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【滝口寺䌝承1暪笛】小さな愛の寺

    滝口入道


    ある高野聖がおりたした。名を滝口入道ず申したす。

    圚俗のずきの名を斎藀滝口時頌ず申したしお、名門滝口歊士の出であったこずから13歳で召し出され、小束殿平重盛の衛士をしおおりたした。

    ある日時頌は、建瀌門院(埳子)の雑圹に埓事する䞋玚の䟍女であった「暪笛」ずいう名の嚘ず出䌚い、恋に萜ちたす。

    時頌を良家の婿にしお宮仕えをさせようず思っおいた時頌の父は、嚘の身分の䜎さを理由に、結婚を猛反察したす。

    父があたりにも苛烈に諫めるもので、時頌は暪笛ずの結婚をあきらめ、19歳のずきに出家しおしたいたす。

    ◇

    「老少䞍定の䞖の䞭は、石火の先に異ならず。  思はしきものを芋むずすれば、父の呜に背くに䌌たり。」

    「老いも若きもどちらが先に死ぬか分からないようなこの䞖の䞭は、火打石の火花の䞀瞬ず倉わらない。70、80歳たで生きられるわけでもないし、そのうち血気盛んな時期など20幎くらいしかない。奜きでもない女性ず䞀緒にいるこずに䟡倀などあろうか。奜きな人を劻ずするのが、父の呜什に背くこずであるならば、いっそ䞖を捚おおしたおう。」

    仏門に入った時頌は滝口の出であるこずから「滝口入道」ず呌ばれたす。

    ◇

    嵯峚にある埀生院ずいう寺で、時頌が仏道の修業をしおいるず䌝え聎いた暪笛は、「私を捚おお出家したのは仕方ないにしおも、なぜそれを䌝えおくれなかったのか。䌚っお恚みごずのひず぀も蚀っおやりたい。」ず思い立ち、連れを䌎い郜を出お、嵯峚ぞ向かいたした。

    時期はニ月。梅の銙りが挂っおきお暪笛の悲しい気持ちを玛らわしおくれたすが、埀生院の堎所がどこだか刀らず、暪笛たちは右埀巊埀しおしたいたす。そんな時どこかの僧房から念仏が聎こえおきたす。これは時頌滝口入道の声に違いないず思い、連れの女性に「仏門に入った姿であっおも、䞀目お䌚いしたいのですが。」ず聎きに行かせたした。

    その様子を襖越しに芋おいた滝口入道は、「暪笛のこずを気の毒に思うが、䌚っおしたえば自分の気持ちが倉わっおしたう。」ず思い、別の僧に「そのような者はここにいない。お門違いであろう。」ず語らせ、暪笛を垰したした。

    暪笛は情けなく、恚めしい気持ちになったけれども、頌りなく涙をこらえお郜ぞ垰っお行きたした。

    ◇

    滝口入道は同宿の僧に「ここは静かで修業に良かったのですが、䞍本意にも別れた女性にここを知られおしたいたした。䞀床は玍埗しお垰っおもらったのですが、自分を慕う気持ちが匷ければ、きっずたた蚪ねおくるでしょう。そのようなこずになったら自分も気持ちが揺らいでしたいたすので、こちらを出おいきたす。」ず䌝え、埀生院を出お女人犁制の高野山ぞ旅立ちたした。

    しばらくしお滝口入道は、暪笛もたた出家したこずを䌝え聎き、䞀銖の歌を送りたした。

    そるたでは 恚みしかずも梓匓 たこずの道に 入るぞ嬉しき

    「あなたが尌になるたでは、さぞや私のこず恚んだこずでしょう。でも、あなたが私ず同じ仏門に入ったず聎いお、私はずおも嬉しいです。」

    ◇

    それに察し暪笛はこう返歌をしたした。

    そるずおも 䜕か恚みむ梓匓 匕きずどむべき 心ならねば

    「尌になったからずいっお、䜕もあなたのこずを恚んでいたせん。匕き止められないほどの、あなたの決心だったのですから。」

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    ◇

    暪笛は奈良の法華寺に入り、滝口入道に想いを銳せながら過ごしおおりたしたが、ほどなくしお亡くなりたした。

    これを聎いた滝口入道は、いよいよ修行に専念したした。やがお芪䞍孝を蚱され、人々から慕われる高野聖になりたした。

    ある日、䞉䜍䞭将平維盛が高僧になった滝口入道に䌚いたいず思い、高野山を蚪れたした。

    郜仕えのずきは立烏垜子姿に髪を撫で぀けた華やかな男だったのですが、䌚った時には、痩せ衰え、深く仏道に垰䟝した老僧姿になっおおりたした。

    ただ䞉十歳手前ではありたしたが、この高野聖の高朔なさたを芋お、䞉䜍䞭将はうらやたしく思いたした。

    のちに滝口入道は玀䌊勝浊で䞉䜍䞭将の入氎にも立ち䌚ったずも蚀われおいたす。

    おわりに

    これは平家物語の巻十「維盛高野」に登堎する小さな愛の物語です。

    埀生院で远い返され、どうにも気持ちが治たらない暪笛は、指を切っお流れ出た血で、そばの岩にこう蚘したした。

    「山深み 思い入りぬる柎の戞の たこずの道に 我れを導け」

    「山深い荒寺たで、仏道に入っおしたった圌のために来たのだから、䌚わせおください。」ずいう気持ちでしょうか。

    滝口入道が念仏修行をしおいた埀生院は、その名にちなみ珟圚「滝口寺(たきぐちでら)」ず名を倉え、嵯峚の山の䞭にひっそりず建っおいたす。そしお今でも暪笛が血で蚘したずされるその岩を芋るこずができたす。

    「源平盛衰蚘」よるず暪笛は出家せず、「片想いのたた、いかにながらえよう」ず川に身を投げお17歳で亡くなっおしたったそうです。滝口入道は暪笛の死を悲しみ、圌女を匔うために各地を行脚し、やがお高野山ぞ入ったずも䌝えられおいたす。

    ふたりの亀わした歌はいずれも「梓匓」が䜿われおおり、剃髪を意味する「そる」あるいは「匕き」止めるこずのできない心にかかっおいるのですが、私的には梓匓は「匕かれるもの」ですから「惹かれる」ずいう意味もあるのではず思っおおりたす。

    暪笛が歌った岩の歌ず、滝口入道ぞの返歌のニ銖が本圓であるならば、「身分が䜎い」ず蚀われた暪笛も、たたそれなりに教逊のある女性であったず思われたす。(建瀌門院の䟍女になるくらいですから)

    嵐山駅から自転車でも25分くらい。「そこ」に行こうず思わなければ決しお行くこずのない、小さな叀寺の、小さな愛の物語です。

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    2019幎初倏 滝口寺にお

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    【♡&フォロバしたす】普段は医療犏祉系の倧孊、専門孊校の講垫や研究員をしおいたす。医療・教育業界に぀いお、個人的芋解を発信する傍ら、歎史や文孊の゚ッセンスを織り亀ぜ、教逊、お仕事に圹立ちそうな蚘事を思い぀くたた曞いおいたす(*Ž∀*)

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