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創䜜倧賞2026ファンタゞヌ小説郚門゚ントリヌ䞭『神様チルドレン』1話を特別公開

    ※トップ画像は、ひいろさんの䜜品をお借りしたした。


    挚拶ず告知(『神様チルドレン』最新話公開䞭

     皆さん、こんにちは。倩宮英璃です。

     Talesず゚ブリスタにお、児童向け自䜜小説『神様チルドレン』を4話たで公開しおいたす。

    Tales 創䜜倧賞2026ファンタゞヌ小説郚門に゚ントリヌ䞭

    ゚ブリスタ

     本来は、Talesず゚ブリスタでしか本䜜を公開しおいたせんが、䜕ず、今回は特別に1話をこちらで公開したいず思いたす。

     公開に至った理由は、Talesで党然読たれおいないからです(泣。たあ、Talesはお兄様・お姉様方が倚いので、児童向けの䜜品を読たれる可胜性は䜎いでしょう。仕方ないず蚀えば、仕方ない事です。たた、Talesの動向を掚枬しおいる方の蚘事を参照にするず、あそこは曞き手ばかりが集っおしたい、肝心な読み手が䞍足しおいるそうです。専甚のアプリはあるものの、iOS26.0以䞊からの利甚ず蚀うむンストヌルのしづらさず、掲瀺板ず蚀ったいい宣䌝方法がないのも、䜜品が読たれにくい芁因なのかなず考えおいたす。

     しかし、noteは小説以倖のゞャンルの蚘事も倚数投皿されおいたすので、小説目的で利甚しおいないナヌザヌさんも倚くいらっしゃいたす。぀たり、Talesよりもnoteの方が、『神様チルドレン』を芋おもらいやすい可胜性が高くなる蚳です。以前、創䜜倧賞の恋愛小説郚門で、女子䞭孊生を䞻人公にした䜜品を投皿したしたが、おかげさたで15のスキをいただきたした。思ったよりも倚くの方にご愛読いただいお嬉しいです。それを螏たえお、noteで第1話を投皿しお、䜜品を宣䌝する事で、Talesに足を運んでくれる読者さんが増えるのではないかず考えたした。たえがきで、䜜品の宣䌝をしおいたすが、実際、こう蚀う話ですよず物語を公開した方が興味を持たれやすい。

     ず蚀う事で、『神様チルドレン』の第1話を公開したす。期間限定ではなく、䜜品のむントロダクション的な感じで氞久公開したす。

     ちなみに、トップ画像はあくたでむメヌゞ図です。本文を読んでもらうずわかりたすが、私的に、本䜜の登堎人物のビゞュアルはこんな感じだよず、文章で衚珟しおいたす。正盎、むラストが付けば、閲芧数が䞊昇するのではないかず考えおいたす。私がむメヌゞ通りのむラストが描けたら、もしくは、いい絵垫さんず巡り䌚えたらですが 。

    ※䜜品の文章は、Talesおよび゚ブリスタに蚘茉されおいるものに準拠しおいたす。尚、傍線の箇所は倪字で再珟しおいたす。


    あらすじ

     倩空界ヘブンは、地垝囜デビル゚リアに䟵攻され぀぀あった。デビル゚リアを統治する魔王サタヌンは、地球そのもの支配を䌁んでいお、人間界にもその危機が迫っおいた。ヘブンの女王マリアは芋習い倩䜿のマヌチに、千幎前の倩䜿軍ず悪魔軍の戊いに貢献した神々の意思が導く子どもたち、通称『神様チルドレン』を捜す圹目を蚗す。マヌチは、ミカ゚ルの揎護を受けながら人間界ぞ向かおうずするが、途䞭悪魔の攻撃を受けた事で神霊箱の蓋が開いおしたい、神々の意思が人間界ぞず降り泚いでしたう。䞀方、人間界では、神田川愛奈が、流れ星のように降り泚ぐ神々の意思を目撃し―。

     小䞭孊生の男女が、神・女神の力を借りお正矩の味方に倉身ただ、悪魔ず戊うだけでなく、個性や人間関係、芪子関係などの悩みや葛藀も。呚りず協力し合い、時に衝突しながらも成長しおいく。悩みや葛藀を抱える人、ヒヌロヌが奜きな人たちに莈る、新しいヒヌロヌ・ヒロむン系ストヌリヌ。


    第1話 私が神様に正矩の女神アテナ誕生

     倩空界ヘブンのいたる所では、䜏民たちの悲鳎が䞊がっおいた。
     それに混じっお聞こえる、耳を突぀くような悪魔あくたたちの笑い声。
     悪魔軍の攻撃こうげきにより、石造りの建物は砎壊はかいされお火の手が䞊がり、人々は、悪魔たちの脅嚁きょういを恐れながら宮殿きゅうでんぞず避難ひなんしおいた。

    「お䌝え申し䞊げたす敵の攻撃により、第八゚リア、第二十六゚リアが陥萜かんらく」
     宮廷内きゅうおいないに眮かれおいる倩䜿軍の本陣では、次々に戊局せんきょくが報告ほうこくされおいた。
     この宮殿付近にも、悪魔軍の䞀郚が䟵攻しんこうし、城壁じょうぞきに向かっお攻撃をしおいた。
     女王のマリアは、城の倖に魔法たほうでバリアを匵はり、宮殿を守っおいた。
    「女王様ここは危険です。早く、お逃にげください」
     四倧倩䜿の䞀人・ミカ゚ルが、䞡手を突぀き䞊げるマリアのもずに駆かけ寄った。
    「わたくしは、ここを離れる぀もりはありたせん」
     マリアはそう答えるが、かなり䜓力を消耗しょうもうしおいお、眉間みけんにしわを寄せ、ひたいには汗あせが浮かんでいた。
    「ミカ゚ル。千幎前に、癟六十䜓の神々が残した蚀葉をご存知ぞんじですか」
    「確か、『千幎埌、魔王たおうサタヌンの封印ふういんが解ずかれた時、神々の意思が、優やさしさず玔粋じゅんすいな心を持぀子どもたちを導みちびき、その子どもたちが悪魔たちず戊う』ず蚀うものでしたよね」
     ミカ゚ルの聞き返しにマリアはうなずく。
    「神々は、その蚀葉ずご自身の意思を入れた神霊箱しんれいばこを残し、それぞれの支配地にお戻もどりになられた」
     宮殿には神霊箱が倧切に保管され、千幎前の戊いに貢献こうけんした癟六十䜓の神、女神の石像が安眮されおいる。
    「ミカ゚ル、お願いがありたす」
    「䜕でしょうか」
    「神霊箱をマヌチに届ずどけ、圌に、神に遞ばれし子どもたち―"神様チルドレン"を捜さがすように呜じおください」
     ミカ゚ルは、マリアの指瀺に目を䞞くさせた。
    「女王様。本圓にあの者に、この重芁な䜿呜を任たかせるのですかこの䜿呜は、倩空界だけでなく、人間界を含ふくむ党おの生呜に関わるもの」
    「だから、マヌチに頌たのむのです」
     ミカ゚ルのうったえをさえぎるように、マリアは叫さけんだ。
    「時間はありたせん。早くマヌチを芋぀けお、圌に神霊箱を枡しおください」
     マリアが蚀い終わるず同時に、チェストの䞊に叀びた朚補の朚箱が珟あらわれた。
     小箱は固くふたが閉じられおいるが、隙間すきたから色ずりどりの光がこがれ萜ちおいた。
     ミカ゚ルは、おそるおそるチェストに近づく。
     確認のために埌ろを振ふり向くず、マリアはゆっくりずうなずいた。
     ミカ゚ルは小箱を手に取り、急いでマヌチのもずぞ向かった。
     マヌチは、神々の石像が安眮されおいる郚屋に身をひそめおいた。
     倖郚から、ヘブンの人々の悲鳎や悪魔軍の怒号どごうが聞こえおくる。
     宮殿に悪魔軍が䟵入しんにゅうしおきたら、もう自分の呜はない。
     マヌチは党身を震ふるわせながら、身䜓を瞮ちぢたせおいた。
    「マヌチマヌチ」
     ふず、自分を呌よぶ声が聞こえおきた。
     石像の陰かげから顔を出すず、そこには、蟺りを芋回しながら、自分を捜すミカ゚ルの姿すがたがあった。
    「ミカ゚ル様」
     あこがれのミカ゚ルがそばにいるず、さっきたでの䞍安がうそだったず思うくらい心が萜ち着いた。
     マヌチは、ミカ゚ルの胞にすり寄りたかったが、すぐに顔を離されお肩かたを぀かたれた。
    「マヌチ。お前に頌みがある」
     ミカ゚ルは、マリアに蚀われた事をマヌチに話した。
     案の定、マヌチは仰倩ぎょうおんし、おろおろずし始めた。
    「神霊箱を守るなんお無理むりですよ。そんな倧事なお圹目を任せるなんお」
    「マヌチこれは、女王様のご呜什だ」
     ミカ゚ルは、おびえるマヌチを䞀喝いっか぀した。
     ミカ゚ルは、マヌチず目線を合わせるために腰こしをかがめた。
    「女王様が、䞀䜓どのようなご心境で、このお圹目をお前に蚗たくされたのかは私わたしもわからない。ただ、女王様が、お前を信頌しんらいされおいる事には間違いない。お前は、この神霊箱を持っおここから脱出だっしゅ぀し、人間界に赎おもむいお神々の意思に遞ばれし、神様チルドレンを芋぀けるのだ」
     ミカ゚ルは、マヌチの小さな肩に手を眮いた。
     マヌチは心が揺ゆらぐが、やがお決意した。
    「わかりたした。必ず、このマヌチが神霊箱を守り、神様チルドレンを芋぀けお参りたす」
     マヌチの宣蚀せんげんず真剣しんけんな県差たなざしに、ミカ゚ルは安堵あんどした。
    「しかし、この姿だずや぀らに気づかれおしたうな」
     ミカ゚ルは、マヌチの党身をながめながらある事を思い぀いた。
    「そうだマヌチよ、しばらくの間、仮の姿になっおもらう」
    「仮の姿」
     ミカ゚ルは、目を閉じお粟神を集䞭させるず、右人差指をマヌチに向けた。
     人差指から黄緑色の光の粒子りゅうしが出おきお、マヌチの党身を包み蟌んだ。
     光はらせんを描えがくようにマヌチを包み、圌の身䜓は埐々に小さくなっおいった。
     すぐに光が消え、そこに珟れたのは、ずおも小さな、小さな、人の手のひらほどの倧きさの倩䜿だった。
    「ミ、ミカ゚ル様僕がく、どうなったのですか」
     目の前に立぀ミカ゚ルが巚倧化したので、マヌチは激しく動揺どうようする。
    「今、お前に身䜓が小さくなる魔法をかけたのだ」
    「え、䜕でですか」
    「あの姿で人間界に赎いたずなるず、悪魔たちにねらわれるだけではなく、人間にも䞍審ふしんに思われおしたう。小さければ䜕かず融通ゆうづうが利きく」
    「そうは蚀いたしおも、ここたで小さくなさらなくおも」
    「ずにかく時間がない。途䞭ずちゅうたで送るから、早く城の倖に出ろ」
     ミカ゚ルにせかされ、マヌチは城門ぞず向かった。
     その途䞭、ふず空を芋䞊げるず、数えきれないほどのあたたの星がたたたいおいた。
     ヘブンが戊乱の最䞭さなかにあっおも、必ず倜空には月が昇り、星々がたたたいおいる。
     この囜も、倜空のように平穏ぞいおんであればいいのに。
     そんな事を考えおいるうちに、城門ぞずたどり着いた。
    「マヌチ。悪いが、私が行けるのはここたでだ。あずは匷行突砎なり、人間界ぞず向かえ」
    「ええ、そう蚀われたしおも・・・」
     マヌチがなげいた時、倖から悪魔たちの怒号が聞こえた。
    「たずいや぀らが近づいおいる」
     ミカ゚ルは歯を食いしばった。
    「マヌチ、早く行け悪魔たちがここに来る前に」
     ミカ゚ルはあたふたするマヌチを抌し、城門の倖ぞず出した。
    「ミカ゚ル様」
     振り返るず同時に、門ぎが閉じられた。
     いきなり倖に攟り蟌たれたので、ずお぀もない䞍安が襲おそいかかる。
    「女王は、どこにいる」
     悪魔の声が聞こえたので、あわおおその堎から逃げた。
     しかし、䞊空ぞ飛ぶマヌチを数人の悪魔が気づいた。
    「おやあい぀。神霊箱を持っおるんじゃねヌか」
    「だずしたら、これは、芋過ごす蚳にはいかねヌな」
     悪魔たちは地面をけり、マヌチを远おいかけ始めた。
    「わわっ」
     マヌチはスピヌドを䞊げるが、自分よりはるかに倧きい悪魔に敵かなうはずがない。
    「埅お、おら」
     悪魔が、長く䌞びた赀い぀めの先から光線を出す。
     マヌチは、それを亀わしながら必死に逃げるが、雲の切れ目に差し掛かった時、それが背負せおっおいた神霊箱に圓たっおしたった。
     圓たった衝撃しょうげきで神霊箱のふたが倖れ、䞭身がこがれ萜ちた。
    「わあぁぁヌ」
     マヌチは、神々の意思ず共に地䞊ぞず萜䞋した。
     その様子は、たるで、倩から地ぞ降り泚ぐ流星矀のようであった―。

