
娘のトイカメラから始まった大人の本気。ラジコン用「DJI Action 4」マウントを3Dプリンタで設計したら、「トラクション抜け」の罠にハマった話
発端は、娘のトイカメラでした
きっかけは、娘に買ってあげた動画撮影機能付きのトイカメラでした。
なんとなく、それをラジコンに括り付けて走らせてみました。すると、地面スレスレの目線で、普段は絶対に見られない臨場感あふれる映像が撮れました。画面の中を自分の車が駆け抜けていく映像に、子供たちは大熱狂です。
その瞬間、モノづくりの血(と、正直に言えばガジェット欲)に火がついてしまいました。
「これ、もっと本気でやったらどうなるんだろう?」
これは、トイカメラから始まった大人の本気の記録であり、同時に「後輪駆動の車にフロントヘビーは厳禁」という、車の基本を身をもって思い知らされた記録でもあります。
FPV(一人称視点)の夢と、完璧な「購入の言い訳」
一度火がつくと、欲は止まりません。
「もっと高画質で撮りたい」 「スマホに映像を飛ばして、それを見ながら運転(FPV=一人称視点)したい」
そう思って、Wi-Fiで映像を飛ばせる1万円台のアクションカメラを一通り調べました。しかし、安価な製品の多くは、見知らぬメーカーの専用アプリをスマホに入れる必要があります。セキュリティ面を考えると、常時接続を許す気にはなれませんでした。
そうやって消去法で残ったのが、DJI Osmo Action 4 でした。価格、画質、手ブレ補正、スマホ連携と、やりたいことがすべて高い水準で満たせます。
あとは、買うための「大義名分」を組み立てるだけです。
「ラジコンだけじゃなくて、日常の家族動画を撮るのにも使えるしね。運動会とか、絶対これがあったほうが便利だし」
……我ながら、この手の「自分や家族を納得させる理由」をひねり出す言い訳だけは得意なようです。
制約を逆手に取る
専用マウントの3Dプリント設計
とはいえ、言い訳を駆使して買ったばかりの高価なカメラです。転倒が日常茶飯事のラジコンに、そのまま括り付ける度胸はありません。
まずは傷を防ぐため、ダイビング用のカメラカバー(防水ケース)に入れ、さらにレンズと液晶にはガラスフィルムを貼って「完全武装」させました。これなら何度ひっくり返っても無傷です。
カメラ側の防御が完璧に固まったところで、次は車体への固定(マウント設計)です。
ターゲットの機体は、ジョーゼン ランドクルーザー300 GRスポーツです。
この機体には、ひとつ問題がありました。激しい走行を繰り返した結果、すでにフロントバンパーが割れてしまっていたのです。

普通ならただの「壊れた部品」ですが、3Dプリンタがあれば話は別です。むしろ「自由に設計できるスペースが空いた」とも言えます。
そこで、既存のバンパー取り付け用のネジ穴をそのまま流用し、マウント自体を「なんちゃってバンパー形状」として設計すればいいのではないか。
つまり、割れたバンパーの代わりに機体前面を保護しつつ、Action 4を強固にホールドする ——その2役を1つのパーツで兼ねさせます。剛性を確保しながら、ネジ穴位置だけは現物に合わせ込む作戦です。
CADでモデリングし、プリント。狙い通り、機体にガッチリ固定できる専用マウントが完成しました。


この時点では、完璧な仕上がりだと思っていました。
いざ走行 ——そして、思わぬ物理の壁
自作マウントにAction 4を載せたランクル300。スマホとペアリングし、いよいよFPV走行へ。
スマホの画面に、地面スレスレの映像が映し出されます。DJIの手ブレ補正は強力で、映像は驚くほど滑らか。これは期待できる——
と思った矢先、不具合が発生しました。
アクセルを入れても、車が前に進まないのです。 後輪が空転して、その場でズルズルと滑り出してしまいます。
最初は「路面のせいか?」と思いました。でも、原因はもっと根本的なところにありました。
このランクル300は、後輪駆動です。 そして私は、重量物であるAction 4とマウントを、フロントに搭載してしまいました。
つまり、車の重心が前に寄りすぎてしまったのです。駆動輪である後輪にかかる荷重(=トラクション)が抜けてしまい、いくらモーターを回してもタイヤがグリップできません。トルクが地面に伝わらず、ただ空転するだけ——。
実車の世界ではごく当たり前の話です。後輪駆動車で駆動輪の上に荷重が乗らなければ、トラクションは抜けてしまいます。
机の上では「カメラをどう固定するか」しか考えていませんでした。剛性も、ネジ位置も、保護形状も詰めました。でも、「重量物を前に足したら、車のトラクションバランスが崩れる」という一番大きな前提を見落としていたのです。
自分の詰めが甘すぎて、悔しいというより笑ってしまいました。カメラマウントという小さな部品の話が、いつのまにか「車はなぜ前に進むのか」という物理の話になっていたからです。
子どもにとっては物理を体感できる良いエピソードになったかもしれません。
結局、現場の最適解は「ガムテープ」でした
原因がわかれば、本来ならCADに戻って重心を見直した再設計……といきたいところです。しかし、目の前には早く遊びたくてウズウズしている子供たちがいます。悠長に3Dプリントをやり直している時間なんてありません。
どうしたかというと。
プリントした自作マウントをよく見ると、ガムテープがめちゃくちゃ巻きやすい形状をしていたのです。
「もうこれでいいや」

私はマウントにガムテープをぐるぐる巻きにして、Action 4を無理やり固定し、なんとか走れるバランスを見つけ出しました。スマートな設計者としてのプライドはどこかへ吹き飛びましたが、現場のトラブルシューティング(パワープレイ)としては完璧です。
結果はどうだったか。
見た目は最高に不格好になりましたが、そんなことは子供には関係ありません。息子はスマホに送られてくる大迫力のFPV映像に大興奮し、Action 4の充電が完全にすっからかんになるまで、夢中でラジコンを走らせてくれました。
まとめ:最後はガムテープがすべてを解決する
「壊れたバンパー」というマイナスを、3Dプリンタで「高機能マウント」というプラスに変換できた— と思ったら、今度は「車の重量配分」という物理の壁にぶつかり、最終的には「ガムテープ」というアナログの極みで強行突破しました。
スマートな設計とは程遠いオチになってしまいましたが、息子がバッテリーが尽きるまで笑顔で遊んでくれたのだから、今回のプロジェクトは大成功ということにしておきたいと思います。
家族の笑顔を言い訳に手に入れたAction 4。これからの相棒として、泥まみれになりながら遊びの限界を広げていくつもりです。
【お知らせ:3Dプリント小物、出品しています】 今回のマウントはガムテープまみれになってしまいましたが、普段はもう少し真面目に3Dプリンタで『ちょっと便利な小物』を設計しています。マキタの電動工具用のパーツなどをメルカリで細々と販売していますので、モノづくりやDIYがお好きな方は、ぜひ覗いてみてください!
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