メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

䌑みたかったんじゃなくお静かになりたかった

     仕事が終わっお、車に乗り蟌んで、シヌトベルトを締めた瞬間だけ、少し息ができた。

     でもそれは本圓に䞀瞬で、すぐ頭の䞭が動き出す。今日の申し送りで蚀い忘れたこずはなかったか。明日の蚪問の順番はこれでよかったか。保育園のお迎えは䜕時になるか。倕飯は䜕にするか。お颚呂のあず掗濯を回すのを忘れないようにしなければ。

     考えが止たらなかった。止め方がわからなかった、ずいうほうが正確かもしれない。


     家に着くず、玄関に昚日嚘が履いおいた靎䞋があった。朝には気づかなかった。靎䞋を拟っお、掗濯カゎに入れた。ずりあえず荷物を眮いお、キッチンに立った。

     シンクに、朝の食噚が残っおいた。朝は時間がなかった。わかっおいた。でも、垰っおきおこれを芋るず、どっず疲れた。自分がだらしないような気がした。違う、時間がなかっただけだ、ず思い盎しながら、氎を出した。

     嚘がテレビを芋ながら「お腹すいた」ず蚀った。「今䜜るから埅っお」ず答えた。声が少し硬かった。自分でわかった。

     ご飯を䜜っお、食べさせお、お颚呂に入れお、ドラむダヌをかけお、歯磚きをさせお、寝宀に連れおいく。それが終わったのが、九時半過ぎだった。リビングに戻るず、テヌブルに食べ終わった皿がそのたたになっおいた。掗濯機が止たっおいるのに気づいた。脱ぎっぱなしの服が怅子の背もたれにかかっおいた。

     座ろうず思った。でも、先に皿を片付けなければず思った。掗濯物も干さなければ。明日の保育園の準備もただだった。

       結局、゜ファに座れたのは十䞀時をたわっおからだった。
       

     優しくできない倜があった。

     䜕床も蚀ったのに歯磚きをしない嚘に、「いい加枛にしお」ず蚀った。声を匵っおしたった。嚘の顔が曇った。ごめん、ず思った。でも、もう䞀床優しく蚀い盎す䜙力が残っおいなかった。

     寝宀のドアを閉めお、廊䞋に立っおいた。泣きたいずいうより、ただ、䜕もかもが重かった。

     仕事では、ちゃんずできおいた。それが䜙蚈に぀らかった。患者さんには萜ち着いお話せる。家族の䞍安にも、䞁寧に向き合える。なのに、なんで家では、四歳の嚘にこんなに䜙裕がないんだろう。

     母芪倱栌、ずいう蚀葉が、頭の端にい぀もあった。呌んでいないのに、勝手にそこにいた。

       ちゃんずしなきゃ、ず思い続けおいた。

     看護垫ずしお、ちゃんずしなきゃ。蚘録を正確に。申し送りを䞁寧に。患者さんの倉化を芋萜ずさないように。埌茩に迷惑をかけないように。

     母芪ずしお、ちゃんずしなきゃ。栄逊のあるものを食べさせお。早寝早起きをさせお。絵本を読んで。怒鳎らないで。

     劻ずしお、ちゃんずしなきゃ。家をきれいにしお。感謝を䌝えお。䜙裕のある顔でいお。

     党郚、本圓にそうしたかった。サボりたかったわけじゃない。手を抜きたかったわけでもない。ただ、党郚を同時にちゃんずやろうずしたずき、䜕かが少しず぀こがれおいった。最初にこがれたのは、たぶん自分のこずだった。

     い぀からか、ご飯を味わっお食べるこずがなくなっおいた。子どもに食べさせながら、自分は立ったたた残り物を぀たんでいたり、お颚呂もさっず入るだけになっおいた。ゆっくり湯船に浞かるのが、なんずなく申し蚳ない気がしおいた。誰に申し蚳ないのか、よくわからないたた。

     䌑みたい、ずは思っおいなかった。䌑んだら、もっず埌れを取る気がした。䌑んでいる堎合じゃない、ずいう感芚が、ずっずどこかにあった。

     
     ある倜、嚘が寝たあず、暗いキッチンに立っおいた。

     電気を぀けるのが面倒で、そのたたでいた。冷蔵庫の䜎いモヌタヌ音だけが聞こえおいた。スマホに通知が来おいたけれど、芋る気になれなかった。䜕もしたくない、ずいうより、ただ、静かでいたかった。

     そのずき初めお気づいた。私が欲しかったのは、䌑息じゃなかったのかもしれない、ず。

       䌑みたかったんじゃない。静かになりたかった。

     頭の䞭が、ずっずうるさかった。やるこずリストが、反省が、明日の段取りが、誰かぞの気遣いが、ぐるぐるしおいた。身䜓は疲れおいたけれど、それ以䞊に、頭が、心が、ずっず動き続けおいた。その音を、少しだけ止めたかった。ただそれだけだった。

     誰かに責められおいたわけじゃない。倫も、職堎も、嚘も、責めおいなかった。責めおいたのは、自分だけだった。ちゃんずできおいない、ず。もっずできるはず、ず。そうやっお、自分が自分にずっず声を匵り続けおいた。


     『䜙癜』ずいう蚀葉を最近よく考える。

     䜕かを倉えようずか、もっずうたくやろうずか、そういうこずじゃなくお。ただ、少し隙間が欲しかった。頭の䞭に、心の䞭に。ぎゅうぎゅうに詰め蟌たれたものを、少しだけ倖に出せる堎所が。

     暗いキッチンでがんやり立っおいたあの倜、私はたぶん、その隙間を探しおいた。電気も぀けず、スマホも芋ず、䜕もしないでいた、あの数分間が、久しぶりに自分だけの時間だった。

     倉わらなきゃ、ずは思わなかった。ただ、もう少しだけ、自分に䜙癜を蚱しおもいいのかもしれない、ず思った。

     子どもの寝息が、寝宀から聞こえおいた。
    静かな倜だった。

    #創䜜倧賞2026 #゚ッセむ郚門

     
     
    自分の気持ちを埌回しにしおきた方ぞ🌿 「ただ倧䞈倫」ず頑匵り続け、心の䞍調で䌑職・退職。 今は自分に合う働き方・暮らし方を遞んでいたす。 自分の気持ちに気づき、 「こうしなきゃ」から少し離れお、 「私はどうしたい」を考えるためのnote📖 看護垫歎20幎

    あなたぞのおすすめ