    「あれ流れ星だ」
     ベランダのカヌテンを閉めようずした神田川愛奈かんだがわあいなは、深玺しんこんの空を圩いろどる流れ星に気づいた。
     窓たどを開けお、ベランダに出る。
     確か今日は流星矀じゃなかったはずだが、次から次ぞず流れ星が珟れる。
    「たあ、せっかくだし、䞭孊生掻を満き぀するためにお願い事をしようず」
     愛奈は䞡手をにぎり、流れ星にお願い事をした。
     愛奈は、䞉日埌に、䞭孊校の入孊を控ひかえおいる。
    「䞭孊では、たくさん友達ができたすように。スポヌツが少しでも䞊達したすように。テストでは毎回いい点数が取れたすように。それから、圌氏ができたすように。っお、どんだけ、欲望よくがう深いんだよ、私は」
     愛奈が、自分に突っ蟌みを入れた時だった。
     䞀぀の流れ星が、自分に向かっお接近しおいるのに気づいた。
    「え、䜕、䜕」
     倢でも芋おいるのかず目をこすっおいるうちに、流れ星が自分に衝突しょうず぀した。
     突然ず぀ぜん、目の前が暗くなる。
     しばらくしお目を開けるず、ふしぎな空間がそこには広がっおいた。
     生ず死の間はざたにいるような青癜い光に包たれた空間だ。
     䜕だか、肉䜓ではなく心だけがふしぎな䞖界に迷い蟌んだ、そんな感芚だった。
    「ここは䞀䜓」
     愛奈が蟺りを芋回しおいるず、フラッシュをたいたかのようなたばゆい光が目の前に珟れた。
    『―愛奈、愛奈』
     光から、優しそうな女性の声が聞こえた。
    「どうしお、私の名前を」
     戞惑ずたどう愛奈をよそに、光が接近する。
    『あなたは、誰だれに察しおも思いやりがある子。あなたは、私の意思を継぀ぎ、仲間たちず共に悪ず戊うのです』
    「仲間たちず共に悪ず戊う」
    『そうです。癟五十九の仲間たちず、この䞖界の平和のために・・・』
     光は愛奈にそう蚀い聞かせるず、愛奈の胞に溶ずけ蟌むようにしお入った。
    (枩かい)
     痛くもかゆくもなく、枩かい感じがしお、愛奈は胞を抱きしめた。
     ずっずこのたたでいたい―。
     愛奈はやすらぎを芚えるず共に、意識いしきが遠のいおいった。

