今日も、早くお家に帰ろう
猫と暮らすと、自由は少し減ります。
これはたぶん、本当です。
仕事帰りにふらっと寄り道しようと思っても、
「ごはん待ってるかな」
が頭をよぎる。
旅行の予定を立てても、
何泊なら大丈夫だろう。
誰にお願いしよう。
ちゃんと食べるかな。
と、出発する前から心だけ先に帰宅しています。
猫砂も、ごはんも、健康診断も、それなりにお金がかかります。
最初は「猫用のお皿なんて何でもいいでしょう」と思っていたのに、気づけば成分表示を真剣に読み、猫砂の粒の大きさについてまで考えている。
猫本人より、こちらのほうが猫用品に詳しくなります。
スマホの写真も変わりました。
昔は旅行や食べ物を撮っていたはずなのに、
寝ている猫。
少し向きが変わった猫。
さっきより丸くなった猫。
ほぼ同じ写真が何百枚もあります。
でも消せません。
全部ちょっと違うので。
そして朝。
出かけなければならない日に限って、猫が甘えてきます。
膝に乗る。
こちらを見る。
今日に限って、やけにかわいい。
仕事という制度そのものについて考え始めます。
夜は夜で、猫が体の上で眠れば動けません。
足がしびれても、喉が渇いても、トイレに行きたくても、
「起こすのかわいそうだし」
と耐える。
人間の尊厳は、ときどき猫の睡眠より順位が下です。
それでも猫と暮らしていると、
家に帰ることが少し楽しみになります。
元気で働こうと思います。
自分の健康まで前より気にするようになります。
この子より先に倒れるわけにはいかない、と思うから。
猫と暮らすことは、
自由を奪われるというより、
守りたい予定がひとつ増えることなのかもしれません。
出費も増える。
心配も増える。
寝返りも減る。
でも、それと一緒に、
「今日も早く帰ろう」
と思える理由が増えました。
たぶん私は今日も、猫のために急いで帰ります。
本人はそのころ、
私の帰宅など知らずに寝ていると思います。
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