
「お好みの結末」
- 割引あり
最近の朝の連ドラはどうも面白くない。巷でそう囁かれる割には、視聴率はそこまでどーんと下がっていることもないようだ。
「そりゃそうよ、だって朝のルーティーンだもの。面白くたって面白くなくたって見ちゃうの」
「言ってみれば時計代わりよね」
「そうそう、じっくり見てるわけじゃないけど、なんとなくちらちら見ながら朝の支度とかしてるわ」
パート先の中休みや昼休み、よく取り上げられる話題だ。みんな文句を言いながらも結構よく見ているので、まあしょせんテレビドラマのことだ、真剣に討論するほどのことでもない。
中休みは短く、部署によっては多少のずれがあるもので、話題に出てもちらりと「今日の面白くなかったわよね」とか「今日はよかったわ」と言うぐらいで、終わってしまうが、昼休みになるとちょっと様子が変わってくる。
45分間の昼休み、その時に朝の連続ドラマの再放送がある。食堂のテレビのチャンネルはそこに固定なので、見るつもりがなくても見るしかない。以前他のチャンネルが見たいと言ったところ、なんでも食堂のマスターが拒否したそうだ。仕事しながらドラマを聞きたいかららしいが、確認したことはないので、本当かどうかは分からない。分からないが、今日も再放送がかかっているのだけは事実。
15分の再放送が終わるとさて午後の仕事の開始だ。お昼も朝と同じく時計代わり、ルーティーンで見るともなく見てまた元の持ち場に戻る。それが平日の職場のいつもの風景だった。
それが少し変わるかも知れないという出来事が起こった。
「お昼の再放送をあなたのお好みの結末に」
朝ドラを放送している局が、いきなりそんな「エンドカード」を出した。歌番組の最後に「ライブDVD発売中」とか出るあの文字だけのやつだ。何の説明もなく、ただその一文だけがどんと出た。
「ちょっとぉ、どういうことだと思う?」
仕事前にその話題を持ち出したのは、職場のパートでも一番の古株のお局様だった。ロッカーに飛び込むと同時に鼻息荒くそう言った。
「どうなんだろうね、分かんない」
「お望みの結末って、朝の放送のそのままでしょ?」
「そうだよね、だって再放送だもん」
あの一言だけで詳しい発表がないもので、世間は大騒ぎだ。一体どういうことなんだろう、興味を引くだけ引かせて沈黙を続けたので話題になる。SNSなどではまことしやかに「自分は知っている」「こういうことだ」とそれらしい説明をする者、意味不明な陰謀論を持ち出す者、ああだこうだとどこもかしこもこの話題で持ち切りだ。
盛り上げるだけ盛り上げて、いらついて世間がブチ切れる寸前で、やっとその内容が発表された。
「朝放送したドラマを視聴者の希望に沿った内容で昼に再放送する」