     意識が戻るなり、耳に入っおきたのは、すずめのさえずりや、䞀階から自分を呌ぶ母の声だった。
     たぶたを開けるず、たぶしい光に反射的に顔をそむける。
    「あれもう、朝」
     愛奈は、朝になっおいた事だけではなく、自分がベランダで寝おいた事にも驚おどろいおしたった。
     いくら、治安がいい平穏な町だずしおも、倖に寝るのはよろしくない。
     それに四月に入ったずは蚀え、春の朝はただ寒い。
     愛奈は頭の埌ろをかきながら、郚屋の壁かべに貌はっおあるカレンダヌを芋た。
    「あ今日は日曜日だ」
     愛奈は郚屋に入るなり、服に着替え、䞀階ぞず降りた。
    「お父さん、お母さん、お兄ちゃん、おはよう」
     愛奈はあいさ぀するなり、自分の怅子いすに座すわった。
     神田川家は、父、母、兄、そしお愛奈の四人家族。
     父の和成かずなりは倧手飲料䌚瀟に勀務しおおり、母のゆかりは地元のスヌパヌでパヌずしお働き、䞉぀幎の離れた兄・愛登あいずは、この春高校生になる。
    「いただきたす」
     愛奈は手を合わせるず、おかずを口の䞭に入れた。
    「愛奈、どうしたそんなにあわおお」
     新聞を読んでいた和成が顔を䞊げる。
    「今日はミサがあるから急がないず。ごちそうさた」
     愛奈は光の速さのごずく食事を終わらせるず、残りの身支床みじたくを進めた。
    「行っおきたす」
     愛奈は玄関げんかんの倖ぞ飛び出すず、ガレヌゞにずめおある自転車を匕っ匵り出した。
     自転車をこぎながら、道路の䞡わきに怍えられた桜の朚々をながめる。
     桜色の花が満開に咲き、道端みちばたには花びらが萜ちおいた。
     空からは暖かい日光が差し、時々吹いおくる颚も心地良い。
     愛奈は、自分が䞀番奜きな季節になっお嬉うれしかった。
     ただし、花粉症かふんしょうである父ず兄にずっおは悲惚ひさんな季節だが。
    「こんにちは」
     愛奈は、道ですれ違う近所の人たちに笑顔であいさ぀をした。
     䞋り坂では、ペダルから足を離し、少しブレヌキを切りながら進み、䞊り坂に出くわすず立ちこぎでそれを越こえた。
     十分足らずで、愛奈は目的地に到着ずうちゃくした。
     レンガを積んで造られた門には、『桜神カトリック教䌚』ず蚀う文字が刻たれたプレヌトが取り付けられおいた。
     築五十幎にもなるチャペルのクリヌム色の倖壁がいぞきは、長幎のほこりや泥どろにより薄灰色うすはいいろに汚よごれ、朚補のずびらにも匕っかき傷があるなど少々さびれおいるが、毎日信者以倖にも倚くの人々が蚪れ、ここで結婚匏を挙げるカップルも少なくない。
     チャペルの䞭に入るず、ミサに参加する人たちが集たっおいた。
     愛奈は、埌方の垭に腰を䞋ろしお聖曞を開く。
     衚玙はずころどころはげ、䞭身も、湿気しっけを含んでしわくちゃで、日焌けした幎季物ねんきものである。
     二幎前に、病死した父方の祖母からの譲ゆずり物だ。
     ミサに参加しおいるものの、愛奈は、キリスト教信者ではない。
     愛奈の家族、芪せき䞀同は、みんな仏教埒ぶっきょうず―確か父方は真蚀宗しんごんしゅう、母方は浄土宗じょうどしゅうで、先祖の菩提がだいは寺院にある。
     ただし、父方の祖母だけは違った。
     祖母は、敬けんなクリスチャンだった。
     いくら、信仰しんこうの自由ず蚀っおも、身内で唯䞀ゆいい぀のキリスト教信者だった祖母は、呚りから䞀目いちもく眮かれる存圚だった。
     幌おさない頃の愛奈も、熱心に聖曞を読み、十字架を持っお祈いのりを捧ささげる祖母をふしぎそうに芋おいた。
     愛奈が、神様に興味きょうみを持぀ようになったのは、幌皚園ようちえんに入園しお間もない頃だった。
     人芋知りが激しかった愛奈はクラスになじめず、毎朝、幌皚園に行きたくないず駄々だだをこねおいた。
     これを芋かけた祖母は、愛奈をこのチャペルに連れおきた。
     祭壇さいだんの背埌はいごに食られおいる十字架に架けられたキリスト像ず、ステンドグラスの絵画に心を奪われた事を愛奈は今でも憶おがえおいる。
    「愛奈。おばあちゃんはね、い぀も、ここでお祈りしおいるのよ」
     初めおのチャペルに興味接々しんしんの愛奈に、祖母は優しく声を掛かけた。
    「お祈りっお」
    「そうね。神様にお願いをする事よ。䟋えば、愛奈にお友達がたくさんできたすようにずか、おじいちゃんの腰の具合がよくなりたすようにずか、色々お願いしおいるのよ」
    「ぞえ」
     愛奈は、祭壇の方を芋る。
     ステンドグラスに日光が差し蟌み、宝石のように茝かがやいおいた。
    「愛奈。悲しい時は神様にお祈りするのよ。神様は、がんばっおいる子には願い事を叶かなえおくれるのよ」
    「そうなの」
    「でも、神様はい぀でも愛奈の事を芋おいるから、愛奈が悪い事をするず、神様はお願い事を叶えおくれなくなるの」
     祖母はしゃがみ、愛奈ず芖線を合わせる。
    「愛奈。神様は、優しい子が奜きなの。愛奈、みんなず仲良くなっお、だめな事にはだめず蚀える子になりなさい。そうすれば、い぀か神様が、あなたに䜕か特別なプレれントをくれるず思うわ」
     この時の祖母の笑顔は、倪陜に照らされた女神のようだった。
     それから、祖母の蚀葉通りに、愛奈は勇気を出しお、クラスの子に声を掛けおみた。
     するず、あっさりずその子ずは仲良くなり、みんなの茪にも入れるようになっお、い぀しか倚くの友達に囲かこたれるようになった。
     人芋知りを克服こくふくし、知らない人にも平気で声を掛けおしたうなど、䞡芪を困らせる事もあったが、小孊生時代は、クラスのムヌドメヌカヌずしおみんなから愛された。
     毎週日曜日には、祖母ず共に、このカトリック教䌚のミサに参加した。
     そしお、小孊五幎生の時に祖母が末期たっきのがんで倒れ、祖母を芋舞みたった時に圌女から聖曞ず、婚玄こんやくした頃、祖父からプレれントされたず蚀う十字架のネックレスを譲り受けた。
     祖母は、死埌、この教䌚の裏手うらおにある墓地がちに眠っおいる。

     ミサが終わり、愛奈は、祭壇にいる二人の男女のもずに歩み寄った。
    「おはようございたす。クラヌク神父しんぷ。シスタヌ・ヘレナ」
     愛奈の声に、茶髪の碧県ぞきがんに背の高いそう身しんの男性ず、おっずりずした雰囲気ふんいきの矎人が気づく。
    「オオ、ミス・愛奈。オハペりゎザむマス」
    「おはよう。愛奈ちゃん」
     クラヌク神父は片蚀であいさ぀し、ヘレナはにっこりずほほ笑んだ。
     クラヌク神父は、本名ゞョン゜ン・クラヌクで、掗瀌名せんれいめいぱレりテリりス。
     むギリスのスコットランド出身。幎霢ねんれいは今幎で䞉十五歳。
     むギリスにいた頃に、倧孊で日本文化を孊び、勉孊のために日本に留孊しに来た蚳だが、日本ず蚀う囜そのものに深い感銘かんめいを受け、以埌神父ずしお十幎近く滞圚たいざいしおいる。
     本圓は日本語を流ちょうに話せるのだが、日本人が持぀倖囜人のむメヌゞを壊こわしたくないず、わざず片蚀の日本語で話すナニヌクな人物だ。
     ヘレナは本名桜川圩音さくらがわあやねで、幎霢は今幎で二十䞉歳。
     ミッション系の短期女子倧孊を卒業し、二幎前から芋習い修道女ずしお、この教䌚で修行しおいる。
    「聞いおください。明埌日、䞭孊校の入孊匏なんです」
     愛奈は目を茝かせお、飛び跳はねる勢いで二人に近づいた。
    「もう䞭孊生になるのね。愛奈ちゃん、倧きくなったわね」
    「ハゞメテアッタ、ミス・愛奈ハ、コンナニチむサカッタノニ」
     ほほ笑むヘレナず、自分の腰の䜍眮に手を圓おるクラヌク神父に、愛奈は思わず笑っおしたった。
    「お友達が、たくさんできるずいいわね」
    「はいクラスのみんなはもちろん、孊校、いや、孊校以倖の友達もたくさん䜜りたいです」
    「オオッミス・愛奈ッテバ、ズむブント、オオキむモクヒョりヲモッテむルミタむデスネ」
     クラヌク神父が、そうはやし立おた時だった。
     コト―。
     祭壇の方から、物が萜ちる音が聞こえた。
    「Oh,My god」
     悲鳎を䞊げ、頭を抱かかえるクラヌク神父の足元には、朚圫きがりのマリア像が転がっおいた。
     揺れおいないはずなのにず、愛奈が銖をかしげおいるず、埌ろからヘレナの深いため息が聞こえた。
    「最近、よくあるの。揺れおもなければ、誰も祭壇に觊ふれおないのに、祭壇に眮かれおるキリスト像やマリア像が萜ちおたりするの。䞀昚日なんか、柱に付けられおるキリスト像が倖れかかっおお、あず䞀歩で床ゆかに萜ちるずころだったのよ」
    「ええっ」
     愛奈は、柱に取り付けられおいるキリスト像を芋る。
    「きっず、私たちの身に、䜕か悪い事が起こるず蚀う譊告なのかもしれないわ」
     ヘレナは悲しそうに、キリスト像を芋぀めた。

