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「全部、コンプリートできました」──寝たきりでも、行きたい場所へ。川越バリアフリー観光実証プロジェクト

    2026年6月14日(日)、埼玉県川越市にて「医療と福祉の連携で実現するバリアフリー観光実証プロジェクト【川越編】」を実施しました。

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    私たちは、民間救急サービスを展開する「バグースケアタクシー」と、保険外(自費)の看護サービスを提供する「さいたまナースケア」による共同プロジェクトとして、「行けないを、行ける、にかえる」をコンセプトに活動を開始しました。

    その実証実験の様子と、実際に歩いて見えてきたことをご報告します。


    今回、川越を実証フィールドに選んだ理由は、

    年間を通して多くの観光客が訪れる人気観光地でありながら、比較的コンパクトなエリアに歴史的建造物や飲食店、休憩施設が集まっているためです。

    また、川越市は、私たちが暮らす市に隣接しており、馴染み深いところから

    「観光地として楽しめるか」

    「ストレッチャーで安全に移動できるか」

    の両面を検証するには最適な場所でした。


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    今回の実証ルート

    9:30 蓮馨寺(れんけいじ)スタート
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    10:00 大正浪漫夢通り
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    10:45 菓子屋横丁
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    11:30 りそなコエドテラス 昼食
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    12:30 時の鐘
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    13:00 喜多院(きたいん)

    所要時間:約5時間
    休憩回数:3回
    トイレ確認箇所:3か所


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    いざ、出発!


    ストレッチャーのまま、川越の名所へ


    蓮馨寺(れんけいじ)を出発し、大正ロマン通り、菓子屋横丁、そして、時の鐘や喜多院へ。

    「寝たきりの状態だから、観光地へ行くなんて諦めるしかない……」

    そう思われている方に、移動と旅の楽しみを届けたい!
    そんな想いから、はじまったプロジェクト。

    事前の現場調査をふまえて、当日は、街の段差やバリアフリートイレの設置状況などを細かく確認しながら、ストレッチャーでの観光動線を検証しました。

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    焼き団子が食べたい!

    日曜日の川越は、多くの観光客で賑わっていました。

    正直、ストレッチャーでの移動は、難しい場面もあるのではないか?と想定していました。

    しかし実際には、道路の段差は少なく、また、多くの方が自然に道を譲ってくださるなど、危険を感じる場面は、ほとんどありませんでした。


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    旅の安全を祈願

    今回、ご協力いただいた利用者さんは、病気の後遺症による障害のため、歩くことができません。一人で外出はおろか、観光や旅を楽しむことは、病気を発症以来ありませんでした。

    理由は、

    「どうせ、無理だから」

    「ひとりじゃ、行けないから」

    「まわりの人に迷惑をかけるから」


    私も今まで、さまざまな現場で働いてきて、この言葉は幾度となく聞いてきました。

    特に終末期にある方は、「死ぬまでに、行きたい場所がある」「最後に、あの場所に、もう一度行きたい」と口にしても、実際に叶う方は、ほとんどいません。

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    でも、本当は願っている。

    もし、許されるのなら
    「だれかがいれば」
    「環境が整えば」行きたい。

    でも、遠慮して、口に出せないのです。

    「行けない」とあきらめている人たちに、
    「行ける」選択肢があることを、まず知ってもらう。


    そして、ストレッチャーや車椅子で旅をすることで、多くの人に、「こんなふうに、出かけることができるんだ!」と感じてもらうことにも、大きな意味があると思っています。

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    りそなコエドテラス


    休憩は、川越観光のメイン通りに面する『りそなコエドテラス』にて。

    駐車場や広場が広く、ストレッチャーでも余裕をもって移動が可能。キッチンカーも出ており、木陰で涼みながら、のんびり休むことができました。

    車両と観光客がひしめき合うメイン通りを、ストレッチャーで移動することは叶いませんでしたが、賑やかな街の風景を眺めているだけでも、楽しいと笑顔がこぼれます。


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    実は利用者さん、大のパン好きで、甘い物も大好き。事前に食べてみたいパン屋、スイーツをリサーチ済み。次々と、お店の名前が出てきます。

    「いつもは、ヘルパーさんに買い物をお願いして、買ってきてもらうだけ。コンビニにあるものは、どこに行っても買えるものでしょ。でも、今日は違う。ここにしかない、ここでしか買えないものが買える。こんな、嬉しいことはないです。」と利用者さん。

    ホカホカの川越名物「いも恋」を、美味しそうに頬張る顔や

    時の鐘では、空を見上げながら、

    「全部、コンプリートできました。本当に、来られてよかった」

    とつぶやかれた言葉が印象に残っています。


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    次に食べたいものを相談しています


    広場でトイレを探す私たちを見て、タロタロキッチンカーの店主さんが声をかけてくれて、わざわざ、トイレの場所まで案内していただきました。

    「川越の街が好きだから、いろんな人に楽しんでもらいたいね」

    店主さんの言葉に、次なるプロジェクトへの意欲も湧いてきます。


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    タロタロキッチンカーのマラサダ、美味しかった!

