
ふたりの、終われない夜 (ドキュメント20min. NHK)
初回放送日:2025年1月12日
二度と会えない人と再び出会う夜。芥川賞作家・西村賢太とバンドマン伊藤雄和。互いに共鳴し慕いあうも、突如決別した無頼のふたり。いつまでも終われない夜の物語。
男には、終われない夜があった。ロックバンド「OLEDICKFOGGY」伊藤雄和。2018年3月13日の夜。伊藤は“師”と慕う男と口論になり、電話を切った。師とは、破滅型の私小説で知られる芥川賞作家・西村賢太。ところがその後、和解することなく、西村は急逝。いくつもの夜を越えて、飲み、語りあったふたりは、二度と会えなくなった。伊藤は師に捧げる曲を作りはじめた。
終われない夜のために、男は叫ぶ。
(以上 公式サイトより)
西村賢太氏についてファンでもないし、よく知らない。中卒なのに芥川賞作家で、見た目もカッコよくない。イマドキこんな人がいるのか?そんな失礼過ぎる印象を持ちつつ、生き方や著作には少し興味があった。
図書館で受賞作の「苦役列車」を借り、恐る恐る読んでみたが、こういう本で芥川賞がもらえるのか?と。見直すどころか、疑問さえ持ってしまった。
ただ一つ。読んでいるだけで共同便所の臭いがしてくるような、なんとも言えないリアリティさには衝撃を受けたのを覚えている。
そんな彼が2022年2月に急死したニュースを知り、"やっぱり"という思いがした。
規格外な彼は、普通の死に方はしないだろうという気はしていたから。
師と仰ぐ作家・藤澤清造の墓参りと著作寄贈を済ませてからの逝去らしいが、こういう案外律儀な所も彼らしい。
バンドマン伊藤雄和氏の事は、この番組で初めて知った。西村氏の弟子でもあり友人でもあった彼は、喧嘩して仲直りしないままだったという。
西村氏の性格から想像すると、根に持つわけでも無く、伊藤氏が気楽に声をかけたらすんなり和解できたのではないか。
なんだかお互いに言い出せないまま、突然の別れを迎える事は珍しい事ではない。
「いつかそのうち」そう思っているうちに、不意に別れが訪れる。
「置き去りにするんだろ またこの夜の底に
突き放すだけじゃない その優しさの中に
惨めな言い訳が残る
月よ星よ泪よ どうか教えてくれよ
俺の行くこの道は
いつかの夜の答えが待っているのか
飲んでる間にきっと忘れちまうから
何も言わないで わかっているから
時の間に間に委ねてただけの
そんな毎日を 道連れにして
空しく過ぎたいくつもの季節を取り戻すまで
まだこの夜が終われない」
番組で流れた伊藤氏の曲、歌詞がとても良かったので引用した。
特に出だしが秀逸で、さすが弟子である。
友人の留守番電話に歌を吹き込んだり、酔って喧嘩ごしな電話をかけたりと、結構ムチャをしてきた西村氏。
けれどもそれを仕方ないと受け入れたり、別れを悼む仲間がいる事に他人ながら安堵した。
きっと人としての可愛げがある、とてもチャーミングな方だったのだろう。
近いうちに、改めて彼の著作を読みたいと思う。