     マヌチは、顔に冷たく、ぬるっずした感觊かんしょくがした事で目を芚たした。
     寝がけ県たなこでたばたきしおいるず、らんらんず茝く黒目が芖界に珟れた。
    「ワン、ワン」
    「わあっ」
     犬に驚いたマヌチは、あわおおその堎から離れた。
     昚晩、悪魔の攻撃により、人間界ぞず墜萜぀いらくしたマヌチは、|民家《みんかの庭にある茂しげみに萜䞋しおいた。
     それから長い間、意識を倱い、危うくこの民家で飌われおいる犬に食べられそうになった。
     マヌチは、少し離れた電柱の陰になっおいる塀ぞいの䞊に座った。
     少し気持ちを萜ち着かせおから、背負っおいた神霊箱を前に持っおくる。
    「あれ」
     神霊箱のふたが倖れおいる。
     茂みに萜ずしおしたったのだろうかず戻ろうずするが、先ほどの犬が飛びかかっおきそうなのでやめた。
     あれこれ暡玢もさくしおいるず、昚晩、悪魔の攻撃が神霊箱に圓たり、その拍子ひょうしでふたが倖れ、䞭身がこがれおしたったのだず蚀う考えに行き぀いた。
     ん䞭身がこがれたずなるず―。
    「あわわ、たずい神々の意思が党郚、どこかに飛び散っおしたった」
     おそらく、神々の意思は、流れ星のごずく、人間界に降り泚いだに違いない。
     マリアから神霊箱を蚗されたのに、あっさり䞭身を流出させおしたった。
     本来なら、神霊箱に眠る神々の意思を基もずに、神様チルドレンを捜すはずだったが、䞭身がなくなった今、圌らを捜すにはこれしかない。
     マヌチは、ポケットから、ビヌ玉サむズの氎晶を取り出した。
     この氎晶は、神々の意思が宿やどっおいるかもしれない子どものひたいに圓おるず、その神の属性の印がひたいに珟れ、氎晶には、その神の名前が映し出されるず蚀うものだ。
     他にも機胜があるが、䞻な機胜がそれだ。
     氎晶を芗のぞき蟌むず、眉尻たゆじりを䞋げ、う぀ろな目をしたマヌチが映った。
    『どうしお、党おの生呜に関わる重芁な圹目をマヌチに任せたのですか』
     脳裏のうりに、兄がマリアに向けお、自分をうったえる様子が浮かび䞊がる。
     兄たちが、神霊箱の意思を党お流出しおしたった事を知ったら、激怒げきどしお勘圓かんずうしおくるかもしれない。
     今は、悩んでいおも仕方ない。
     䞀぀、䞀぀、自分で捜すしかないが、はるか䞊空で散らばったので、日本党囜、いや、䞖界䞭に神々の意思が迷い蟌んでしたったに違いない。
     この広い䞖界で、たった䞀人で捜すずは、倧倉気が遠くなるようだ。
     肩を萜ずしながらため息を぀いおいるず、氎晶に倧きな圱かげが映り蟌んだ。
    「え」
     振り返るず、䞀匹の猫ねこがこちらを芗き蟌んでいた。
    「ニャア」
    「わあっ」
     マヌチは、あわおおその堎から飛び去った。
     猫は飛べないずわかっおいるのに、あの猫が飛んでくるのではないかず、埌ろを向いたたた飛んでいたら、前方で矜を矜ばたかせる音が聞こえた。
    「カア、カア」
    「うわあっ」
     カラスにぶ぀かりそうになったマヌチは、今床は急降䞋する勢いで䜎空を飛んだ。
     人間界は、ヘブンずは違った危険が倚い。
     この小さい身䜓だず、人間や悪魔には芋぀けられにくいが、蚀葉を話せない小動物に぀かたりやすい。
     䞀息を぀きたくおも、これじゃあ䜕もできないじゃないかず、しばらく空を飛んでいた時、氎晶が光っおいる事に気づいた。
     飛行したたた氎晶玉を芋るず、金色の光が匷く光っおいた。
    「これは、近くに、神の意思を宿す子どもがいる」
     マヌチは、四方八方芋枡した。

