メインコンテンツへスキップ
見出し画像

半休なのに、まだ会社にいた

    おじさんパパ

    妻の体調がよくなかった。

    朝から気持ち悪そうで、今日は少し横になっていた方がよさそうだった。

    たまたまその日の午前中は、打ち合わせが入っていなかった。

    Teamsの予定表を見て、少し考える。

    これは半休にできるな、と思った。

    逆に言えば、予定が詰まっていたらどうしていたのか。

    その答えは、あまり考えたくなかった。

    午前中は休みにして、息子を見ることにした。

    リビングにおもちゃを出す。

    息子がハイハイで動き回る横で、私はスマホを見ていた。

    Teamsには、いくつか通知が来ている。

    「午後の打ち合わせ資料、確認お願いします」

    「案件の進め方で、少し相談したいことがあります」

    休みにしたはずなのに、会社は普通に動いている。

    それはそうだ。

    私が半休を取ったところで、世界が半休になるわけではない。

    少しだけ見る。

    ほんの少しだけ。

    そう思ってスマホを見ていたら、息子が近づいてきた。

    気づけば、真横にいる。

    そして、私の耳を触ってきた。

    「何だよー」

    そう言って顔を見る。

    笑っている。

    かなりいい顔で笑っている。

    スマホから目を離したことが分かったのか、少し得意そうでもある。

    かわいいな。

    それでも私は、もう一度スマホに目を落とした。

    子どもが生まれる前は、仕事を頑張っていれば、だいたいのことは回っていた。

    自分のキャリアも、家庭の中での役割も。

    でも、子どもが生まれてからは、そうはいかなくなった。

    頭では、家族の時間が一番だと思っている。

    でも、Teamsは気になる。

    自分でも少し嫌になる。

    責任感、と言えば聞こえはいい。

    でも、たぶんそれだけではない。

    仕事を雑にしたら、今の場所が少しずつ細っていく気がする。

    収入のことも、どうしても頭から消えない。

    47歳で、子どもはまだ小さい。

    それでも、手はスマホに伸びている。

    自分でも、うまく説明できない。

    そんなことを考えていたら、今度は耳の中まで小さい指が入ってきた。

    くすぐったくて、思わず肩が上がる。

    それを見て、息子はさらに笑った。

    どうやら、父親の耳は反応が良いらしい。

    私はそこで、スマホを伏せた。

    半休を取ったのに、私はまだ半分会社にいた。

    息子はたぶん、ただ耳が気になっただけだ。

    Teamsの通知は、そのまま残っていた。

    息子は、まだ笑っていた。

    耳には、まだ小さい指のくすぐったさが残っていた。

     
     
     
    46歳で父になった。仕事も、育児も、老後も、全部同時にやってくる。その記録

    あなたへのおすすめ