【目印を見つけるノート】2261. 雀たちと、もじゃもじゃの木
今日はいいお天気でしたね。
うちの割と近くに、もじゃもじゃの木がありました。
大木ではないですが何年も剪定していなかったようで、背も高くもじゃもじゃになっていたのです。
そこに雀が集まるようになりました。
確かに、カラスが留まれるような大きな木ではないし、何しろもじゃもじゃです。雨風や外敵を防ぎ、安全に巣を作ることができる場所だったと思います。
本来の意味で『雀のお宿』というのにふさわしいこの木には、さらにたくさんの雀が来るようになりました。すべてではないでしょうが、営巣しているつがいもいるようです。もじゃもじゃの木の雀の鳴き声はかなり賑やかになり、あれこれ会話しているのだろうと通りかかるたびに耳を傾けていました。
「おーい、いい感じの枯れ草があるところを見つけたよ」
「よかった。今のままじゃ雛が落ちてしまいそうで怖かったの」
「もっと集めてくるよ。しかし、この木は小さな虫が多いから、食事に困らなくていいね」
「本当に。そういえば始めは川沿いの電柱の天辺に巣を作ろうと思っていたでしょう」

「うん、でも先客がいて場所取りができなかった。ツバメはいいよな、家の軒下に巣を作っても人間に壊されたりしない。カラスがちょっかい出そうとすれば、追い払ってくれたりもするんだ。大事にされているよね」
「でも、ここは素敵な場所だわ。高い電柱の上は見晴らしがいいけれど、強い雨風の日にはとてもじゃないけどいられない。子育てには厳しいと思う」
「そうだな。いい場所を見つけたな」
一般的に、雀は3月から8月にかけて繁殖期を迎え、年に数回繁殖するそうです。家屋や建物の隙間、電柱の部品などに巣を作ります。他の鳥の巣穴を利用して繁殖することもあります。
確かに、賑やかになり始めた時期と一致します。
そのうち、鳴き声の賑やかさもですが、もじゃもじゃの木の枝の下のアスファルトには雀のふんが目立つようになりました。雨が降ると流れていくのですが、またすぐに白くなります。
私は「まずいなあ」と思いました。
もじゃもじゃの木は集合住宅の植え込みに建っていて、お掃除当番などないようでしたから。そもそも、お掃除当番などがないので、木がもじゃもじゃになったのでしょう。この町は住宅街、一軒家の人などは自分の家の木の枝が少しでも隣の敷地にはみ出すと、すぐに切ってしまいます。いさかいが起こったりしますからね。よくいえば、きちんと管理されているということです。
他の空き地でも雀の姿をよく見ました。個体数が減っているという記事を見ましたが、春という季節はそれを感じさせない。エサや巣の材料を探す雀の姿は頻繁に見られます。梅や桜もでしょうが、空き地の土の下にいる虫などはたいへんなご馳走でしょう。
きょうびはネットショッピングでも雀のエサを売っていますが、私の見る雀はみんな自力で生きています。
5月のある日、私は歩いていて異変に気づきました。
もじゃもじゃの木が剪定されていました。もとの木は背も高くなく、幹も枝も細いのですが、それがはっきりわかるほど枝葉が刈り取られていました。
それほど高くないスカスカの木を私は見上げました。
鳥の巣らしいものはひとつもありません。
もちろん雀もいません。
私が前に「まずい」と思ったことが現実になってしまいました。
雀の鳴き声やふんが苦情になり、集合住宅の管理会社が剪定を依頼したのでしょう。それは容易に想像できる、当然の帰結ではありました。

その後、スカスカの木の脇を通ると、向かい側の家の小さな植え込みのところに雀が数羽いるのを見つけました。茂みにもなっていませんし、エサのある場所でもなさそうです。
その後も雀が植え込みにいるのをよく目にします。スカスカの木を見ると、鳥は相変わらず1羽も留まっていません。
「雀たちは無事に引っ越せたのかな」とふと思いました。それから彼らの自力の暮らしを思い出して、「きっと、新しい引っ越し先が見つかったはずだ」と信じることにしました。
スカスカの木は、この先もスカスカのままでしょう。ですので、この木が再び素敵な居場所になることも当分ないでしょう。
それでも、木を眺められる植え込みに集まっている雀を見ると、雀たちのほんのりとしたノスタルジアを感じるのです。

環境問題とか自然との共生とか、
大げさなことを書くつもりはまったくないですが、この数ヵ月の定点観測における雀の顛末を書き留めておこうと思いました。
書いているときに、少し長い地震がありました。
皆さまどうぞ安全にお過ごしください。
それでは、お読み下さってありがとうございます。
尾方佐羽
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