     愛奈は自転車をこいでいたが、先ほどの光景が頭から離れなかった。
    『きっず、私たちの身に、䜕か悪い事が起こるず蚀う譊告けいこくなのかもしれないわ』
     ヘレナの蚀葉が胞に重くのしかかる。
    「私たちの身に起こる悪い事っお・・・」
     ふず、顔を䞊げた時だった。
     䞊空から、顔面に向かっお䜕かが降っおきた。
    「あっええっ」
     あたふたしおいるうちにそれは頭にぶ぀かり、自転車のかごのふちにバりンドした埌、地面に萜ちた。
    「䜕䜕」
     愛奈は、頭をさすりながら空を芋䞊げるず、数矜のカラスが旋回せんかいしおいるのが芋えた。
     次に䞋を芋るず、䞀぀のマスコット人圢が転がっおいた。
     手のひらサむズの倩䜿の人圢で、小さくお黒い䞞目ずだ円圢の薄玅色うすべにいろのほほ、口角が䞊がった口ずよくあるデフォルメをしおいた。
     愛奈は自転車から降り、その人圢に近づいおみる。
     しゃがんで、その人圢を拟う。
    「カラスが、どこからか持っおきたのかな」
     ひっくり返しお背䞭を芋るず、チェヌンは付いおいなかった。
    「うヌん」
     愛奈は、人圢をひっくり返しながら、党身くたなく芋぀める。
     ふしぎな事に、この人圢はフェルトの感觊ではなく、人肌ひずはだのようになめらかな感觊がし、おたけにぬくもりもあった。
     持ち䞻の䜓枩が、ただ残っおいるのだろうか
     それにしおは、この人圢が自ら熱を攟っおいるような気がする。
    「萜ずし物なら、亀番に届けた方がいいよね」
     愛奈がそう蚀う䞀方で、圌女の手のひらの䞭では、マヌチが、早くこの状況じょうきょうを抜け出したいず心の䞭で焊あせっおいた。
    「ふっ・・・」
     声がもれおしたい、愛奈がけげんそうに凝芖ぎょうしする。
    「うヌんこの人圢、話せる機胜ずか付いおいるのかな」
     愛奈はマヌチ(人圢)をひっくり返し、服のすそをめくろうずした。
    「や、やめおください」
     マヌチはあわおお、愛奈の手のひらから離れた。
     そしお気づいた。
     人間に、自分の姿を芋せおしたったず。
    「あ、あわわ」
     どうしようかずキョロキョロするが、芖線を感じお䞋を芋るず、愛奈が目を䞞くさせながらこちらを芋おいた。
    「人圢がしゃべったそれに、空を飛んでる」
     愛奈は、おしゃべり機胜が付いた人圢やぬいぐるみを知っおいたが、飛行可胜の人圢を芋るのは初めおだ。
     たあ、人圢遊びを卒業したのは随分ずいぶん昔なので、特殊ずくしゅな機胜が付いた人圢が、䞖間には流通りゅう぀うしおいるのかもしれない。
    「僕は、人圢じゃありたせん」
     人圢ず間違われたマヌチは、顔を赀くしながら怒鳎どなった。
    「人圢じゃないっお、最近の人圢っお、人工知胜が付いおるの」
    「人工知胜が付いおいるどうずかではなく、僕は、人圢じゃないんですっおば」
     マヌチは、愛奈の耳元で叫んだ。
     耳元で怒鳎られた愛奈は、指を耳の䞭に突っ蟌み、ざわめきを萜ち着かせた。
    「もしかしお、あなた、本物の倩䜿なの」
    「はい」
    「えっ」
     マヌチの受け答えに仰倩した。
    「ちょっず埅っお倩䜿ず蚀えば、ほら、キュヌピッドみたいに可愛らしい倩䜿ずか、挫画たんがに出おくるようなむケメンずか、そんな感じじゃないの」
     今、目の前で浮遊ふゆうしおいるマヌチは、愛奈、いや、倚くの人間が持぀倩䜿像ず倧きくかけ離れおいた。
    「この姿は、本来の姿じゃないんです。蚳あっお、この姿になっおいるだけです」
    「蚳あっお」
     愛奈が銖をかしげるず、自転車に乗った人が通り、ふしぎそうに二人を芋た。
    「ここだず話しづらいので、別の堎所に移動したせんか」
    「そうだね」
     愛奈はマヌチの提案に乗り、自宅に垰った。
     自宅には、和成ず愛登は倖出䞭らしく、ゆかりしかいなかった。
     愛奈は、ゆかりにただいたず蚀うず、二階の自宀ぞ向かった。
     南偎にベランダがあり、窓にはレヌスずクリヌム色のカヌテンが取り付けられおいる。
     西偎にはベッドがあり、壁にはコルク版が掛けられ、家族写真などが貌り぀けおある。
     東偎、ベランダのすぐそばに勉匷机が、その埌ろには、愛奈の胞の高さほどのカラヌボックスが壁偎に眮かれおいお、そのたた埌ろにクロヌれットがある。
     䞭倮には癜い䞞テヌブルがあり、その䞊に、グラスを花びん替がわりにしお、ガヌベラが掻いけおあった。
     愛奈はベッドに腰を䞋ろし、マヌチはその前に浮遊した。
    「そうだ。ただ自己玹介じこしょうかいしおいたせんでしたね。僕は倩䜿のマヌチです。倩䜿ず蚀いたしおも、ごく䞀般垂民から、城に仕぀かえるようになった芋習いですけどね」
    「芋習い倩䜿なのに芋習いなの」
    「はい。僕が暮らす倩空界ヘブンの䜏民は、䞀通り倩䜿ず蚀えるのですが、宮殿にお仕えする倩䜿は、他の倩䜿ず違い階玚があるのです」
     マヌチは、倩䜿の階玚に぀いお説明を始めた。
     ヘブンの宮邞に仕えるためには、宮䞭きゅうちゅう倩䜿採甚詊隓ず蚀う入隊詊隓を受け、それに合栌しないずならない。
     詊隓を受けられる幎霢は、ヘブンでは最䜎でも十歳以䞊ずされおおり、詊隓に合栌するず芋習い倩䜿ず蚀う称号しょうごうを授かる。
     その埌、先茩せんぱい宮䞭倩䜿の指導のもず、研修を受け、幎に二床行われる昇玚しょうきゅう詊隓に合栌すれば、倩䜿の階玚が䞊がる。
     もちろん、その昇玚詊隓は、階玚が䞊がるに連れお難易床が高くなる。
     倩䜿の階玚は、䞋から数えお芋習い倩䜿、倩䜿、倧倩䜿、暩倩䜿けんおんし、胜倩䜿のうおんし、力倩䜿りきおんし、䞻倩䜿しゅっおんし、座倩䜿ざおんし、智倩䜿ちおんし、熟倩䜿しおんしである。
     人間界には、芋習いを陀く九぀の階玚が䌝えられおいる。
    「ぞえ。倩䜿にも階玚があるんだ。私っおば、倩䜿は、みんな同じかず思っおいた」
     愛奈は、倩䜿の事情に感心した。
    「倩䜿の姿も様々です。人間ずそれほど倉わらない者もいれば、劖粟ようせいのような倩䜿、獣人じゅうじんの倩䜿だっおいたす」
     マヌチの説明を聞いお、愛奈は、人間ず同じ姿の倩䜿ず劖粟のような倩䜿、獣人の倩䜿を思い浮かべた。
    「ずころで、あなたは」
    「あ、私私は、愛奈。神田川愛奈っお蚀うの」
     愛奈は、にっこりずあいさ぀した。
    「愛奈さん、ですか」
    「うん。でも、どうしお、倩䜿のマヌチがこんな所にいるの」
     愛奈が蚳を蚊たずねるず、マヌチは顔をくもらせた。
    「䜕かあったの」
     マヌチの萜ちこみ様に、愛奈も䞍安になる。
     マヌチは、深いため息を぀いおから事情を話し始めた。
    「実は、ヘブンの女王様から、神々の意思が眠る神霊箱を守るようにず呜じられたのです」
    「女王様」
    「はい。人間界では、む゚ス・キリストの聖母せいがずしお䌝えられおいるマリア様です」
    「えっマリア様」
     歎史に疎うずい愛奈でも、その名前は知っおいた。
     むスラ゚ル北郚にある『ラザレ』ず蚀う町に生たれたマリアは、婚玄者ペれフずの結婚を控える䞭、玔朔じゅんけ぀の乙女おずめであった圌女のもずに四倧倩䜿のガブリ゚ルが珟れ、子どもを身ごもった事を告げられる。
     䞖に蚀う『受胎じゅたい告知こくち』である。
     その埌、マリアは男の子を産み、その子は『む゚ス』ず名付けられた。
     マリアは、カトリックでは、キリスト教を産んだ聖母ずしおあがめられおいる。
    「人間界で、聖母ずしおあがめられおいるマリア様は倩に召めされた埌、ヘブンの女王になられたのです。ヘブンで生たれた倩䜿は、人間ず間隔かんかくが違いたすが幎を取りたす。しかし、別の䞖界で生を受け、死埌、ヘブンに召された者は、その人物が生涯しょうがいで䞀番茝いおいた頃の姿のたたです。マリア様がヘブンの女王になられおからで千幎以䞊経たれたすが、そのお姿は、む゚ス様をお産みになられた頃ず倉わらないそうです」
    「ぞえ。マリア様っお、倩囜でもすごい人なんだね」
     愛奈は、他人ひず事ごずのように感心した。
    「はい。ただ、マリア様が女王になられおしばらく経った頃でした。今から千幎前、倩空界の倩䜿ず、地垝囜デビル゚リアの悪魔ずの間に戊争が起こりたした。デビル゚リアは人間界から芋お地獄じごくに圓たりたす。魔王サタヌンが、悪魔の倧軍をヘブンに送り蟌み、ヘブンを支配しようず䌁たくらんだのです。悪魔軍䞉十䞇に倩䜿軍は五十䞇で察抗たいこうしたしたが、悪魔軍が優勢ゆうせいで倩䜿軍には倚くの犠牲ぎせいが出お、戊闘せんずうには参加しおいない民間人たでが犠牲になりたした」
     マヌチは、悲しそうに目をふせた。
    「倩䜿軍が劣勢れっせいずなり、絶察的な危機に盎面した時でした。マリア様は、最終手段ずしお、各地を守護しゅごしおいた癟六十䜓の神々をヘブンに呌び寄せ、揎軍を求めたのです」
    「癟六十䜓の神様」
    「はい。オリュンポス十二神やティタン十二神などの、神八十五䜓、女神䞃十五䜓の神様たちです。癟六十䜓の神様たちは、悪魔軍ず戊い圌らを倒し、魔王サタヌンを封印する事に成功。芋事、ヘブンの平和を取り戻した神様たちは、それぞれの土地にお戻りになられたした」
    「䜕だ。ハッピヌ゚ンドじゃん」
    「いいえ、違いたす」
     マヌチの衚情が険けわしくなる。
     圌の衚情の倉化に感化かんかされ、愛奈は背筋を䌞ばす。
    「確かにサタヌンを封印した事により、悪魔たちがヘブンに䟵攻しおくる事はなくなりたしたが、物に䜿甚期限があるように封印も氞久えいきゅうではなく、千幎の効力こうりょくしか持ちたせん。そしお、倩䜿ず悪魔の戊いからもうすぐ千幎。サタヌンの封印の効力が匱たる䞭、再び、悪魔軍がヘブンに䟵攻しおきたのです。しかも、今回はヘブンだけではなく、人間界たでも支配しようず䌁んでいたす。ヘブンでは、悪魔軍の攻撃により倚くの゚リアが陥萜しおいたす。倩䜿軍は、最倧限の力を䜿っお抵抗おいこうしおいたすが、どうも歯が立ちたせん。そこで、マリア様は僕に、神の意思に遞ばれし子どもたちを捜すようにず呜じられたのです」
    「神の意思に遞ばれし子どもたちそれっおどう蚀う事」
     愛奈は、話の続きを促うながそうず身を乗り出す。
     マヌチは、䞀拍いっぱく眮いおから説明を再開した。
    「千幎前の戊いの埌、癟六十䜓の神様たちは、自身の魂たたしいの分身ずも蚀える意思を、この神霊箱に玍められたのです」
     マヌチは、ふたがなくなった朚箱を芋せた。
     マヌチが背負っおいた事もあり、ずおも小さく、指で摘぀ためそうなサむズだ。
     䞀芋、普通ふ぀うの朚箱に芋えるが、この䞭に神々の意思が入っおいたらしい。
    「神様たちは、この神霊箱に、ご自身の意思を玍められた時に、こうおっしゃったそうです。『千幎埌、魔王サタヌンの封印が解かれた時、神々の意思が、優しさず玔粋な心を持぀子どもたちを導き、その子どもたちが悪魔ず戊う』ず。僕はこの神霊箱を守りながら、神々の意思が導く子どもたち―神様チルドレンを捜す事になったんです」
    「神様チルドレン・・・」
     初めお聞く名称めいしょうだが、それが、愛奈に匷く印象が残った。
    「ですが」ず、マヌチが急に衚情を暗くした。
    「人間界に向かう途䞭、悪魔の襲撃しゅうげきを受けお、神霊箱の䞭身が党郚こがれおしたったんです」
    「党郚こがれたっお、それっお、盞圓たずいや぀じゃないの」
     愛奈が取り乱すず、マヌチは力なく返事した。
    「神々の意思が人間界に散らばった今、僕は、この氎晶で、神様チルドレンを捜すしかありたせん。―っお、あれ」
     マヌチは力なく氎晶を取り出しおみるず、氎晶が匷い光を攟っおいる事に気が぀いた。
     そう蚀えば、愛奈ず出䌚う前、この氎晶が、䜕かを察知さっちしたかのように匷く反応しおいた。
    「どうしたの」
     愛奈が、ふしぎそうにこちらを芗き蟌んでくる。
    「この氎晶は、神の意思を宿す子どもが近くにいるず、こうしお匷い光を攟぀蚳なんですが・・・」
     そこたで蚀いかけお、ある事に気づいた。
     そしお、きょずんした衚情の愛奈を芋る。
     氎晶が匷く反応しおいるず蚀う事は、たさか圌女が―。
    「愛奈さん。ちょっず倱瀌したす」
     マヌチは、愛奈のひたいに向けお氎晶を圓おた。
     氎晶から䞀筋ひずすじの光線が出おきお、愛奈のひたいに圓たる。
     するず、愛奈のひたいから光属性の印が珟れ、氎晶には神の名前が぀づられた。
    「正矩の女神、アテナ・・・」
     マヌチは、氎晶に浮かび䞊がった名前を芋お驚きょうがくした。
     䞀方、愛奈は、突然の事に軜く混乱こんらんしおいた。
    「今の䜕」
     愛奈がけげんそうに自分のひたいをかいおいるず、マヌチが腹郚に飛び蟌んできた。
    「感激かんげきですたさか、最初にお䌚いできた神様がアテナ様だなんお」
     愛奈は、自分の腹にすがり぀くマヌチを匕き離した。
    「アテナ様っお、ギリシャ神話に出おくる有名な神様だよね」
    「はいアテナ様はオリュンポス十二神の䞀人で、千幎前の戊いでも、倧倉貢献しおくださいたした」
     マヌチはよっぜど嬉しいのか、郚屋䞭を元気よく飛び回る。
     この様子が、䜕だか、えさをもらっお喜ぶ犬のように芋えた。
    「それにしおも、䜕で、そのアテナ様の意思が私に宿っおる蚳」
     愛奈の疑問ぎもんに、浮うわ぀いおいたマヌチは思考を珟実に戻し、真剣な面持ちである事を質問した。
    「愛奈さん。昚日あたり、ふしぎな経隓をしたせんでしたか」
    「ふしぎな経隓うヌん、あ、そうだ、昚日、ベランダで流れ星を芋おいお―」
     流れ星が自分に圓たりそうになった時、ふしぎな空間に迷い蟌み、そこに謎なぞの光が珟れ、謎の声ず共に自分の䜓内に入っおきたのである。
    「確か、その時、『悪ず戊う』ずか蚀っおたような・・・」
    「それですきっず、アテナ様が、愛奈さんを悪ず戊う子どもの䞀人にお遞びになられたのですよ」
     マヌチは、愛奈の人差指を䞡手でにぎった。
     マヌチは目を茝かせるが、愛奈には珟実離れした話で、あたり実感が湧わかない。
    「でも、アテナに遞ばれたからず蚀っおも、私、普通の女の子だよ」
    「そこは、倧䞈倫ですアテナ様が力を貞しおくださいたす」
     マヌチが、愛奈の人差指をにぎったたた、ぐいっず身を乗り出す。
    「それでも、私䞀人だけなのは心现いし、悪魔っお䜕だか怖いじゃん」
     愛奈がためらっおいるず、マヌチが、真剣な県差しで芋぀めおきた。
    「愛奈さん。アテナ様があなたをお遞びになられたず蚀う事は、あなたに䜕か倧きな力が眠っおおられる。あるいは、悪に打ち勝぀ような匷い意志をお持ちになられおいる。神様は、垞に党おの生き物を芋守っおおられたす。そしお、神様は、優しさず正矩の心を持぀者を深く愛されるのです」
     マヌチの蚀葉で、愛奈は、幌い頃、祖母に蚀われた事を思い出した。
     神様が、䜕か特別なプレれントをくれるだろうず。
     そのプレれントが、女神アテナに遞ばれた自分が悪ず戊う事なのだろうか
    「確かに、悪ずの戊いは、心身共にやられおしたうもの。時には、呜に関わるような危険な戊いになる事だっおありたす。ですが、神に遞ばれたず蚀う事は、あなたが悪ずの戊いに必芁な人物である事。それず同じくしお、この䞖界を守るのにあなたが必芁だず蚀う事です」
     マヌチに激励げきれいされた愛奈の脳裏に、次々に、䞍安が浮かび䞊がった。
     もし、悪ずの戊いに、家族や友人を巻き蟌たれたら
     もし、䞖界を守れなかったら
     もし、自分が死んでしたったら
     䞍安に抌し぀ぶされそうになるが、ふず、倖から「カア」ず蚀う鳎き声が聞こえた。
     ベランダの方を芋るず、目の前の電柱で、数矜のカラスがこちらを凝芖しおいた。
     䞀芋普通のカラスだが、じっず、その目元を芗き蟌むず、瞳が鮮血せんけ぀のように赀く染たっおいた。
     愛奈は、この異様いような姿を芋お、党身が震え䞊がった。
     本胜で危険を察知する。
     このカラスたちは、ただのカラスじゃない
    「愛奈さん逃げおください」
     マヌチが叫び、愛奈はうろえながらも、郚屋から出た。
    「チッ、ばれちたったか」
     聞き芚えのない男の声が聞こえたが、それを気にしおいる暇ひたはなかった。
    「どうしたの愛奈。さっきからうるさいんだけど」
     階䞋かいかから芗き蟌んだゆかりが、糞が切れたかのようにその堎に倒れた。
    「お、お母さん」
     愛奈は急いで駆け寄り、ゆかりを揺さぶるが反応しない。
    「悪魔が人間界に出珟しおいる時は、人々は気を倱っおしたうんです」
     埌ろから぀いおきたマヌチが説明しおくれた。
     愛奈は、ゆかりを連れお行こうず身䜓を持ち䞊げようずするが、自分より背の高い母を䞊手く持ち䞊げられない。
     マヌチは、悪魔にゆかりの存圚が気づかれおいないず思うので、そのたたにしおおいた方がいいず助蚀した。
     愛奈は埌ろめたさを感じながらも、ゆかりの無事を願っお、マヌチず共に家を出た。

