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もう一度、高校一年生

    写真館で撮った一枚の写真がある。次男の中学入学と、長男の高校入学のお祝いの写真だ。


    二人とも新しい制服を着て並んでいる。
    一見すると、ごく普通の兄弟の入学記念写真に見える。
    けれど、少しだけ事情が違う。
    次男は中学一年生、十三歳。
    そして長男は高校一年生、十八歳。


    長男は通っていた私立高校を、高校二年生に上がるときに辞めた。
    その後、一年間家にいた。
    私は心配していたが、本人は意外と飄々としていた。
    家にいた一年の間に高卒認定を取り、勉強もしていた。
    だから私はてっきり、そのまま大学に進学するのだと思っていた。
    ところが長男は言った。

    「都立高校に行きたい」

    高卒認定を取っているのだから、わざわざ高校へ入り直さなくてもいい。
    それでも本人は、もう一度高校生活を送りたいと言った。
    そうして都立高校を受験し、合格した。
    全日制の高校。
    長男十八歳、高校一年生。
    周りの同級生は二学年下の十六歳である。
    本人は特に気にしていないようだった。


    入学前、制服を作りに行ったときの話を後で聞いた。
    採寸をしてくれた制服屋さんが長男を見ながら言ったそうだ。

    「もうこれ以上は伸びないね」

    長男は笑ったらしい。
    私もその話を聞いて笑った。
    制服屋さんは何万人もの高校生を見てきたのだろう。
    だから分かったのかもしれない。
    目の前にいるのが、普通の新入生ではないことを。
     
    十八歳の高校一年生。
    けれど、その春の長男は少しも恥ずかしそうではなかった。
    新しい制服に袖を通し、新しい学校へ通うことを楽しみにしているように見えた。そして本当に三年間楽しそうに通学していた。

    今だから書けるけれど、十八歳で車の免許を取ったので、車で高校に通学していたことも数回ある。まるでアメリカの映画のようだった。

    人生には、遠回りでしか見えない景色がある。
    写真館で撮ったあの日の写真を見るたびに思う。
    中学一年生の次男と、高校一年生の長男。
    五歳差の兄弟が、同じ春に新しい制服を着て並んでいた。
    私はそのことが、今でも少しおもしろい。そして少しだけ誇らしい。


    もし今、高校を辞めようか悩んでいる人や、辞めてしまって不安な人がいたら伝えたい。
    人生には一つの正解だけがあるわけではない。


    長男は、一度私立高校を辞めた。それでも十八歳で、もう一度都立高校一年生になった。
    そんな道もある。
    あの春の写真を見るたびに、私はそう思う。

     
     
    小鳥遊純(たかなしじゅん)です。日常や家族の記憶を綴るエッセイ「ちいさなおはなし」をnoteで書いています。 これまで複数のWebメディアで執筆。ご相談はコメント欄へ。

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