    また、観光客の皆さんも自然にスペースを空けてくださり、

    「がんばってください」

    「楽しんでくださいね」

    と声をかけてくださいました。

    バリアフリーは設備だけでなく、人の優しさによって成り立っていることを改めて感じました。

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    今回見えた課題


    • 夏場の暑さ対策

    当日は、曇り空で、気温がそれほど高くないことが幸いしました。それでもずっと、寝ている利用者さんは、背中に汗をかいていたことを考えると、夏場は、万全な暑さ、発汗、熱中症対策が必要だと痛感しました。

    • 雨天時

    今回は雨に降られず、終えることができましたが、梅雨の時期なので、雨天時の対応は事前に考えておく必要があります。今回は、降車する場所にもっとも近い駐車場に停め、急な雨でも、すぐに車内に移動できるようにしました。そのぶん、車の乗車⇔降車が頻回になってしまい、利用者さんにはやや負担がかかったかもしれない点が気になります。

    • トイレ問題

    トイレは、事前の現地調査の段階で、訪問先のトイレを訪問。バリアフリーになっているか、ストレッチャーでも使用可能か?などを確認しました。特に神社などは、社務所や関係者の方にお声がけさせていただきました。

    りそなコエドテラスのユニバーサルトイレは、ストレッチャーのままでもスムーズに出入りすることができ、さすがだなーと思いました。


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    りそなコエドテラスのトイレ
    • 電源確保や医療機器管理

    今回は、電源を必要とする医療機器の使用はありませんでした。今後、吸引器や人工呼吸器が常時、必要な方であったり、緊急時の対応などについても、スタッフ間で綿密な打ち合わせが必要になります。救急救命士と訪問看護師だからこそ、お互いの経験と知恵で、より安全な旅が提供できるよう、努めていきたいと思います。


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    ストレッチャー利用者から見た川越


    川越の街は、段差が少なく、ストレッチャーでも、比較的スムーズに移動することができました。ただし、路面が石畳のため、場所によっては、移動が厳しいところもありました。振動が身体に与える負担も懸念されます。

    随時、利用者さんの体調を観察しながら、無理なく、旅を楽しみました。


    日曜日の川越は、多くの人でにぎわい、お昼をピークに街は、人であふれます。車の通行もあるため、ストレッチャーで観光することは難しく、危険を伴いそうな場所を避けて移動。午前中の早い時間から、動き出したのは正解でした。

    しかし、メイン通りから外れた路地をはいると、ステキなお店が軒を連ねており、川越は、いろんな楽しみ方ができる街だなーと思いました。


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    このプロジェクトを支えてくれた仲間

    今回、撮影に協力してくれたOさんにも心から感謝しています。

    Oさんは救急救命士として救急現場で活躍する一方、プロ顔負けの撮影技術と映像制作のセンスを持つ方です。

    このプロジェクトの趣旨に賛同し、貴重な時間を使って旅の記録を残してくださいました。

    利用者さんの表情や街の風景、私たちが見た景色を形として残すことができたのは、Oさんのおかげです。本当にありがとうございました。


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    最後に


    「寝たきり」と「外出できない」は同じではありません。

    病院や施設で長く過ごしていると、本人も家族も、そして支援者でさえも、

    「この人はもう外出できない」と思い込んでしまうことがあります。

    しかし今回、時の鐘を見上げる利用者さんの表情や、食べたかったものを食べる姿を見て、私たちは改めて感じました。

    人は、歩けなくなったから外出をあきらめるのではない。

    「どうせ無理だ」と思ったときに、外出をあきらめてしまうのかもしれません。


    もし、支えてくれる人がいて、

    もし、環境が整っていて、

    もし、「行ってみましょう」と背中を押してくれる人がいたなら。

    諦めていた景色に、もう一度会えるかもしれません。


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    今回の実証実験で見えたのは、バリアや課題だけではありませんでした。

    観光客の皆さんの心遣い。

    声をかけてくださった街の人の温かさ。

    そして何より、

    「全部、コンプリートできました。本当に、来られてよかった」

    という利用者さんの言葉です。その一言が、このプロジェクトの意味を物語っているように思います。


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    川越は、優しさにあふれる街でした。

    そして私たちは、この街で「行けない」を「行ける」に変える可能性を確かに感じることができました。

    今回の経験を活かし、これからも一人でも多くの「行きたい」に寄り添っていきたいと思います。






     
     
     
    30年以上、医療と介護の現場を歩いてきた看護師です。 病院でもない。カウンセリングでもない。でも、ちょっと話せる場所。 更年期、親の介護、老い、働き方、看取り。人生後半の「揺らぎ」を言葉にしています。 埼玉を中心に、いろんな“場”をひらいています。個別でもお話を聴いています。

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