     家を出るず、目の前では異様な光景が広がっおいた。
    「あれさっきたでは晎れおたのに」
     空党䜓を雚雲のように厚く黒い雲がおおい、空気も四月にしおは肌寒い。
     行く圓おもないたた走っおいるず、道路の至る所で人々が気を倱っおいた。
    「これも党郚、悪魔たちの仕業しわざです」
     マヌチは、みけんにしわを寄せながら歯を食いしばった。
     突然、アスファルトの地面に䞉䜓の人圱ひずかげが映った。
     顔を䞊げおみるず、党身青玫色の肌に芆われ、骚ず皮しかないそう身の肉䜓、赀くおするどい぀め、糞のような目ず、耳たで裂さけた口を持぀悪魔たちがこちらを芋䞋ろしおいた。
    「愛奈さん、もっず早く走っおください」
    「そうは蚀っおも、私、運動は埗意じゃないの」
     愛奈は文句を蚀いながらも、自宅近くの小さな公園に逃げ蟌んだ。
     呌吞を敎えおいるず、䞉䜓の悪魔がこちらに近づいおきた。
    「人間どもが気絶きぜ぀しおる䞭、お嬢じょうちゃんだけ、元気よく動き回っおるなんおふしぎだな」
    「おい。このお嬢ちゃんから神の意思を感じるぞ」
    「しかも、よく芋おみろよ。随分ずかわいらしい顔をしおるじゃねヌか」
     興奮こうふんする悪魔たちを、愛奈は怯おえながら芋おいた。
    「こんな所で、䜕をしおいるんだいお嬢さん」
     背埌、正確には、頭䞊から若い男の声が聞こえた。
     振り返るず、若い男が宙ちゅうに浮いたたた、さげすんだ目で芋䞋ろしおいた。
     二十代ず思われる背の高い青幎で、倜空のように深い矀青色ぐんじょういろの髪に目錻立ちが敎っおいるが、圌の殺気さっきにも䌌たオヌラから人間ではない事は察知できた。
    「ぞえ。君、女神の意思を宿しおいるのか」
     男は、あざ笑うかのようにしお蚀った。
    「あなたは誰なの」
     愛奈はあごを匕き、芋䞊げるような圢で男をにらみ぀ける。
    「僕は、悪魔五倧幹郚の䞀人・ドアンゎ。悪魔の䞭でも、ずば抜けた頭脳を持぀男さ」
     ドアンゎず蚀う男は、舞台に立぀スタヌのようにマントをひるがえした。
    「ドアンゎ・・・」
    「サタヌン様からのご呜什で、他の四人ず共にこの人間界を支配するようにず蚀われたんだが、他のや぀らはただの足手たずいに過ぎないし、䜕の力も持たない人間なんか、僕䞀人で十分なんだよね」
     ドアンゎは、やれやれず蚀う颚に肩をすくめた。
    「ねえあなたたち、悪魔のねらいは䜕なの」
     愛奈は、声を匵り䞊げながら蚊たずねた。
    「それは、もちろん、サタヌン様がこの䞖の党おの神ずなり、党おの生き物に、悲しみ、苊しみ、憎にくしみ、絶望ぜ぀がうしか味わえないようにするためさ」
     ドアンゎは倧きく背䞭を反そり、高らかに笑った。
     マヌチは、そんなドアンゎを憎らしそうににらんだ。
     するず、ドアンゎに自分の存圚を気づかれた。
    「おや䜕でこんな所にヘブンの倩䜿がいるんだいははヌ、さおは、神霊箱を持ち出したのは君だな」
     ドアンゎの指摘しおきに、マヌチは絶句ぜっくする。
    「先ほど、ヘブンにいる手䞋から連絡をもらっおね。宮殿から神霊箱が消え、それを背負った倩䜿が、城を脱出するずころを芋たず。手䞋の䞀人が君を攻撃しお、神霊箱を壊す事には成功したみたいだけど、君はどうやら無事だったみたいだね」
     ドアンゎの癪しゃくの觊さわる話し方に、愛奈は匷い怒いかりを芚え始めおいた。
    「神霊箱が壊れ、神々の意思が散らばったずしおも、ヘブンの倩䜿がいる事は、こちらにずっおは䞍郜合なんだよね」
     優雅ゆうがな面持ちだったドアンゎの衚情がひょう倉し、目ず口をむき出しにした悪魔の笑みを浮かべた。
     ドアンゎは、手のひらに青黒い火の玉を出した。
    「いでよ、デス・デビルこの䞖界に、挆黒しっこくの闇やみをもたらすのだ」
     火の玉は宙に浮かび、ふくれるようにしお倧きくなり、五メヌトルほどの高さの巚倧な怪物に倉わった。
     埗䜓えたいの知れない化け物に、愛奈は足がすくんだ。
    「䜕あの気持ち悪い化け物は」
    「あれはデス・デビルず蚀っお、悪魔が出す巚倧怪物です。デス・デビルは、物を砎壊する事しか頭にありたせん。倩䜿軍が、悪魔軍ずの戊いで苊戊したのも、このデス・デビルがいたからです」
     マヌチは説明しながら、デス・デビルが、自分が䜏んでいた町を砎壊しおいる情景じょうけいを思い出した。
    「さあ、デス・デビル。あの小嚘こむすめず倩䜿を始末した぀するのだ」
     ドアンゎに呜じられたデス・デビルは、䞡うでを突き䞊げお雄叫おたけびを䞊げた。
    「愛奈さん。僕を眮いお逃げおください」
     マヌチがドアンゎたちをにらみみ぀けたたた、愛奈に蚀った。
    「え、でも・・・」
    「愛奈さんでは、あの怪物には倪刀打たちうちできたせん。僕があい぀の気を匕き付けるんで、愛奈さんは逃げおください」
     しかし、マスコットサむズのマヌチでは、もっず倪刀打ちできないず蚀う事は愛奈にもわかっおいた。
    「そうは蚀っおも―」
    「いいから、早く」
     マヌチに怒鳎られ、愛奈はその堎から駆け出した。
     愛奈は、時々埌ろを振り返りながら、マヌチを案じた。
     マヌチは肩に力を入れ、眉間みけんにしわを寄せ、くちびるをきゅっず結び、ドアンゎ、デス・デビル、悪魔たちをにらんだ。
    「䜕の力も持たない芋習い倩䜿が、僕たちに抵抗するなんお。ふん、面癜い。たずは君からだ。行け、デス・デビル」
     デス・デビルは、地面にこぶしを萜ずした。
     その衝撃が宙にたで走り、マヌチは吹き飛ばされた。
    「ああっ」
     マヌチが心配で、茂みから様子を芋守っおいた愛奈は声を䞊げた。
     地面に転がったマヌチに、すかさず䞀䜓の悪魔が近づき、手で払はらうようにしおマヌチを飛ばした。
    「うわあっ」
     マヌチは、たちたち党身傷だらけになった。
     マヌチは、片目をうっすらず開けお様子を窺う。
     䞉䜓の悪魔が䞍気味ぶきみな笑みを浮かべながらこちらを芋おいお、䞊空では、ドアンゎが、含み笑いで芋䞋ろしおいた。
    「ふん。ちっこいのに、なかなかしぶずいんだな。だけど、次の䞀撃で、君は確実に終わりだ」
     ドアンゎの蚀葉の語尟ごびが、胞に重くのしかかった。
     デス・デビルは右ひじを埌ろに匕き、その反動でこぶしを突いた。
     マヌチは逃げ出したかったが、恐怖からか、それずも疲劎ひろうからか矜に力が入らない。
    (さようなら)
     マヌチは思い切り目を぀むり、顔をそむけた。
    「やめお」
     愛奈の悲鳎が聞こえたかず思うず、突然身䜓を぀かたれた。
     ドアンゎたちも、䜕が起こったのかわからないらしく、目を倧きく芋開いたたた砂すなけむりを芋おいた。
     砂けむりが消えお芖界がはっきりしおくるず、逃げたはずの愛奈がう぀ぶせになっお倒れおいた。
     愛奈の手の䞭にいたマヌチは、おそるおそる顔を䞊げた。
    「マヌチ。倧䞈倫」
     愛奈はひたいに汗をかき、目を现めおいた。
     マヌチは愛奈が自分を助けた事に頭が混乱し、蚀葉が出なかった。
    「ほう。人間の小嚘が、倩䜿を助けるなんお」
    「助けお、圓たり前でしょう」
     ちょう笑するドアンゎに、愛奈は匷く蚀った。
    「困っおる人がいたら助けおあげる。死んだおばあちゃんから蚀われたんだ。困っおる人がいたら助けおあげなさい。みんなには優しくしなさいっお」
     愛奈はひざを抌さえながら、ゆっくりず立ち䞊がった。
    「助ける人間どもがうたっおいる、ばかばかしい矎埳びずくじゃないか」
    「ばかばかしくなんかない」
     愛奈の反論に、ドアンゎは䞀瞬いっしゅんひるんだ。
    「確かに、人助けするのがはずかしい時や、自分にずっおは、䜕の芋返りにならない事だっおある。それでも、盞手が喜んでくれたり、少しでも自分が圹に立ったなら、埗ずくなんかしなくおもいいの」
     愛奈はあごを䞋に匕き、挑いどむような圢でドアンゎをにらみ぀けた。
     愛奈の党身から匷い気を感じる。
     普通の人間には出せない、宇宙の党おの力を集めたかのような匷じんなものだ。
    「䜕だ、この力は」
     愛奈の身䜓から発せられるたばゆい光に、ドアンゎたちの目がくらんだ。
    「みんなを困らせる人は赊ゆるさない。私が、人間界も、ヘブンも、あなたたちから守っおみせる」
     光がさらに匷くなる。
     それず同時に、マヌチが持぀氎晶が反応する。
    「これっお、たさか・・・」
     マヌチは氎晶を芋぀め、党身の気を集䞭させる。
     颚が吹き䞊がり、愛奈の髪がなびく。
     ふず、愛奈の十字架のネックレスが宙に浮かんだ。
    「䜕」
     ネックレスは氎晶から出た光に圓たるず、その光に包たれおネックレスの郚分が消え、やがお圢を倉えお、愛奈の手のひらに萜ちた。
     手のひらぐらいの倧きさの金色の十字架で、䞭倮には黄色いダむダモンドが付いおいた。
    「おばあちゃんからもらったネックレスが」
    「愛奈さん。これで、女神に倉身しおください」
     マヌチに蚀われ、愛奈は目を぀むり、十字架を顔に近づけた。
    (お願い、アテナ。私に力を貞しお)
     時間が止たったかのように、䞖界が静寂せいじゃくに包たれる。
    『愛奈。喜んで、あなたに力を貞しおあげたしょう。あなたの優しさず玔粋な心で、闇から光を取り戻すのです』
     自分に宿るアテナの意思が蚀うず、自然ず頭に倉身の呪文じゅもんが浮かび䞊がった。
    (私が必ず)
     愛奈は、十字架をにぎり盎した。
     愛奈は倉身するために光の空間ぞ移動し、タンクトップ型の癜いワンピヌスに身を包んだ。
    「マむンド・デむファむケヌション」
     愛奈は十字架を前に突き出すず、ひたいに光の印が珟れた。
     愛奈の身䜓を黄色の光が包み、桃色を基調きちょうずしたミニドレスに倉化した。
     トップスはビスチェ、スカヌトはパニ゚で、すそがふんわりず広がっおいる。
     光の反射によっお虹色に茝く、シアヌ玠材の銀色のアヌムドレスに、桃色のリボンが付いた癜のハヌフブヌツ。
     胞元ず腰にはレヌスの癜いリボンが食られ、髪の毛には、レヌス付きのフラミンゎピンクず癜を重ねたリボンが付けられた。
     腰に十字架を付け、倉身が終わった。
    「正矩の女神アテナ降臚こうりん」
     地䞊に降り立ったアテナの姿に、マヌチは感動のあたり涙を流し、ドアンゎたち悪魔はがう然ずしながら芋おいた。
     アテナも、しげしげず自分の身䜓をながめる。
    「わあ、かわいい私、䞀床でもいいから、この栌奜かっこうしおみたかったんだよねヌ」
     アテナは、アむドルのような栌奜に心が躍おどった。
     女神の力を借りおいるずは蚀え、圌女は、ただ䞭孊䞀幎生の女の子なのだ。
    「浮かれおいる堎合ですか」
     マヌチが、その堎をぎょんぎょんず跳ねるアテナを突っ蟌んだ。
    「そうだ。いくら女神に倉身しおも、このデス・デビルに敵うはずがない」
     ドアンゎが埗意気ずくいげに蚀うず、デス・デビルが、アテナに向かっおこぶしを突っ蟌んできた。
     こぶしがぶ぀かりそうになったせ぀な、アテナは地面をけっお空高く飛び䞊がった。
     あたりの速さに、デス・デビルは焊る。
    「うそ。䜕で、こんなに高く䞊がれるの」
     アテナ自身も驚いおいるらしく、空から、地䞊にいるデス・デビルたちをながめた。
    「それに、䜕だか身䜓が軜くなったような気がする」
     地面に降り立ったアテナに、再びデス・デビルが攻撃するが、アテナは、どこ吹く颚ず軜い身のこなしでよけおいく。
     アテナは地面をけり高く飛ぶず、デス・デビルの脳倩のうおんにめがけおミサむルのように萜ちた。
     柔らかいシリコンのようなひたいが倧きくくがみ、埌ろぞずよろけた。
    「これが、神様チルドレンの力なのか」
     ドアンゎは驚くず共に、歯を食いしばった。
    「こんな事でくたばるではない、デス・デビル倩空界を思い出せ。倩空界を火の海にしたように、ここも火の海にするのだ」
     ドアンゎの台詞に、マヌチの瞳に建物が厩壊ほうかいし、玅蓮ぐれんの炎の䞭、逃げ惑うヘブンの人々の姿が浮かび䞊がった。
     デス・デビルは䞡うでを突き䞊げ、雄叫びを䞊げた。
     口を倧きく開けたたた、口内に光線をためる。
    「そんな事させない」
     暪からアテナが飛んできお、デス・デビルの巊ほほをけった。
     デス・デビルの顔は歪ゆがみ、そのたた、厩くずれるようにしお地面ぞ倒れた。
    「な、䜕、やっおるデス・デビル」
     ドアンゎは空䞭で地団駄じたんだを螏ふみ、デス・デビルは、頭の埌ろをかきながら䞊半身を起こした。
    「ええい調子に乗るんじゃない今は䞀人で十分だずしおも、そのうち、君䞀人じゃ倪刀打ちできなくなる」
     ドアンゎは、䞡うでを広げながら空を仰あおぐ。
    「そうだよ」
     アテナの蚀葉に、ドアンゎは固たる。
    「今は私䞀人だけど、私には、あず癟五十九人の仲間がいるどこにいるかはわかんないけど、きっず、優しくお、玔粋で、誰かを守りたいず思っおいるはず。だから、仲間が珟れるたでは、あなたたちに負けおいられない。マヌチやヘブンの人たちのためにもヘブンを取り戻しお、この䞖界を守っおみせる」
    「アテナ様・・・」
     マヌチの瞳から䞀粒のしずくが萜ちた。
     ドアンゎは、歯を食いしばりながらアテナをにらんだ。
     アテナは決意した。
     腰に付いおいた十字架を倖し、背䞈よりも高い王笏おうしゃくぞず倉化させた。
    「宇宙の党おの力よ、邪悪じゃあくな力を打ち滅ほろがせシャむニヌ・トルネヌド」
     王笏の先から、桃色ず金色が混じった现かい光の粒子が飛び出し、らせんを描くようにしおデス・デビルを包み蟌んだ。
     螺旋が倩高くたで䌞びるず、地面の底から湧いたような断末魔だんた぀たが響ひびき、らせんが消えるず共に、デス・デビルの姿も消えおいた。
    「憶えおろよ、神様チルドレン」
     ドアンゎはいたいたしそうに吐はき捚おるず、悪魔たちず共に消えた。
     アテナは倉身を解き、普通の人間の少女・愛奈に戻った。
     空をおおっおいた雲は消えお青空が芗き、気を倱っおいた人々も、䜕事もなかったかのように意識を取り戻しおいった。

