りろ」

俺は言う。

「会社行かれへんやろ」

脳。

沈黙。

どうやら、

こいつも会社員らしい。

駅

なんとか駅に着いた。

ここで、

俺の目の前に希望が現れた。

救済施設。

行けば終わる。

すべてから解放される。

脳が叫ぶ。

「行け!!」

俺も思った。

行こう。

もう十分戦った。

だが時計を見る。

……

アカン。

ここで救済されると、

次のバスに間に合わない。

究極の二択だった。

人間としての尊厳を守るか。

乗り継ぎを守るか。

俺は考えた。

3秒くらい。

そして、

救済施設の前を通り過ぎた。

脳が叫んだ。

「正気か!?」

正気ではない。

通勤中である。

第二関門

次のバスに乗った。

また座れた。

神はまだ、

俺を見捨てていなかった。

ここから会社までは、

もう逃げ場がない。

俺は腹をくくった。

いや。

今日に限っては、

腹をくくってはいけない。

なんか違うところを、

くくらなければならない。

来た。

第一波。

耐える。

引いた。

第二波。

耐える。

引いた。

第三波。

多ない?

何回来んねん。

脳から緊急警報が鳴る。

「限界です」

知らん。

「システムに重大な異常が発生しています」

再起動しろ。

「強制終了の可能性があります」

それだけはアカン。

俺は全神経を、

一点に集中させた。

もう通常の防御では無理だ。

使うしかない。

俺は静かに目を閉じた。

そして、

45年間生きてきて、

一度も習ったことのない奥義を発動した。

肛門拳

説明しよう。

肛門拳とは――

知らん。

俺が今つけた。

だが、

効果はあった。

来る。

締める。

引く。

緩め……

ない。

また来るかもしれない。

油断するな。

来る。

締める。

引く。

まだ締める。

俺はもはや、

何と戦っているのかわからなくなっていた。

脳も黙った。

たぶん、

応援していた。

最終決戦

家を出てから、

約1時間。

長かった。

あまりにも長かった。

普通なら、

ただの通勤時間である。

しかし今日の俺にとっては、

生存競争だった。

そしてついに、

会社が見えた。

あと少し。

ここで気を抜いてはいけない。

歴史上、

ゴール直前で油断して敗れた者は多い。

知らんけど。

バスが止まる。

俺は立ち上がった。

慎重に。

ここ重要。

めちゃくちゃ慎重に。

一歩。

また一歩。

会社へ向かう。

そして――

到着。

勝った。

俺は勝った。

約1時間に及ぶ戦い。

脳からの度重なる撤退命令。

駅に現れた救済施設。

三度、四度と襲いかかる謎の波。

そして、

禁断の奥義。

肛門拳。

すべてを乗り越えた。

俺は会社のトイレへ向かった。

もう隠す必要はないだろう。

ここまで俺が、

命をかけて守り抜いたもの。

その正体は――

うんちである。

ただの、

うんちである。

朝から1時間、

うんちを我慢していただけである。


普通なら、

この話はここで終わる。

「今日めっちゃヤバかったわ」

家でそう言って、

終わりである。

ところが俺は、

この出来事をChatGPTに話してしまった。

そして、

最悪の言葉が生まれた。

肛門拳。

さらに俺たちは、

考えてしまった。

「これ、絵本にできるんちゃう?」

できるわけがない。

絵本を何やと思ってる。

でも、

もうタイトルまである。

『まけるな!こうもんけん』

……

俺は何をしているんだろう。

ということで、

作りました。

朝の通勤中、

45歳会社員が必死に守ったもの。

その壮絶な戦いを描いた、

愛と勇気と肛門の物語。

『まけるな!こうもんけん』

どうぞ。

『まけるな!こうもんけん』




ここまで読んでくれて、

ありがとうございました。

最後に、

この記事から得られる教訓を一つ。

ありません。

強いて言うなら、

家を出る前に済ませておきましょう。

でも今回は、

家を出た瞬間に来たんや。

知らんがな。


ちなみに、耳毛の裏側では。

普段、こういう記事や絵本が、

「なんでこうなった?」

というところまで暴走していく裏側を、
メンバーシップで書いています。

AIとのやり取りとか、
ボツになった案とか、
作ってる途中で起きた事故とか。

表では完成品。

裏ではだいたい迷走しています。

今回も、

朝うんちを我慢しただけなのに、絵本ができました。

どうしてこうなった。

そんな裏側まで見たい人は、
「耳毛の裏側」でお待ちしてます。

※肛門拳の習得講座ではありません。

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