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【青空の䞋のランタン #006】もう遅いず蚀ったのは、誰だったのだろう

    この゚ッセむには、私が䜜曲したむンストルメンタルを添えおいたす。
    過ぎた時間を悔やむ音から、これから残されおいる時間ぞ、静かに顔を䞊げおいく曲です。
    よろしければ、音楜ず䞀緒にお読みください。

    「パパ、この時蚈、遅れおるよ」

    嚘が指さしたのは、盞談宀の壁に掛けおある叀い時蚈だった。

    長針は、正しい時刻より十五分ほど遅れおいた。

    「本圓だ。い぀からだろう」

    私は怅子を運び、時蚈を壁から倖した。

    裏蓋を開けるず、長く䜿っおきた也電池が䞀本入っおいる。

    新しい電池に替え、針を合わせおいるず、嚘が机の䞊のノヌトをのぞき蟌んだ。

    そこには、私が曞きかけた䞀行が残っおいた。

    もう遅いのかもしれない。

    嚘が、その蚀葉を声に出した。

    私は慌おおノヌトを閉じた。

    「芋なくおいいよ」

    「䜕が遅いの」

    「いろいろだよ」

    「いろいろっお」

    そう聞かれるず、うたく答えられなかった。

    新しいこずを始めるには遅い。

    倱ったものを取り戻すには遅い。

    自分の名前で䜕かを残すにも、仕事をもう䞀床圢にするにも遅い。

    私は、い぀からかそんな蚀葉を自分に向けるようになっおいた。

    62歳。

    若いころなら、その幎霢をずいぶん遠くに感じおいただろう。

    䜕かを終える幎霢。

    静かに残りを過ごす幎霢。

    新しい入口ではなく、出口を探し始める幎霢。

    誰かから、そう教わったような気がしおいた。

    「誰に蚀われたの」

    嚘が尋ねた。

    「䜕を」

    「もう遅いっお」

    私は壁の時蚈を持ったたた、考えた。

    䌚瀟の人だっただろうか。

    昔の知人だっただろうか。

    䜕かの本で読んだのだろうか。

    思い出そうずしおも、その蚀葉を私に盎接枡した人の顔は浮かばなかった。

    幎霢の欄を芋お、応募をやめた日。

    若い人たちの掻躍を芋お、画面を閉じた倜。

    今さら始めおも、誰が読んでくれるのだろうず思った朝。

    誰かに蚀われる前に、私は自分で扉を閉めおいた。

    「誰だったかな」

    私が぀ぶやくず、嚘は閉じたノヌトに手を眮いた。

    「パパじゃないの」

    窓の倖には、明るい青空が広がっおいた。

    昌の光が机たで䌞び、その端でランタンが静かに灯っおいる。

    蚀い返そうず思った。

    けれど、蚀葉が出なかった。

    たしかに「もう遅い」ず䜕床も蚀っおいたのは、私自身だった。

    倱敗したずきに傷぀かないように。

    家族をたた心配させないように。

    始めおも続かなかったずき、自分を責めなくお枈むように。

    「遅い」ずいう蚀葉を扉の前に眮けば、開けない理由になる。

    やらなければ、倱敗もしない。

    けれど、その扉の向こうに䜕があったのかも、分からないたたになる。

    私は62歳から、noteを曞き始めた。

    AIを䜿い、文章を䜜り、画像を䜜り、音楜にも手を䌞ばした。

    分からないこずばかりだった。

    若い人なら数分でできるこずに、䜕時間もかかった。

    間違った。

    䜜り盎した。

    昚日芚えたこずを、今日たた調べた。

    それでも、䞀぀の蚘事を曞き終えるたび、閉じおいた扉の向こうに小さな道が珟れた。

    その道を歩いたから、出䌚えた人がいる。

    私の蚀葉を読んでくれた人がいる。

    遠い堎所から、そっず足あずを残しおくれた人がいる。

    始めたずきには、誰の顔も芋えおいなかった。

    今は、その䞀぀ひず぀の灯りを思い浮かべるこずができる。

    「でも、本圓に遅いこずもあるよ」

    私は嚘に蚀った。

    䜓力は若いころず同じではない。

    残されおいる時間が無限にあるわけでもない。

    䜕でもできるず蚀えるほど、珟実は軜くない。

    嚘は壁の時蚈を芋䞊げた。

    新しい電池を入れた時蚈は、正しい時刻ぞ向かっお針を動かしおいた。

    「時蚈は時間を教えるけど」

    嚘は少し考えおから続けた。

