好きという感情は手間で面倒で、かけがえのないものである。
人間、好きが極まると簡単に理性を失うらしい。
最近の言葉でいうと
「好きな人フィルターかかってるんで」
である。(『Tシャツが乾くまで』より)。
といってもわたしの場合、人じゃなくて猫フィルターだけど。
なんと、来週わが家に新しい家族——小さな子猫を迎え入れることになった。
noteのアイコンを実家の愛猫にするほど筋金入りの猫好きであるわたしにとって、これは人生の一大イベントだ。胸の奥がずっとソワソワしていて、居ても立ってもいられない。
「快適な環境を用意してあげたい」
と意気込んだわたしとパートナーは、迷うことなく財布の紐を解き放ち、ハイテク猫グッズを爆買いした。
「愛とは課金である」
Amazonの画面みてポチリにポチリまくった。まだ見ぬ子猫の幻影に、わたしの脳内は花畑である。
全自動猫用スマートトイレ
循環式給水器
量も調整できる自動給餌器
「これで準備は完璧。スマートで快適なライフが始まる!」と、誇らしげに胸を張っていた。
……巨大なダンボールが家に届くまでは。
愛が空回りした部屋と、巨大な宇宙船
思った以上に早く、注文した品々を受け取ることができた(未だにフランスの配達システムを信用していない)。
届いた全自動猫用スマートトイレのダンボールを見て、わたしは絶句した。

……デカい。
想像以上にデカい。
写真では伝わりにくいが、両手で段ボールを抱え込んで部屋まで運んだ。
通路の一角を堂々と占領するその姿は、猫のトイレというより、もはや「小型の宇宙船」の不時着である。
まあ部屋が狭くなろうと、愛の大きさだと思えば……と震える手で説明書を開いたわたしに、容赦ない現実が突きつけられる。
『※体重1.5kg以下の幼猫には危険なため、使用しないでください』
『※子猫用の固まらない砂は適応していません』
……え?
嫌な予感がして自動給餌器の仕様も確かめる。子猫のうちはウェットフードが基本。当然、カリカリ用の自動給餌器が使えるはずもない。
わたしたちが完璧な愛として買い揃えたハイテク機器たちは、子猫が成長するまでの約1年間、「狭い部屋をさらに圧迫する置物」になることが確定した。


とりあえず、組み立てておいた
手間がかかるからこそ、愛おしくてたまらない
「結局、全部手作業かい!」とセルフツッコミを入れながら、でも不思議と口元はゆるみっぱなしだ。
これからしばらくは小さなお皿にウェットフードを慎重に盛りつけ、小さなスコップでちまちまとトイレを掃除することになる。
ハイテクマシンに頼るはずだったその時間は、わたしたちが直接この手で小さな命のお世話をする時間へと変わった。
効率化もいいけれど、手をかけ、時間をかけた分だけ、愛はどこまでも深く、大きく育っていく。
お金をかけるのも愛だけど、泥臭く手をかける時間も、きっとかけがえないものになるのだろう。
どこかの論文では「動物と暮らすと幸福度が上がる」という研究結果がでたらしい。恐らくそれは正しい。わたしの心はすでに溢れんばかりの幸福感で満たされている。
どんよりと暗く冷たい空気続くフランスの冬だって、今年はきっと、小さな太陽がいるみたいに温かく過ごせるはずだ。
部屋の片隅に鎮座する巨大な宇宙船を眺めながら、まだ見ぬ小さな家族を迎えるカウントダウンを進めている。
待ち遠しくて、愛おしくて。今日も心がウキウキと踊って止まらない。

してくれることを願う
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