
🌿猫と暮らす、小さな哲学㉛「戻れなくなった、朝の静けさ」
朝。
雨はもう止んでいました。
けれど部屋には、
まだ昨日の静けさが、
少しだけ残っている気がしました。
朝ご飯を食べ終えたふたりは、
ベッドの端と端で、
それぞれ静かに眠っていました。

足元では、
お気に入りのタオルケットが、
寝返りの跡みたいに、
くしゃくしゃになっていました。
ふくまるは、
お腹を見せたまま、
小さく寝息を立てていました。
さっきまで、
怖い夢を見ていた気がしました。
何かに追われていたような、
昔の自分に、
引き戻されそうになっていたような。
目が覚めたあとも、
胸の奥だけが、
少し遅れて息をしているみたいでした。
前だったら、
こんな夢を見た朝は、
理由もなく不安になっていた気がします。
もうすぐ、
いつもの時間が戻ってきます。
慌ただしい朝も、
急いで返す言葉も。
たぶん、
何も変わらないまま、
また日々は進んでいく。
それなのに。
今日は、
その流れに飲み込まれる前に、
少しだけ呼吸ができている気がしました。
以前は、
立ち止まる前に、
次のことを考えていた気がします。
けれど今は、
「今の自分が、どんなふうに息をしているのか」
そんなことに、
少しだけ意識が向いていました。
窓の外では、
雲の切れ間から、
やわらかな光が、
少しだけ滲んでいました。

今日もきっと、
慌ただしいまま過ぎていく。
また、
気づかないうちに、
呼吸を浅くしてしまう日もあるのだと思います。
それでも。
今日は、
こうして立ち止まれたことを、
忘れないでいたいと思いました。