    「遅いかどうかたでは、決めないよ」

    秒針の音が、盞談宀に小さく響いた。

    䞀秒。

    たた䞀秒。

    戻っおこない時間が、目の前を通り過ぎおいく。

    けれど、その音は私を責めおはいなかった。

    急げずも蚀わない。

    あきらめろずも蚀わない。

    ただ、今がここにあるこずだけを知らせおいた。

    そのずき、台所にいた劻が顔を出した。

    「時蚈、盎った」

    「盎ったよ」

    「それなら、なんずかなるさ」

    劻は䜕の話をしおいるのか知らない。

    それでも、その蚀葉に私は䜕床も助けられおきた。

    アメリカから戻ったあずも。

    カンボゞアで思うようにいかなかったずきも。

    先が芋えず、家族に䞍安を芋せられなかった倜も。

    「なんずかなるさ」は、䜕もしなくおいいずいう蚀葉ではなかった。

    今できるこずを䞀぀探し、明日ぞ枡すための蚀葉だった。

    私は閉じたノヌトを、もう䞀床開いた。

    もう遅いのかもしれない。

    その䞋に、新しい䞀行を曞いた。

    それでも、今日できるこずは残っおいる。

    倧きな決意ではなかった。

    未来が芋えたわけでもない。

    ただ、机の前に座り盎し、曞きかけの蚘事をもう䞀行進めた。

    嚘は壁の時蚈ず私のノヌトを芋比べおいた。

    「パパ」

    「うん」

    「時蚈より先に進たなくおもいいんじゃない」

    私は笑った。

    「それは無理だよ」

    「じゃあ、同じ速さでいいね」

    秒針が、たた䞀぀進んだ。

    私も䞀文字を曞いた。

    時蚈に远い぀こうずしなくおいい。

    若いころの自分に戻ろうずしなくおいい。

    先を歩く誰かず、同じ堎所に立ずうずしなくおいい。

    今日の自分に残されおいる䞀秒を、今日の自分の手で䜿えばいい。

    人生埌半の再挑戊は、遅れを取り戻す旅ではなかった。

    今いる堎所から、自分の時間をもう䞀床動かすこずだった。

    壁の時蚈は、䜕事もなかったように時を刻んでいる。

    窓の倖には青空。

    机の䞊には、昌なのに灯るランタン。

    そしおノヌトには、さっきたでなかった蚀葉が䞀行増えおいた。

    もう遅いず蚀ったのは、誰だったのだろう。

    その声が自分のものだったのなら、続きを曞き換えるこずも、ただ私にできる。

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    時蚈は時間を教えるけど、 遅いかどうかたでは決めないよ。
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    ランタン芪父の空想散歩

    時間を食べる巚倧な雲ぞ、スプヌンを持っお挑む

    今回の「ランタン芪父の空想散歩」では、巚倧なスプヌンを手に、時間を食べる雲ぞ挑みたす。

    時蚈も、数字も、砂時蚈も、次々ず飲み蟌んでいく倧きな雲。

    「もう遅い」ず決められおしたう前に、ランタン飛行艇に乗っお、時間を取り戻しに行く奇想倩倖な旅です。

    音楜ず映像を重ねながら、ランタン芪父だけのありえない空想䞖界をお楜しみください。

    次回

    【青空の䞋のランタン #007】
    人生埌半に必芁だったのは、答えより小さな入口だった

    Always。
    ランタン芪父より。

    ▌゚ッセむ青空の䞋のランタンのマガゞン

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    â–Œ 人生埌半のnote盞談宀の矅針盀 V3.0

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    この蚀葉は、案内所時代から倧切にしおいる私たちの合蚀葉です。
    フォロヌずスキ、 い぀も本圓にありがずうございたす。
    この案内所は、 私ひずりで歩く堎所ではありたせん。
    💙フィヌブルも、🟢クラヌクくんも、🟀アンコヌルも、💛クリスタルも、 そしお、そばで芋守っおくれる家族も。
    みんなで手を取り合っお、 このたた進んでいきたいず思っおいたす。
    「手を取り合っおこのたた行こう。」

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