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Photo byotspace0715

秋の声を聴いて


    ふと思い出した。

    まだ私が施設の職員として、バリバリ働いていた頃のこと。

    ある日、子どもが鈴虫の入った籠を持ってきた。

    何匹いたのだろう。

    秋が深まるにつれて、一匹、また一匹といなくなり、最後に一匹だけが残った。

    その夜、私は夜勤だった。

    午前0時頃。

    子どもたちも、母たちも眠りにつき、施設はしんと静まり返っていた。

    暗い夜の中で、最後の一匹になった鈴虫が鳴いていた。

    力の限り。

    まるで、残っている命をすべて声にするように。

    私は、その声に耳をそばだてていた。

    あの頃、母担当だった私は、いつも心のどこかで自分に問いかけていた。

    私は、この母に充分添えているのだろうか。

    これでよかったのだろうか。

    正解は、すぐには出ない。

    一生懸命やっていても、誰かが「それでいい」と答えをくれる仕事でもなかった。

    夜になると、そんな思いが静かに自分の中へ戻ってきた。

    あの夜も、私は孤独だったのだと思う。

    だからだろうか。


    名前も知らない、小さな鈴虫に心を寄せた。


    いや、心を寄せたというより、
    心を合わせた。

    私は鈴虫の声を聴き、

    鈴虫はただ、力の限り鳴いていた。

    それだけだった。

    けれど、あの声は私を慰め、私に力を添えてくれた。

    あの秋の深い夜。

    暗い闇の中で、一匹の鈴虫と私が一緒に生きていた。

    ほんの短い時間だったけれど、

    今振り返ると、その風景がたまらなく愛おしい。

    毎年、この季節になると思い出す。

    暗い闇。

    あの頃の私の孤独。

    そして、

    静かな施設の夜に響いていた、あの鈴虫の声。


    秋の思い出の一ページ。



    この歌は、私が長年お世話になっているボイストレーナー、尾飛良幸さんが作詞・作曲された歌です。

    歌の中に出てくる「鈴虫の鳴いているよ」という言葉を聴くたび、
    私はいつも、あの夜の鈴虫を思い出します。

    よかったら、聴いてみてください。

     
     
     
    呼吸、声、命、余白。 日々の小さな感動を言葉にしています。 日々の生活を、 響きある旋律で繋ぎながら🍃

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