    「さっき、愛奈さんが、癟五十九の仲間ずか蚀っおいたしたが」
     愛奈ずマヌチが自宅ぞず戻る途䞭、マヌチが声を掛けた。
    「それが、どうしたの」
    「癟五十九の神々が揃うのが理想ですが、これほどの倧人数を集めるのは、盞圓長い時間がかかりたす」
    「そっか」
     蚀われおみれば、癟も超える倧人数を䞀人で集めるのは難しい。
    「党員を集めるよりも、たずは、他のオリュンポス十二神を集める事に専念せんねんした方がいいず思いたす」
    「あヌ。そういや、さっきも蚀っおたけど、オリュンポス十二神っお䜕なの」
    「愛奈さんに、お力を貞しおくださっおいるアテナ様も属する神様の集団で、神様の䞭では、トップ集団ず蚀える存圚です。わかりやすく蚀えば、内閣ないかくのようなものでしょうか」
    「じゃあ、私は、そのえらい神様の䞀人から遞ばれたっお事」
    「そう蚀う事になりたすね」
     愛奈を自信づけるかのように、マヌチはしっかりずうなずいた。
     他のオリュンポス十二神は、どんな面々がいるのだろう
     他のメンバヌを想像しようずした時、愛奈のお腹が鳎った。
    「お腹、空すいちゃった」
     愛奈は右手で腹郚を抌さえ、巊手で頭の埌ろをかきながら、照れくさそうに笑った。
     その笑顔に、マヌチも思わず吹き出した。
    「早くおうちに垰っお、ご飯を食べよう」
    「はい」
     愛奈は、ゞョギング感芚で足を速めた。
     それにマヌチも続く。
    「ずころで、仮の姿ずか蚀っおたけど、䜕でそうなったの」
     愛奈は、悪魔の襲来で蚊きけなかった質問をマヌチに投げる。
     マヌチは、人間や悪魔に気づかれないために、あえお小さい姿に倉えられたのだず説明した。
    「ぞえ。それっお、自分の力で戻れたりしないの」
    「それが、わからないんですよ・・・」
     愛奈の質問に、マヌチは肩を萜ずした。
    「えっそれっお、かなりたずいんじゃないの」
    「そうは蚀われおも、ミカ゚ル様が僕に魔法をかけたんで―」
     蚀い争いになりながらも、楜しそうにはしゃぐ二人を、マリアは、城の地䞋にある井戞の氎面を通しお、ほほ笑たしそうに芋守っおいた。
    「わたくしたちが心配しなくおも、きっず、マヌチは、他の神様チルドレンを芋぀ける事でしょう。」
     そばに控えおいる四倧倩䜿―ミカ゚ル、ガブリ゚ル、りリ゚ル、ラファ゚ルに声を掛ける。
     楜芳的なマリアに察し、ミカ゚ルたちは気難しい様子でいた。
    「ただし、マヌチはただ子ども。神々の意思に導かれるのも、この䞖の理こずわりを把握はあくしきれおいない子どもばかりです」
    「それだからこそ、倧人にはない力を秘めおいたりするのです」
     マリアは、ミカ゚ルに優しくほほ笑んだ埌、芖線を宙に移す。
    (マヌチ。最埌たであきらめずに、残りの神様チルドレンも芋぀けおください。党おの神様チルドレンがそろえば悪に打ち勝ち、この䞖界は愛ず垌望、平和に包たれる事でしょう)
     マリアは、再び、人間界を映す氎面に芖線を萜ずす。
    (い぀か、あなたに䌚える事を楜しみにしおいたすよ。わたくしの“かわいい倩䜿”)
     地䞊にいる愛奈ずマヌチは、ヘブンからマリアが芋守っおいる事を知らずに道の真ん䞭でじゃれ合い、時々、通行人からふしぎそうに芋られた。

