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第14回|「この家、私が住み続けても大丈夫ですか?」離婚で一番怖かったのは住宅ローンだった


    「できれば、この家には住み続けたいんです」

    52歳の恵美さんが言いました。

    前回、

    「今のまま夫婦で暮らす」

    「別居する」

    「離婚する」

    3つのライフプランを並べた女性です。

    離婚するかどうか。

    まだ結論は出ていません。

    ただ、一つだけ強い希望がありました。

    「娘が大学を卒業するまでは、できれば生活を変えたくない」

    今の家には、

    娘の部屋があります。

    通学にも便利です。

    近所には、長年付き合ってきた人もいます。

    恵美さん自身も、

    できれば住み慣れた場所を離れたくありません。

    そこで、こう聞かれました。

    「離婚しても、私がこの家に住み続けることってできますよね?」

    私は、すぐには答えませんでした。

    なぜなら、

    離婚と住宅ローンは、

    「誰が家に住むか」だけでは決められないからです。

    今回は、

    離婚するときの「家」と「住宅ローン」を考えます。

    ※この記事は、相談現場で見られる悩みをもとに再構成したモデルケースです。人物・会話・金額は説明用に設定しています。特定のお客様の実話ではありません。


    【家は、夫名義だった】

    恵美さん夫婦は、

    15年前に一戸建てを購入しました。

    現在の住宅ローン残高は、

    約900万円。

    不動産会社に簡易査定を依頼すると、

    家の売却価格は、

    およそ2,500万円前後になりそうでした。

    ここだけを見ると、

    恵美さんは少し安心しました。

    「2,500万円の家に、

    ローンが900万円ですよね?」

    「だったら1,600万円くらいの資産があるってことですよね?」

    大まかな考え方としては、

    そうなります。

    ただし、

    実際には売却費用などもあります。

    そして、

    もっと重要なことがありました。

    住宅の名義。

    住宅ローンの名義。

    連帯保証人。

    この3つです。

    確認すると、

    家の所有名義は夫。

    住宅ローンの債務者も夫でした。

    恵美さんは言いました。

    「でも、離婚するときに、

    家を私の名義に変えればいいんですよね?」

    ここが、

    離婚と住宅ローンで誤解されやすいところです。


    【夫婦で決めても、銀行との契約は別】

    例えば、

    離婚するときに夫婦で、

    「家は妻のものにする」

    と合意したとします。

    しかし、

    それだけで住宅ローンの債務者まで、

    妻へ変わるわけではありません。

    住宅ローンは、

    金融機関との契約です。

    法テラスも、

    ローン付き住宅の所有権を移す場合、

    債権者の承諾なく名義変更できない場合が多いと案内しています。ほうてらす

    つまり、

    夫婦の話し合い。

    家の名義。

    住宅ローン。

    これは、

    分けて考える必要があります。

    恵美さんは、

    少し驚いた表情をしました。

    「離婚届を出して、

    家を私のものにすれば終わりだと思っていました」

    そう簡単ではない場合があります。


    【一番怖いパターン】

    恵美さんが希望していたのは、

    こんな形でした。

    自分と娘は家に住み続ける。

    家のローンは、

    しばらく夫が払う。

    一見すると、

    成立しそうに見えます。

    でも、

    住宅ローンの債務者が夫のままなら、

    金融機関に対する返済義務も夫に残ります。

    もし数年後、

    夫の収入が減ったら?

    再婚したら?

    病気になったら?

    「もう払えない」

    と言われたら?

