
少しずつ、君へ #40【最終話】
《39日目 積み重ねた勇気は──》
「瑞樹、俺さ……」
言葉を選ぶ優士。きっと、僕を傷つけない言葉を探してるんだ。
「俺はね、瑞樹が笑ってくれるだけで心が軽くなるんだ」
それは、僕を通して──
ダメだ、嫌な思考が溢れてくる。
「でも、瑞樹に優しくしたいのは、もうあの子に似てるからじゃないよ」
前にも聞いた。でも、僕はそこから抜け出せてないんだよ。
「俺は今の瑞樹を大切にしたい。今度こそ守りたいんだ」
「あの子の代わりに?」
「え?」
「あっ……」
心が漏れてしまった。しかも、絶対ダメなやつが。
「瑞樹はあの子の代わりなんかじゃない」
優士の強い瞳にたじろぐ。僕を見上げる優士は、瞬きも忘れて僕を見つめたまま。
「ごめ──」
「謝んないで。瑞樹にそう思わせたのは俺のせいだよね。ごめん」
どうして優士が謝るんだ。悪いのは、僕の汚い心なのに。
また、ポロポロッと涙が零れた。
「泣かないで、瑞樹」
親指で、涙をそっと拭ってくれる。
そして、優しく笑いかけてくれる優士。
「ねぇ瑞樹。俺さ……」
優士の言葉を待つ──
だけど、優士はその先を言ってくれない。
それでも、優士は目を逸らさない。
「……わかるでしょ?」
どうしてだろう。初めて、優士の心がわかっちゃったよ。
「うん」
「瑞樹は?」
秘めていた想いを、たった一言に乗せる。
「僕も」
これだけで充分だと思った。
滑り台の向こう側から夕陽が射す。優士の顔が、少し赤らんで見える。
今度こそ──
逃げないと決めて、優士に手を伸ばす。
それと同時に、優士が手を差し出した。
指先が触れる。
優士が、僕の指を包んだ。
少し冷えた指先。
──あぁ、やっと触れられた。
「優士、僕ね……」
夕方を知らせる音楽が、僕の言葉をかき消した。けど、別に構わない。
優士は笑顔で、僕の手を引いて立たせてくれた。僕は優士の隣に並ぶ。
そして、僕はその手をギュッと握り返した。
少しずつ、君へ。
想いはちゃんと届いてたんだね。
fin
あとがき
ここまでお読みくださって、ありがとうございました🍀*゜
優士と瑞樹の焦れったい距離感……
いかがでしたでしょうか🤭
一言でも感想をいただけると励みになります。
よろしくお願いします(*ᴗ͈ˬᴗ͈)ꕤ*.゚