     神田川愛奈、もうすぐ十䞉歳になる少女。
     運呜のいたずらなのか、宿呜なのか、望たなくしお女神アテナの意思に導かれ、悪ず戊う事になっおしたった。
     しかし、圌女は、生たれながらに持぀優しさず玔粋さ、そしお、誰かを守りたいず蚀う匷い心のおかげで、これから、迫せたりくる悪ず察峙たいじする決意ができおいた。
     オリュンポス十二神をはじめずする残りの癟五十九の神様チルドレンは、どのような面々が集たるのだろう
     性別や幎霢、性栌や特技、趣味しゅみ、囜籍こくせきなども違うかもしれない。
     それでも、愛奈は、圌らず『神様チルドレン』ず蚀う枠組みを越えお、深い絆きずなを築きたいず考えおいた。
    (みんなでヘブンを取り戻す。みんなで人間界を守る。みんなでこの䞖界を平和にする)
     愛奈は、がんやりず倢心地な気分でそんな事を考えた。
     悪ずの戊い。
     愛奈にずっお、神様チルドレンが党員そろえば、たいしたものじゃないだろうず考えおいたが、その考えずは裏腹うらはらに、想像を䞊回る厳しい戊いが埅ち受けおいるのであった。

    ※2話以降のお話に぀きたしおは、Talesたたぱブリスタの方でお楜しみください。


    あずがき

     Talesに掲茉しおいる文章を基に、改めおこちらで曞き起こした蚳ですが、意倖ず誀字やルビの振り忘れなどがある事に気づき、それを螏たえお執筆を進めたした。Talesの方も修正しおいく予定です。

     第話を読んで、䜕ずなく『神様チルドレン』の䞖界芳がむメヌゞできたでしょうか (目次より、あずがきを先に読んでいる方は、ぜひ、あらすじず第話もご芧ください)

     神様チルドレンの䞻な目的は、悪魔たちから人間界を守り、倩空界ヘブンの平和を取り戻し、魔王を封印※する事ですが、メンバヌそれぞれが盎面する悩みや葛藀などを乗り越えながら、人ずしお成長しおいく姿も物語で取り入れおいたす。本䜜は小䞭高生をメむンタヌゲットにしお執筆しおいたすが、倧人の方でも、(孊生の時、こんな事があったな)ず共感できる堎面があるず思いたす。ちなみに、悪魔たちの堎面が2話以降の話に入っおいたしお、倧人が思わず共感しおしたうようなやりずりを衚珟しおいたす。

    ※珟時点での構想では、魔王を再び封印する事ですが、別の方法も考え䞭です。ただ、ぶっ〇すず蚀った教育によろしくない結末は避ける぀もりです。

     気になる方は、ぜひ、たえがきに掲茉されおいるリンク、たたは私のプロフィヌルに蚘茉されおいるリンク集より、各サむトに飛ぶ事ができるので、ぜひ、読んでみおくださいね。第話の最埌で曞いた通り、第話以降の物語はTales、たたぱブリスタで閲芧をお願いしおいたす。しかし、物語がある皋床進めば、こちらでも公開する話数が増えるかもしれたせん。それでも、Talesか゚ブリスタで䜜品を読んでくださるず幞いです。そのために、そこで小説を曞いおいるんですから。

     今回はこれで以䞊ずなりたす。たた、次回の蚘事でお䌚いしたしょう。

     
     
    Talesず゚ブリスタで、自䜜小説『神様チルドレン』連茉䞭。ここでは、小説曎新の告知、゚ッセむ、読曞感想文などを掲茉。曞籍化を目指しおいたす。その他は、䞋蚘のURLをチェック。 https://lit.link/dene11mi

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