    夫婦間で約束をしていても、

    住宅ローンの返済が滞れば、

    家に住み続けられなくなるリスクがあります。

    法テラスも、

    夫がローン債務者のまま妻が家に住み続けるケースでは、

    夫が返済を怠ると抵当権が実行され、

    妻が住宅を失うおそれがあると説明しています。ほうてらす

    恵美さんは、

    しばらく黙りました。

    そして言いました。

    「それは怖いですね……」


    【家を残す方法は、一つではない】

    そこで、

    家についても複数の未来を並べることにしました。

    一つ目。

    家を売却する。

    二つ目。

    恵美さんが家を取得し、

    住宅ローンについて金融機関と相談する。

    三つ目。

    一定期間、

    現在の契約関係を残しながら住む。

    それぞれに、

    メリットと注意点があります。

    大切なのは、

    「私は家を残したい」

    だけで決めないことです。

    その家を、

    誰が所有するのか。

    誰がローンを返すのか。

    何年間住むのか。

    そして、

    その後どうするのか。

    ここまで考えます。


    【売却したら、生活はどう変わる?】

    仮に、

    2,500万円で家を売却できたとします。

    住宅ローン残高は900万円。

    単純に引けば、

    1,600万円です。

    ただし、

    実際には仲介手数料などの売却費用も考える必要があります。

    さらに、

    残った金額すべてが、

    そのまま恵美さんのお金になるわけではありません。

    婚姻中に夫婦が協力して築いた財産は、

    名義が一方だけでも、

    財産分与の対象となる可能性があります。ほうてらす

    具体的な分け方は、

    ほかの財産や事情も含め、

    夫婦の協議や法的手続きで決まります。

    そこはFPが判断する部分ではありません。

    でも、

    仮に受け取れる金額が決まれば、

    その先の生活は計算できます。

    例えば、

    家を売って賃貸へ移る。

    家賃を月8万円とします。

    年間なら96万円。

    10年間なら、

    単純計算で960万円です。

    「家を売ればローンがなくなる」

    だけではありません。

    その後の住居費も、

    ライフプランに入れる必要があります。


    【では、家をもらえば安心?】

    次は、

    恵美さんが家を取得するケースです。

    恵美さんは、

    少し笑顔になりました。

    「それなら、

    家賃を払わなくて済みますよね?」

    でも、

    ここでも確認があります。

    ローンは、

    まだ900万円残っています。

    家を維持すれば、

    固定資産税。

    火災保険。

    修繕費。

    将来的には、

    給湯器や屋根、

    外壁などの費用もかかります。

    さらに、

    恵美さん自身が住宅ローンを引き継いだり、

    新たに借り換えたりできるかどうかは、

    金融機関の審査や契約条件によります。

    「家をもらえる」

    ことと、

    「無理なく維持できる」

    ことは別なのです。


    【私は、この質問をしたい】

    こういう相談で、

    私は金額だけでなく、

    もう一つ確認したいことがあります。

    「その家に、

    10年後も住みたいですか?」

    恵美さんは、

    少し考えました。

    娘は大学2年生。

    あと数年すれば、

    就職して家を出るかもしれません。

    すると、

    50代後半の恵美さんが、

    一人で一戸建てに暮らす可能性があります。

    「そう言われると……

    娘がいるから残したい気持ちが大きいのかもしれません」

    今の気持ちと、

    10年後の暮らし。

    同じとは限りません。

    離婚のときは、

    今の生活を守ることに意識が集中します。

    でも、

    家は長く付き合う資産です。

    だから、

    5年後。

    10年後。

    老後。

    そこまで見て考えたいのです。


    【家は「思い出」でもある】

    ここで、

    数字だけでは割り切れない問題があります。

    家には、

    思い出があります。

    娘が小学生だったころ、

    リビングで宿題をしたこと。

    庭で家族とバーベキューをしたこと。

    壁についた傷。

    誕生日。

    クリスマス。

    いろいろな時間があります。

    だから、

    「売った方が得です」

    という数字だけで、

    簡単に決められるものではありません。

    一方で、

    思い出を守るために、

    これからの生活が苦しくなってしまうのも違います。

    気持ちとお金。

    両方を見る必要があります。


    【恵美さんが出した答え】

    恵美さんは、

    すぐに家をどうするか決めませんでした。

    まず、

    家の正式な査定を取る。

    住宅ローンの契約内容を確認する。

    金融機関へ相談する。

    そして、

    家を残した場合と、

    売却した場合。

    両方のライフプランを見ることにしました。

    「家を手放したくない」

    という気持ちは、

    まだあります。

    でも、

    以前とは少し違います。

    「絶対にこの家に住み続ける」

    ではなく、

    「住み続けても、

    私の人生が苦しくならないか確認したい」

    に変わりました。

    私は、

    それでいいと思います。


    【離婚で怖いのは、家の値段だけではない】

    離婚時の住宅では、

    「今いくらで売れるか」

    ばかりに目が行きがちです。

    でも、

    確認したいことはそれだけではありません。

    住宅ローンの残高。

    ローンの契約者。

    家の所有名義。

    保証関係。

    今後の返済額。

    修繕費。

    売却した場合の住居費。

    老後も住み続けるのか。

    そして、

    夫婦の財産分与。

    ここまで並べて、

    初めて比較できます。

    なお、

    離婚したからといって、

    連帯保証人などの責任が自動的になくなるわけではありません。

    法テラスも、

    保証契約は債権者との契約なので、

    離婚だけを理由に保証責任が消えるものではないと案内しています。ほうてらす

    契約関係は、

    必ず金融機関や専門家へ確認してください。


    【FPとして伝えたいこと】

    離婚のライフプランでは、

    感情と数字を分ける必要はありません。

    むしろ、

    両方を見ることが大切です。

    「娘のために家を残したい」

    その気持ちは、

    大切にしていい。

    そのうえで、

    「本当に維持できる?」

    を数字で確認します。

    もし維持できるなら、

    一つの選択肢です。

    もし難しいなら、

    別の住まい方を考える。

    ライフプランは、

    希望を否定するためのものではありません。

    希望を実現するために、

    何が必要かを見るためのものです。


    【今日やることは3つだけ】

    □ ① 家と住宅ローンの名義を確認する

    登記上の所有者。

    住宅ローンの債務者。

    連帯保証や連帯債務の有無。

    まず契約書を確認します。

    □ ② 住宅ローン残高と家の現在価値を確認する

    ローン残高だけではなく、

    家が現在いくらで売れそうなのかも確認します。

    □ ③ 「5年後もこの家に住みたい?」と自分に聞く

    今の気持ちだけではなく、

    子どもの独立後や老後も想像してみます。

    今日は、

    一つ確認できれば十分です。


    【最後に】

    「この家、私が住み続けても大丈夫ですか?」

    最初、

    恵美さんが知りたかったのは、

    その答えでした。

    でも、

    本当に必要だったのは、

    YESかNOではありませんでした。

    家を残した未来。

    家を手放した未来。

    それぞれの生活を、

    数字にして見ることでした。

    離婚するとき、

    家は大きな問題になります。

    資産でもあり、

    借金でもあり、

    生活の場所でもあり、

    家族の思い出でもあるからです。

    だから、

    急いで結論を出さなくてもいい。

    まず、

    「この家をどうする?」

    ではなく、

    「これから私は、どんな暮らしをしたい?」

    そこから考えてみてください。

    家の答えは、

    その先にあるのかもしれません。


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    「ゆるマネ喫茶」店主。 FP・IFAとしてお金の相談に携わりながら、株式・投資信託を運用する不動産オーナー。 資産運用・資産形成・NISA・保険など、むずかしいお金の話をやさしく、わかりやすくお届けします。ゆるマネ喫茶へ集合💰 (フォロバ100)

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