
はじめてのお相手
タイトルの件。初体験のお話です。
「あの夜の記憶」
高校1年生。
16歳の私は、初めて「恋人」と呼べる人ができた。
1つ年上の先輩で、いつも穏やかで、どこか頼りなくて。だけど私にだけ見せる少し意地悪な笑顔が好きだった。
冬の学校の帰り、彼と一緒に歩いた道のり。
「寒いね」
「みきの手、冷たい」
そう言いながらポケットの中で握られた私の手。
指先に伝わる体温だけで、心臓が早鐘を打った。
そんな小さなことのすべてが、当時の私には宝物だった。
冬休みに入る少し前、彼から「親が旅行でいないから、家に遊びに来ない?」とLINEが届いた。
一瞬、頭が真っ白になった。
家に行く…二人きり…
そんな状況が私にとってどんな意味を持つのか、なんとなく分かっていた。
でも不思議と怖くはなかった。
「行く」と返事をしたのは、彼を信じていたからだと思う。
約束の日。
駅で待っていた彼は、いつもと変わらず優しく微笑んでいた。
「寒いから、これ飲んで」
渡されたホットココアの缶は、私の手の冷たさを溶かすように温かかった。
「緊張してる?」
「…少し」
「俺も」
二人で小さく笑い合いながら、静かな住宅街を歩いた。
彼の部屋はシンプルで、少しだけ生活感があった。
「ここ、俺の部屋」
ベッドと机、棚には漫画と教科書が並んでいる。
普段の学校では見られない彼の「生活」がそこにあった。
最初はぎこちなくソファに並んで座り、テレビをつけた。
彼が用意してくれていた映画を観ながら、ポテトチップスをつまむ。
「美味しい?」
「うん」
会話はどこか他愛なくて、でも心臓の鼓動はずっと落ち着かなかった。
映画が終わる頃、彼がそっと私の手を取った。
「みき、手冷たい」
「…ごめん」
「違うよ。可愛いなって」
顔が一気に熱くなる。視線を逸らす私の頬に、彼の指先が触れた。
「…好きだよ」
「私も」
小さな声で返すと、彼がゆっくり顔を近づけてきた。
唇が重なった瞬間、全身が熱くなる。
それまでのキスより少し長く、深く。
息が詰まりそうで、でも離れたくなかった。
「大丈夫?」
「うん」
何度も確かめるように、彼は優しく私を抱き寄せた。
心臓の音がうるさいくらい響いている気がして、少し恥ずかしかった。
気づけば、二人はベッドの上で向かい合って座っていた。
「みき、無理しないでいいから」
彼は何度もそう言って、私の髪を撫でた。
私は首を横に振った。
「無理してない。…好きだから」
自分でも驚くほど、しっかりとした声だった。
その夜、私たちは初めて心から向き合った。
ただ、抱きしめ合い、未来の話をした。
「大学はどこ行きたい?」
「みきは?」
そんな些細な会話でさえ、二人だけの秘密のように思えた。
夜が深くなるにつれて、私たちは毛布にくるまり、
「好きだよ」
「私も大好き」
そう言って彼に身を任せて…
ゆっくりとゆっくりと
確かめ合いながら彼を受け入れた。

翌朝、目を覚ました時、彼の寝顔がすぐ隣にあった。
少し髪が乱れていて、無防備で、愛おしかった。
「おはよう」
「…おはよう」
二人とも恥ずかしそうに笑った。
それが私にとっての「初めて」。
大人になった今、彼とはもう連絡も取らない。
でも、あの夜のことを思い出すたび、私は胸の奥があたたかくなる。
私の初めての恋が、彼で良かったと心から思えるから。