#18【お外にゃん模様】ボス猫が守った、小さな命 | 前編「守る理由は、きっといらなかった」
外で生きる猫たちは、
気まぐれで、孤独で、
それぞれが自由に生きている‥‥
そんなふうに思っていました。
でも、ある日出会ったのは、
“血のつながりではないのに、守ろうとする関係”でした。
ボス猫と呼ばれる一匹の猫と、
小さな子猫。
理由なんて、きっとなかった。
それでも、確かにそこにあった「やさしさ」の記録です。
① この辺りのボス猫、チャチャさん
この辺りには、ひときわ存在感のある猫がいます。

名前は、チャチャさん。
いわゆる“ボス猫”と呼ばれる存在で、
気づけばいつも、いろんな猫を連れて歩いている子です。
堂々としていて、
どこか風格もある。
でも、不思議と怖さはなくて、
むしろ、その場の空気をやわらかくするような存在でした。
強いから従わせている、というよりは、
「この子のそばにいると安心する」
そんな理由で、自然と猫たちが集まっているように見えたのです。
ボス猫という言葉だけでは、きっと足りない。
チャチャさんは、
この場所で暮らす猫たちにとって、
ひとつの“拠りどころ”のような存在です。
② チョコちゃん家族との関係
そんなチャチャさんと、特に仲が良かったのが、
バッキーのママであるチョコちゃんでした。

2026年2月のこと。
チョコちゃんは、4匹の子猫を連れて、
我が家の庭に現れました。

「ここに来れば、ご飯がもらえるよ」
そんなふうに、チョコちゃんが子猫に教えているかのように。
庭に置いた段ボールハウスを拠点に、
しばらく過ごすこともありましたが、
1週間ほど滞在すると、また姿を消し、
しばらくすると、ふらりと戻ってくる。
そんな生活を、繰り返していました。
完全に居つくわけでもなく、
でも、まったく離れてしまうわけでもない。
外で生きる猫たちならではの、
絶妙な距離感の中で、暮らしていたのです。
そして―
チョコちゃんたちが庭にいるとき、
そのそばには、いつもチャチャさんがいました。

まるで当たり前のように。
③ チャチャの見守り
チョコちゃんが子猫たちと一緒にいるとき、
チャチャさんは、その少し後ろで、
静かにその様子を見守っていました。

前に出るわけでもなく、
かといって、離れるわけでもない。

ただ、そこにいる。
その距離感が、とても自然で、
そして、どこかあたたかいものに感じられました。
さらに印象的だったのは、
チョコちゃんがその場にいないときです。
子猫たちだけが庭で遊んでいるときも、
チャチャさんは近くにいて、
そっと目を配っているようでした。

危険がないか、
ちゃんと過ごせているか。
言葉にすればそんな感じなのかもしれませんが、
その姿は、まるで―
父親のようにも見えました。

血のつながりはないはずなのに、
確かにそこにある関係。
“守る”という行動に、
理由なんていらないのかもしれない。
そんなことを、
このときはまだ、ぼんやりと思っていました。
④ 崩れていく子猫たちの時間
そんな穏やかな時間は、
ある日を境に、少しずつ変わっていきました。
3月の上旬頃。
チョコちゃんが、
次の妊娠をしている様子だったのです。

それまで子猫たちに寄り添っていたチョコちゃんは、
どこか距離を取るようになり、
時には、近づこうとする子猫を避けるような仕草も見せるようになりました。
外で生きる猫にとって、
それは決して珍しいことではありません。
次の命を守るために、
今いる子猫たちを突き放す。
本能としての行動。
頭では分かっていても、
目の前で起きているその変化は、
やっぱり少し、切ないものでした。
そしてその頃から、
子猫たちは、少しずつバラバラに行動するようになります。
4匹でいたはずの姿が、
気づけば2匹になり、
やがて、1匹だけになる時間が増えていきました。

その中で、最後までこの場所に残っていたのが、
バッキーでした。
⑤ バッキーとチャチャの距離が縮まる
まだ小さなバッキーは、
きっと、ママのぬくもりが恋しかったのでしょう。
そんなとき、そばにいたのが
チャチャさんでした。

バッキーは、自然とチャチャさんに近づき、
体をすり寄せるようになっていきました。

そして、あるとき見た光景に、
私は思わず息をのみました。

バッキーが、チャチャさんのお腹に顔をうずめ、
おっぱいを探すような仕草をしていたのです。

チャチャさんは、雄です。
それでも、その行動を拒むことなく、
ただ静かに、そのまま受け入れていました。

言葉では説明できない、
でも確かにそこにある、やさしさ。
血のつながりなんてなくても、
役割なんて関係なくても、
「この子を守る」という気持ちが、
そこにはあったのだと思います。
それからというもの、
バッキーはいつもチャチャさんのあとを追うようになりました。


一緒に外猫ハウスで休むこともあり、
その姿は、まるで本当の親子のようでした。

⑥ 守る理由は、きっといらなかった
チャチャさんが、なぜバッキーのそばにいたのか。
本当の理由は、きっと分かりません。
でも、理由なんて、なくてもいいのかもしれません。
そこに、小さな命がいて。
その命が、不安そうに寄り添ってきたときに、
ただ、離れずにそばにいる。
それだけで、十分だったのだと思います。
外で生きる猫たちは、
それぞれが自由で、
ときに厳しい選択の中で生きています。
それでも
その中に、こんなにもやさしい関係があることを、
私は、このふたりから教えてもらいました。

そして、この物語は、まだ続きます。
守ることは、
ときに“離れること”と、同じ意味を持つこともあるからです。
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